オリックスが大京の優先株を普通株に転換し子会社化するとのこと。
大京といえば産業再生機構案件で、2005年にオリックスがスポンサーになったんでしたね。
というこどで、子会社化のインパクトを中心に見てみました。
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まず、現在のオリックスの大京株式の保有状況です。
普通株については大京の発行済総数442百万株の31.6%に当たる139百万株をオリックスか保有しています。このほとんどは2005年に第三者割当増資を引き受けたものです(増資額は230億円/単価172円)。
また、優先株については、第1種、第2種、第4種、第7種、第8種の合計5種類を保有しています。この内、1種・2種・4種は2005/3期に、7種・8種は2009/3期に取得しています。株数は合計で89百万株、払込単価は全て400円で総額354億円相当です。優先株主はオリックスのみです(但し、第1・2・4種は既存株主からの取得)。
優先株はいずれも似たような設計で、①普通株に配当する場合の優先配当は額面×TIBOR+1.75~2.00%、②普通配当へは非参加、③優先配当は非累積、④議決権なし、⑤普通株への転換権あり(期限は2025年~2031年でいつでも行使可能)、⑥転換権消滅後、会社側からの転換条項あり、という感じです。
ポイントは普通株への転換条件ですが、転換価格は基本的に市場株価連動ながら(年1回修正される)、各々に上限/下限が定められており、第1種だけは355~444円と高い設定ですが、残りの4種類は上限価格でも64円~101円となっています。
現在の大京の株価は300円くらいですので、第1種以外はかなり有利な転換が可能というわけです。
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今回オリックスが普通株に転換するのは、まさにこの第1種を除く4種類です。
その結果、新規発行される普通株は398百万株。発行済総数に対し840百万株、オリックス保有は538百万株、出資比率は64.0%となり大京は子会社になるというわけです。
この希薄化を嫌気してか、大京の株価は本件公表前(1/17)305円から公表後(1/20)287円と下落しました。元々希薄化の条件は公表されているにも拘わらず、いざ権利行使されるまでは意外と株価には織り込まれていないのでしょうね。
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次に会計の話です。
オリックスは米国会計基準を採用していますので、現在、持分法適用している大京の子会社化に際しては、既存持分の時価評価損益がPL計上されます。
影響額は未開示ですが、ちょっと推測してみましょう。
まずは大京株の連結簿価を知りたいところですが、有報等からでは金額がわかりません。上場関連会社の簿価と時価は開示されていますが、大京に絞った金額は不明です。
なので、取得原価からの積上げで試算してみます。
オリックスがこれまで引き受けた大京株の取得原価は、2005年に普通株230億円、優先株(1・2・4種)236億円、2009年に優先株194億円(7種、8種)と思われます。
但し、2008年に優先株の一部を償還していること、また09/3期末に大京の株価が62円まで下落してかなりの減損損失を計上していることから、正確な金額はわかりません。ただ、09/3期の減損後のオリックス単体決算上の簿価は377億円と開示されていますので、連結上もここまで減損したものと仮定し、ここを起点にします(その後、持株数の変動はありません)。
その後の10/3期~14/3期会社予想までの大京の優先株配当控除後の連結純利益のオリックス持分から、普通株配当の持分を控除し、また10/3期のみなし売却益38億円を加算すると、連結簿価の異動額は262億円と推定されます。従い、2014/3末の連結簿価は377億円+262億円=639億円となります。
一方、時価については、普通株転換時点の時価なので現時点では決定できませんが、仮に1月20日の終値287円で試算すると、普通株538百万株×287円=1,543億円になります。これに残存する第1種の時価(不明なので払込額と同額と仮定)40億円を加算し、1,583億円と試算されます。
ということは、時価評価益は税効果前で1,583億円-639億円=945億円!
1,000億円近い金額です。すごいですね。オリックスの連結純利益は13/3期実績で1,119億円、14/3期の会社予想でも1,450億円です。時価評価益に対する税効果もあるでしょうが、それでもかなりの影響があることは間違いありません。
おそらくその内答えが開示されるでしょうから、結果を楽しみに待ちたいと思います。
ちなみに大京の連結純資産は2014/3末の会社予想純利益ベースで、帳簿上の暖簾と第1種優先株の払込額を控除すると1,372億円です。この持分64%は878億円で、新たな子会社の取得原価1,543億円(普通株部分)との差額から、暖簾等に配分されるのは親会社持分ベースで665億円になります。
また、米国基準はIFRSと異なり全部暖簾方式なので、非支配持分も時価で認識され、暖簾が計上されます。なので、オリックスの連結財務諸表上はこれまた1,000億円程度の暖簾になりますね。
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ちなみに、この優先株は(第1種を除き)かなり有利な条件で普通株への転換が可能で、基本的にいつでも転換権は行使可能です。
従い、オリックスがIFRSを採用した場合、従来から連結子会社だったものと取り扱われるでしょう。米国基準は形式基準なので、議決権比率が50%超なければ(VIEのような特殊ケースでない限り)、転換権のような潜在的議決権があったとしても連結にはなりません。この点、IFRSとは大きな会計基準差異がある状態です。
いつかオリックスがIFRSに移行すれば、この時価評価益はなかったことになりますので、会計的には、その前に転換権を行使して米国基準の段階で評価益をenjoyした、とも考えられますね。
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今回はここまでです。
09/3期の株価62円での巨額減損からすると、現在の株価は300円程度で1,000億円の時価評価益とは、なかなかの成功事例かも知れませんね。
(1/22追記)
今日の東洋経済オンラインの記事。大京の評価益の金額について初めて言及した、記事だと思いますが、株価270円で850億円て、僕のエイヤの試算とほぼ一致してます。
http://toyokeizai.net/articles/-/28809?utm_source=granks&utm_medium=http&utm_campaign=link_back
偶然?
けっこう連結簿価はホント推測なんだけど。もしこのブログを参考にして頂いたのなら有難いですし(間違ってたらすいませんが)、外部ソースなのであれば推測が正しかったということで嬉しいですね。
(2/27追記)
本日、オリックスが大京優先株の転換を実施し、今期の業績予想を純利益ベースで350億円上方修正しました。
但し、これには営業収益の上ブレも含まれており、大京子会社化のよる評価益の金額はまだ開示されていません。
一応、本日の株価227円で試算値をあっさりすると、税効果前で622億円になりますが、結果はどうなりますかね。
しかし、2/27の株価が227円だなんて、大京もうまいですねぇ。
(2/28追記)
いい加減しつこいのですが、本日の日経朝刊によれば、時価評価益は税前570億円だそうです。
ま、会計基準も違うしピタリ当たるわけもありませんが、当たらずとも遠からず、でしたかね。。