※※ この本を読んで一言 ※※

この作品を読み始めて、最初から後半に至るまでずっと「出オチ」感が付きまとっていて、正直「この作品はハズレか?」と思っていました。

しかし、後半になって・・良くなっていった作品でした。

さすがメフィスト賞!!いい仕事してます(笑)。

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久しぶりに私の大好物、メフィスト賞受賞作が読みたくなり、何冊かまとめ買いをしました。

そしてまとめ買いした中で最初に選んだのが秋保水菓さんの「コンビニなしでは生きられない」です。

理由はさらっと読めそうだったからです(汗)。

相変わらず帯や裏のあらすじは一切読まずに読み始めました。

 

タイトルからしてコンビニ店員の話かなと思っていました。

冒頭から中盤まではコンビニ店員が探偵役となり、ちょっとした謎を解く「日常系ミステリー」だ・・と思っていた時期が私にもありました(笑)。

 

日常系の謎だと思っていたいくつかの事が後半全部一つにつながっていた事、しかもそれはコンビニの謎を超えるシリアスさで、全部黒葉による計画的に行われたことだったのには驚きました。

物語の中で出てきた小さな出来事や言動に全て意味があったんですね。

 

作者の秋保さんはお若いのに、デビュー作でこれだけのミステリー作品を書き上げるとは、これからの作品が楽しみです。

 

しかし・・冒頭の「この本を読んで一言」で書きましたが、この作品は「出オチ」感が付きまといました。

後半に展開が面白くなってきても、その「出オチ」感はぬぐえませんでした。

 

世の中には、美人バリスタ探偵、美人古書店店主探偵、家政婦探偵、貴族探偵など多種多様な探偵役がいて、それぞれの職場(生活の場?)で起こる出来事(事件)を解決していく作品にあふれています。

 

コンビニを舞台にコンビニ店員が解決もその中の1ジャンルになると思うのですが・・なぜ出オチ感がすごく感じるのでしょうか。

 

おそらく私が余りにコンビニもコンビニのこと知らないので、コンビニに起こる展開の広がりを予想できないからだだと思います。

この作品においても私が想像できる「コンビニ強盗」「レジのお金消失」「万引き」「店員によるバックヤード内の盗難」がもう出てきました。

他人事ながらネタ切れなのではと心配になります。

 

シフト表を暗号に見立てた事には驚きましたが、コンビニに関連した他に新しいトリックや謎が続くのでしょうか。

調べてみると、次作の「謎を買うならコンビニで」があります。

これはぜひ読んでみたいです。

それで出オチ感が拭われるのか、それともネタ切れ感を感じるのか・・どう感じるのか楽しみです。

 

さてここからどうでもいい雑感を書いていきます。

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一章のコンビニ強盗に入られたときの店員どうしの会話の茶番感がスゴいです。

バックヤードで店員達が強盗は誰かなどと議論している展開は現実ではありえないだろうと思いました。

 

また三章の人身売買組織の話になったときも、店員たちが大真面目に議論している姿はなんとも馬鹿しいです。

 

ここでも出ました!

人との距離感バグった美少女ヒロイン!

そしてやたら周りから気にされて愛される主人公!!

 

ちなみに距離感がバグった美少女ヒロインは私が以前読んだ平田駒さんの「スガリさんの感想文はいつだって斜め上」のスガリさんがいますが、不自然さはこの作品の黒葉の方が上です。

 

やたら愛される主人公は、パッと思いつくのは古野まほろさんの「天帝のはしたなき果実」ですけどね(笑)。

古野さんの作品のまほろよりは白秋の方がまだ現実にいそうです。

 

私はコンビニの実態をよく分かっていないで純粋に疑問なんです。

小説のエピソードに真面目にツッコミをいれることほど無粋なものはないですが(笑)・・「ミステリー」と呼べるような客は頻繁にくるものなのでしょうか?

 

しかし現実には文句を言うお客や感じの悪いお客は多いでしょうね。

 

作者の秋保さんは実際にコンビニの店員だからここまでリアルにコンビニの様子が描けるわけですね。

作中の灰野のセリフに『問題児ばかりじゃないの、このコンビニ』というように、コンビニの実態をよく知る秋保さんがそう書いたという事は、コンビニ店員は”そういう人たち”が多いのかなと思ってしまいます。

 

どこの職場にも一部は不届きな者はいるのは理解していますが、この作品ではやる気のないオーナー、同じくやる気がなく石国と付き合い、鈴木に無理なシフト入れ自殺に追い込んだ店長、盗癖があり鈴木に罪を背負わせ自殺に追い込んだ石国、酒の抜けないまま仕事をする会谷・・作品のために大げさに書いたと思いたいです。

 

店長と石国は損害賠償とか刑事事件とかになるのではないかと思ってしまうくらいひどい有様です・

 

ちなみに私はコンビニの店員さんの仕事は接客からレジ、商品の陳列など余りにも多種多様であり、それをこなす店員さんは要領がいいなと思っていますし、普段から感謝しています。

そして現代では重要インフラと化しているコンビニですので、これからもみんなが幸せになるようなコンビニであり続けてほしいものです。

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さて次作の「謎を買うならコンビニで」をいつ読むのか分かりませんが、その日が楽しみです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆

登場人物  ☆☆

ミステリー ☆☆☆☆

リアルさ  ☆☆☆