万全の態勢で録音に臨むはずだったのに。。。
録音の数日前から風邪をひいて熱を出し、録音業者の方に延期をお願いするも、「延期は受け付けていない」とのこと。
結局、録音前の3日間ピアノに触れず、熱があり喉もピリピリ痛いまま録音会場へ。
ピアノは古いスタインウェイのB。

録音って、ものすごく緊張する。
人前で演奏するのとは全く違う緊張感。
弾き出す前に、その緊張感を良い方向に持っていくように気持ちを整える。

『月の光』の他にもう1曲録音しよう、と追加した曲は、ショパンの『ノクターン第8番Op.27-2』。
録音は4時間という時間制限の中で行われたけれど、熱で体力がないためそんなに長く弾き続ける事は出来そうにない。
なるべく少ない回数の演奏で2曲の録音をしなければ…と気持ちを集中させて。

録音業者さんの話では、時々、録音中の譜めくりを頼まれる事があるらしい。
自分の譜めくりのせいで演奏が中断してしまうかも…
譜めくりの音が入ってしまうかも…
と、すごいプレッシャーで、
「そもそも譜めくりなんてつけちゃいけない、録音する時には暗譜していなければ。」
とお話しされていた。

更に、上手く弾く事が出来ない箇所を、片手ずつ弾いて、後から録音業者さんの技術で両手で弾いたかのように編集して欲しい!という方もいるらしい(゚o゚;
編集技術を駆使した、つぎはぎの録音。
それはもう「録音」とは別の作業で、その前に「演奏」でもないのでは…

録音業者さんからそういうお話を聞きながら一休みし、その場で録音を聴き、「もう一度弾きます」というのを繰り返し、『月の光』は4回、ノクターン第8番は3回弾いて、その中の1本を選んだ。
その場で2曲収録したCDを受け取り、帰宅。

あの日、本当に気力で弾いたのだと思う。
気力というか、精神力というか。
熱があったことを後日師匠に話すと、「関係ないよ、魂で弾くんだから」と仰っていたけれど、あの日はまさにそんな感覚だった。
熱が功を奏して、頭で考えず魂で演奏する事が出来たように思う。

・・・前回までの記事・・・