日頃我々がよく受ける質問の中で、こういうのがある。
「なんか最近、いろんなハラール認証をやってます、っていうところがありますが、いったいどう違うんですか?」

無理もない質問だと思い、毎回答えるようにしているが、よくある質問 (FAQ)をここで紹介するべきかと思い、今後私のブログネタにしていこうと思う。

まず、認証機関としてあるべき形態はなんであるか。
世界的にハラール認証機関をみてみると、イスラム国家の場合は、政府の運営、非政府団体の運営、である事が多い。非イスラム国においては、同じくNGO, NPO、宗教法人などである。株式会社であるということはほぼ、まれである。また、マレーシア政府JAKIMの場合は、株式会社やエンタープライズの場合は、特例をのぞきJAKIM承認がおりないに等しい。ここでポイントなのは、

① 認証作業を営利目的でしているのか、否かである。

我々の場合は、NPO Non Profit Organization 特定非営利活動法人であるため、元々利益追求が目的でない事が明らかである。この認証作業でご飯を食べている人は、うちの理事の中には一人もいない。それぞれ職業を持っていたり、私のように主人が食べさしてくれる者もいる。それに、理事らは全員完全なるボランティアである。給料を持ってっているものもいない。従って、この協会は、ハラールの普及、ウンマへの還元を目的としたNPOである。

② 組織として存在しているかどうか。

世界の認証機関の中には、自分一人でコンサルし、監査し、自分で証書発行し、サインする人たちもいる。これは、認証機関として全く機能していない、従って認証作業はするべきではない。多くの場合、事務所もなければ、(あっても自宅兼用など)電話番号は携帯電話のみ、従業員はなし。若しくは、お母さん、お父さんで運営している。これも同じくJAKIM承認はおりない。認証作業はそれぞれが別の人間がするべき事であり、単一の人がするべき作業ではない。これはISOでも何の認証でも同じである。海外では全く通用しない。
組織として機能できていない、という証である。こんな機関に高いお金を払って、海外に輸出もできない=役にもたたない認証を取得して、どうするというのか。

③ それぞれの専門分野のプロがいるか否か。

②がクリアできていなければ、当然、③もクリアできないが、ハラール認証における専門分野のプロとは、
1:シャリア法に精通した者が在籍しているかどうか。(監査員を含む)
2:食品技術に精通した者が在籍しているかどうか。(監査員を含む)

これはハラール認証の監査において、最大のポイントである。技術士なければ監査はできない、イスラム法学者なしではハラールの見識は解らない。それぞれがプロである事が要求される。1日、2日間の監査員トレーニング受けただけの、どのバックグラウンドもない人が、いきなりハラール認証の監査に行っても、実際に仕事はできない。
また、逆に言えば、そんな人のした監査がどの程度であるかぐらいは考えなくても解るだろう。
協会が取り扱う企業様のほとんどは大手中の大手である。監査に立ち会う人はドクターであったり、技術士である事がほとんどである事から、バックグラウンドなしでは、到底話の通じる相手ではない。そんな人たちから見て、監査員がそんな程度であれば、ハラール認証ってそんな簡単な物なのか、という印象を与えるだろう。理解していないものには監査の作業はできない事はどの監査をとっても事実である。

協会の場合は、それぞれの理事がこの役割をしており、食品技術士である伊藤氏は、ISO監査や指導をこれまでしてきたプロであり、国家技術士の資格を持つ。一方シャリアのモハセン氏は、世界でも最も権威のあるイスラム法学の名門であるエジプトのアズハル大学出身の法学者である。協会には同じバックグラウンドのイスラム法学者が3名在籍している。その他、インバウンドの30年来のプロである、松井氏は最近の国内ムスリム誘致の分野において、ハラールツーリズムの先駆者である事から彼以外に適任はいない。
その他、料理研究家、和食調理のプロ、ジャーナリズム・ITのプロ、政治家など協会の活動を支えてくださっている方々がいる。全く日本において、これだけプロが集まるのもまれであるが、自ずと必要な方々が協会に協力賛同して頂いているのは全く持ってありがたく、神に感謝するばかりである。しかも、その方々が順番にイスラムへ帰依していっているのも現実である。私の想像では毎日「ハラール、ハラール」を何回口にするんや、というくらいするのでその効果かな。と思っている。ご存知の通り、ハラールは聖典クルアーンに出てくる神の神聖な言葉である。そのバラカ(神の恵み)がある事は間違いない。スブハンナッラー。

④ ハラールスタンダードを持っているかどうか。

ハラールスタンダードというのは、何にでも規格があるように、ハラール認証にも規格がある。世界的に認められているのはJAKIM のMS1500:2009. 当協会では設立当初から使用している。なぜ、独自のスタンダードを作らないのか。
規格というのは、その分野のプロが集まり、十分論議審議を繰り返し、一般公開をし、異論がなければ作られるのもだと思うが、自分だけで、自分たちの組織の中だけで簡単に作れるような物ではない。
イスラム法学、食品時術、テスト機関、学校、農家、畜産、水産、。。。などあらゆる分野において精通している人材が集まって、みんなで議論しながら作られる。
自分一人で、作れるものではない。
一人で作れたのであれば、どこかの規格のコピーであるか、相当曖昧な物であると考えられる。

従って、協会ではそれらの体制が日本でとれる迄、イスラム圏の国々に合わせた認証規格を用いる事にしている。非イスラム国において、輸出国がイスラム圏である、ということもふまえ、わざわざ非イスラム国である日本がその規格を作る必要がない、というのも理由である。

⑤ 海外で認められている機関であるか否か。

認証を取得して、その後どうしたいか。対外の企業はそれを持って輸出をし、さらに利益を伸ばしたい。国内だけの販売だけで満足できるのであれば、それで結構だが事業者は必ず可能性をつかみたい。
少なくとも、我々の所に相談にこられる企業の方々は、海外輸出が目的でこられる。
ということは、海外で認証が無効であれば取得する意味はない。

⑥ 海外へプロモーションできるかどうか。

認証取得後、その認証書が活用できなければただの紙切れである。
それを活用する事は、イスラム圏へのプロモーション、ムスリムへのプロモーションである事から、ムスリムでない限り、ハラールに精通していない限り、簡単ではない。そのルートへどうやって入り込んでいくのかを知っている必要がある。一般の商社マンであれば、不可能ではないが事前に必要な知識がある。それを実現できるか否か。
これに関しては、認証機関の仕事というより、我々のようなハラールに特化した浸透を目的とする機関がするべき事であり、一般的には認証機関はここまでは関与する事は少ない。

以上、認証機関を選定するのに必要な要項である。
無駄なお金を使う前に、しっかりと見極めていただきたい。