
草食系男子、肉食系男子など男が型に嵌められる昨今。
最近は仙人系男子なる男性像が理想として雑誌やネットでも持ち上げられてるらしい。
まあ、男からしたら、へそでプーアル茶を沸かすわ!!という話ではあるが、男は男で手前勝手な幻想を女に求めているふしもあるので、鼻でもほじって聞き逃すが一番妥当な対応だろう。
しかし、この殺伐とした、何を信じればいいか分からない世の中。
そんな時代において、求められる理想の男性像とは誰なのか。
というわけで、メシを食いながら考えた。5秒くらい。
答えはすぐに出た。
長髪に無精ひげ、革ジャン、アイパッチの伝説のアウトロー。
来週のan-anの表紙を飾るのは奴しかいない!
あいつを呼べ‼スネーク・プリスケンを!!
…とまあ、今回は男も女も(恐らく)惚れる伝説のアウトロー、スネーク・プリスケンが活躍する映画、「エスケープフロムLA」をご紹介します。
監督ジョン・カーペンター、主演カートラッセルの「ニューヨーク1997」のリメイクにして続編の本作。
前作は低予算にしてダウナーな魅力に溢れた作品だったが、「今回は製作費も多めに貰ったし、話の流れが同じでも景気良く行こうや!!」みたいな開き直りが気持ちいいのが本作「エスケープフロムLA」。
2013年のアメリカ(今年じゃん!!)
酒、タバコ、女、赤身の肉を禁止され、何とも生きにくく、言いたい事も言えないPOISON(©反町隆史)な世の中になっていた。
そんな世の中で、陸との繋がりを絶たれ、社会不適格と見なされたものがブチ込まれる、永久監獄と化した無法地帯LA。
そこに、出会い系サイトで出会ったチェゲバラ丸出しの男に言いくるめられた大統領の娘が、全世界の電子機器を破壊する兵器を手土産に単身駆け落ちしてくる。
返す刀に、チェゲバラ丸出しの男=クエボ・ジョーンズは、娘と最終兵器を盾に監獄=LAの解放を要求。
もはや打つ手のなくなった大統領は、以前、同じような無法地帯のニューヨークで大統領を救出した実績のある、伝説の犯罪者、スネーク・プリスケンをLAに送り込む決断を下す、というあらすじ。
改めてあらすじを書くと女子は見ようとは思わないだろうな、こりゃあ!という思いを抱くが、まあいいや!
そんなわけで、のっけから護送されてきた軍の基地に無骨なギターとハーモニカの音色と共に登場するスネーク。

早速、呼び出され事情を説明される。
しかし、終始スネークは、女の愚痴に適当な相槌を打つかのような不敵な態度を崩さない。
特に大統領の娘が母親を失くした孤独感から出会い系にハマり、クエボの思想に傾倒してしまったという身の上話をされるスネークの一言。
「悲劇だな…タバコあるか?」
このバッサリ感。
俺もかつて若い頃、深夜に女に呼ばれ、自分がいかに病んでいるかを公園のベンチで朝まで聞かされた事があったが、あの時スネークばりのバッサリ感があれば、とつくづく思う。
ツイッターやらフェイスブックで西野カナもしくは加藤ミリヤ調の病みツイートする娘に「大丈夫?辛い事あったら話聞くよ~(´ε` )」やら「○○ちゃんも辛いと俺も辛いよ~(つД`)」やら、顔文字と一緒にスカ屁のようなリプライを送るより、男なら「悲劇だな…タバコあるか?」と一言でバッサリ返したくなる、男なら明日から真似したくなる姿勢だ。
そんな男の鏡のようなスネークなので「アメリカの危機なんだぞ!」 と上から目線で諭されても「とっくに終わってる。」の一言で取り付く島もない。
しかし、スネークは8時間後に作用する神経毒を知らぬうちに注入されていた事実を知らされる。
任務を果たさなければ死あるのみ。
「俺が戻ってこないのを祈れ。」と告げると、スネークは渋々、単身LAに潜入を開始するのだった。
ここから、テロリスト、フリークス、チンピラ、政府、「乗るしかない!このビッグウェーブに!」なサーファー、二枚舌なツアーガイド、脇毛ボーボーのオカマ ・・・といった話が進むにつれ濃度を増す面々を相手にしたスネークのLA地獄めぐりが始まるのだが、 媚びの無さ、無愛想さは誰に対しても終始崩さない。
そしてスネークは無駄な自分語りなどは一切しない。
たとえ、味方に「あんたスネークだよね?」「死んだかと思ってたぜ!!」「意外と背が小さいんだな!!」と呼ばれても基本、無視。
チンピラがスネークに無視されたことにキレ、「この眼帯野郎!!」とナイフを構えようものなら、振り向きざまに無言でマシンガンの弾をたたき込む。
真の男とは自分の事をガタガタ語らない、という事を背中で証明していく。
もちろん、伝説の犯罪者という事で、ダーティな面も忘れずに劇中で披露する。
クエボのパレードを襲い、あと一歩まで追い詰めたスネークだったが、クエボから両端にキンタマみたいなボールがついたクラッカーを投げつけられ、乗っていた車から落ちる。
クエボの部下たちにズラリと囲まれてしまうスネーク。

しかし、スネークは敵に「お前たちにチャンスをやろう」というと、おもむろに空き缶を拾う。

「バンコック式でいこう。いいか、この缶が地面に落ちたら、銃を抜け。」

ほくそ笑みながら、銃口を下ろす部下たち。
だがしかし‼
缶を放り投げた瞬間、落ちる前に二丁のリボルバーでクエボの部下たちを即座に射殺するスネーク。

↑エゲツない2丁拳銃‼

そして、缶が地面に落ちた瞬間に、ひとこと。

「撃てよ。」
「決まったー‼」と思わず超人の技が決まった時のキン肉マンの実況のように叫びたくなる名シーンだ。
とにかく、そもそもバンコック式って何だ?という疑問より、そのダーティなかっこよさに痺れる。
おそらく、映画史上、こんなに卑怯な手を使っているのにカッコイイシーンは無いだろう。
ちなみに、昔、サバイバルゲームの真似事で追い詰められて、このバンコック式のシーンを再現したもんです。
容赦なく電動ガンで撃たれたけども。
他にもルームランナーに手錠で繋がれ画面に見切れるスネーク、ラスト、散々政府にいいように使われたスネークがつける、アクロバット級の男のケジメのつけ方は、先の「俺が戻ってこないのを祈れ」の伏線を回収する、アナーキーさ全開の名シーンである。
是非このシーンはその目で確かめていただきたい。そしてケジメをつけた後、そこらへんに落ちていた「アメリカ魂」というタバコに火をつけ「やっと人間に戻れたぜ…」の台詞は、終電すら残っちゃいない時間まで残業したあとの会社帰りや、愚痴と政治の話などの出口のないトークに溢れたグダグダな飲み会帰り に是非呟きたい、明日から真似したくなる台詞である。

↑全てにケリをつけての一服。これが正しい喫煙シーンだ‼
右だ、左だと政治の理屈をキャーキャー喚き、男女ともに見せかけの優しさで異性に媚びる昨今。
一般的に馬鹿映画だと思われているであろうエスケープフロムLAとりあえず映画の喫煙シーンにイチャモンをつける禁煙学会は是非スネークとバンコック式で決着を付けてほしい。
そんな男なら明日から真似したくなる漢の映画である。