※※ この本を読んで一言 ※※

メフィスト賞受賞作には似つかわしくないくらい正統な社会派小説であり、骨太な警察小説です(笑)。

そして主要登場人物は誰も幸せになっていないのに爽やかな終わり方が見事です。

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久しぶりに私の大好物であるメフィスト賞受賞作を読みます。

 

この作品はメフィスト賞受賞作というだけで購入したので、作者の名前やあらすじ等の情報を敢えてシャットアウトして読み始めました。

 

読み始めて、私が警察小説を読むのはずいぶん久しぶり・・と言うか私はミステリー小説ではない警察官が主人公の警察小説は誉田哲也さんのジウストロベリーナイト以来ではないでしょうか。

ちなみに警察小説の題材として警察内部の争いと外国人犯罪は切っても切れない関係のようですね(汗)。

 

この作品を私が社会派と思った理由は警察組織、麻薬取締官、外国人犯罪組織、暴力団、輸入品関係の法律や手続きの問題点など、広い分野にわたり、その内部にいた者にしか分からないような内容が詳細に書かれていることです。

 

もしかしたら現役の方たちからすれば誤った内容があるかもしれませんが、少なくとも私のような無知な者がこの作品を読んでリアリティを感じ、日本という国は問題が多いな~と真剣に憂いてしまいました。

 

さてリアリティがあると書きましたが、作品の内容として、中国が日本に銃を蔓延させて、日本が銃の所持を許可し、中国が日本に銃を売る計画が大筋であったわけですが、この点は正直荒唐無稽に思えリアリティがないと思います(笑)。

 

警察小説の常ですが、警察組織は個別にはいい者もいるが、組織としては腐っていると印象付けます。

特に宮田が泉の死の真相を尋ねに警察に行った時の署の刑事の対応は最低ですね。

実際の警察はこうではないと祈りたいです。

 

この作品は2002年に刊行されたので、書かれたのは1990年代後半から2001年だと思いますが、作中では掲示板による誹謗中傷、個人の特定の描写がありました。

これは20年前には既に存在していた2ちゃんねるにあった事をベースに書かれたのでしょう。

 

いろいろ書きましたが一番驚いたのは、この作品の作者の事です。

私は読む前は表紙は一切見ないようにして、作者の紹介も読まないようにしているので、日明さんの名前すら知りませんでした。

読み終わった後に作者の名前を見て「”日明恩”さん・・”ひめいおん”さん???」と思って振り仮名を見ると「たちもりめぐみ」さんと書いてあり驚きました。

 

ちなみにパソコンで「たちもりめぐみ」が漢字で「日月恩」と変換されました・・「たちもり」はパソコンの変換では「日月」ですが、作者は「日明」・・きっと「日明」も「たちもり」と読むのでしょう。

 

また「恩」を「めぐみ」と読む事を知り、勉強になりました。

 

そして読んでいるときは作者の性別は全く意識はしていませんでした・・というかこういう骨太の警察物語を書くのは男性だと勝手に思っていましたが、まさか女性だったとは二度びっくりです!

 

さてここまで登場人物について全く触れてきませんでしたが(汗)、武本、潮崎、宮田や他の登場人物たちもみな個性的で物語を彩ってくれたと思います。

 

武本&潮崎シリーズはまだ後3冊あるとのことなので、機会があれば読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆

登場人物  ☆☆☆

社会派   ☆☆☆☆☆

作者の名前 ☆☆☆☆☆