※※ この本を読んで一言 ※※

「日本三大奇書」ならぬ「日本四大奇書」に数えられるこの作品!!

推理小説好きならばこの作品は面白いと思ったり、深い作品と思うのかもしれませんが、ライトなミステリ読みの私は初めから混乱し、最後まで混乱したまま読み終わりました。

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竹本健治さんの作品を読むのは「涙香迷宮」に続き2作品目になります。

この「匣の中の失楽」はかの有名な「日本三大奇書」にこの作品を加えた「日本四大奇書」の1冊であるすごい作品であるので、ちょっとヤバい雰囲気を警戒しながら読み始めました(笑)。

 

やはり四大奇書らしく、読み始めてすぐにどこまでが現実の話で、どこまでが作中作の小説の話なのか分からなくなりました。

 

そしてどんな展開の話になるのか序盤では想像できなかったですが、登場人物たちが

『中井英夫の『虚無への供物』でしょ。判ってるんだ。倉野さんが何を言いたいか。あれと同じに、各々の推理にい幾つかの戒律を課そうって言うんでしょ』

と言ったことで、「あっ!なるほど!!そっちの方向なんだね」と話の展開が分かった気がしました。

 

そして登場人物たちが殺人事件の推理を披露します。

それは虚無への供物」を彷彿とさせるものでしたが、三大奇書の「ドグラ・マグラ」と「黒死館殺人事件」から影響を受けたと思われる記述も随所に感じられました。

現実と虚構(作中作や夢)との区別が曖昧だったり、作中に衒学的な記述が多用されたりと、三大奇書をリスペクトし、それに挑戦していることを伺わせます。

 

それでこれが面白かったかというと・・正直、私は読むのにかなり苦労しました。

しかし読み終わった後は、いつもとは違う達成感がありました(笑)。

何せこのひとつ前に読み終わった佐藤正午さんの「身の上話」から、一か月以上間が空いていますからね。ゴールデンウィークは通勤していないので一切読んでいないにしても、間が空きすぎました。

それくらい読みにくく、読み終わるのに苦労したという事です(汗)。

 

その一つの原因として作風が昭和の中期か後期くらいの作品かと思えるくらい古くさく感じたせいでもあると思います。

読み終わってから知ったのですが、この作品はなんと竹本さんが23歳の時のデビュー作で1977年(昭和52年)から1978年に連載されていたそうですね!

とすると作品の舞台は昭和50年代前半なんでしょう。

 

二つ目に登場人物の大学生たちの話し方が、いかにも昭和な感じの気障っぽい話し型なのがまた読みにくくさせています。

しかし高校生のホランドとナイルズ、女性の京子と雛子の話し方は普通なので、おそらく大学生たちの話し方は狙って書いたものでしょう。

 

三つ目に物理学や医学、果ては占星術などの知識を長々と登場人物に語らせているのはアンチミステリーあるあるで、そのシーンは私には話の腰を折っているように思えます。

そして登場人物たちの衒学趣味は読んでいて何だかな~という気になります。

 

四つ目に、殺人について検証し、推理を披露し合う展開は、延々と的外れの検証と推理を聞かされるので、読んでいて萎えます。

作中の「見えない棺桶」の説明は、長々とハズレ推理を披露する前に部屋に入って本棚を調べてからにしてほしいと思いました。

また「カタストロフィー理論」なんて殺人になんの関係があるのか謎・・というよりは作品の紙片稼ぎに思えるくらいです。

 

・・といろいろ苦情めいた事をいいましたが、双子だと思っていたら実は三つ子だったり、八角円の暗号も最初とは別の意味があったりと、古き良き「探偵小説あるある」が随所に感じられたので、総じて「ミステリーとアンチミステリーのデパート」といった趣の作品で楽しめたと思います。

 

(個人的評価)

面白さ      ☆☆

アンチミステリー ☆☆☆

読みにくさ    ☆☆☆☆☆

難解さ      ☆☆☆☆☆