※※ この本を読んで一言 ※※

私の大好きな猫丸先輩(笑)。

作中では猫丸先輩はいつも変人扱いですが、この作品ではもはや賢人・賢者の風格です!

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倉知さんの本を読むのもこれで6作目になります。

そして猫丸先輩シリーズも4作目です。

 

猫丸先輩シリーズは多作ではないため、未読の猫丸先輩シリーズはあと3冊・・なので大切に読まなければと思って今まで引っ張ってきましたが(笑)、あまり読まないのももったいないので今回「猫丸先輩の推測」を読み始めました。

 

これを読んでまず思い出したのが、猫丸先輩の短編の基本は結論が出ないものでした。

そしてこの作品もタイトル通りほぼ猫丸先輩の推論を述べていて、本当のところはどうだったのか分からないものばかりです。

 

モヤモヤする!!と言えばそうなんですが、猫丸先輩シリーズはそんなもんだと割り切っているので楽しく読めます。

 

そしてこの本の最大の楽しみといえば、やはり何といっても唯一無二の猫丸先輩のその独特な言動でしょう。

この作品でも、短編ごとの登場人物に変人扱いされています。

 

しかしこの作品の猫丸先輩はどこか「賢人」と思わせる雰囲気を感じます。

もっとも私のイメージする賢人は俗世から離れ、自由気ままに生きている・・という漠然としたものですが(汗)。

他には中国の老子や荘子をイメージしています。

 

ちなみに作中でも「桜の森七分咲きの下」の小谷が一時的ではありましたが猫丸先輩の事を『もしかしてこいつ、市井の賢人とかそういう立派な人なのかもしれない。・・』と評しています。

 

猫丸先輩はその明晰な頭脳をお金を稼ぐことに使えば、余裕で大金持ちになれそうですがそういう事には一切興味を示さず、自分の興味の向いたことをやり、そしてそれは”基本”人の迷惑にならない様にやっていると思います。

(ただし猫丸先輩の後輩たちはそれなりに迷惑がっていますが・・(笑))

 

しかも「カラスの動物園」ではひったくり被害に巻き込まれた子供を笑顔にするために動物漫才を長尾と披露しようとする優しさも持ち合わせています。

 

そんな人間味あふれる猫丸先輩をこの作品では十分堪能できたと思います。

 

しかし不満なところは猫丸先輩の活躍が短編の中で半分位で、正直もっと登場して活躍してほしいと思います。

 

しかしこれは物語の導入や、その後の状況説明が必要なのでページ数を使うのは仕方ないと思います。

 

ただやはり大きな原因は猫丸先輩が登場すると物語が収束に向かってしまうから、あまり早く出せないのではないでしょうか。

なおこの感想は「過ぎ行く風はみどり色」でも思ったことです。

 

ジョーカー的存在の猫丸先輩が初めからいたら、謎なんてすぐ解決してしまいますからね(笑)。

 

そして直接事件等を解決することをしない、そもそも「推論」が正しいかどうかも最後まで分からないからこそ名探偵にならず、登場人物たちには「変人」というイメージを持たれ、読者には「賢人」というイメージが持たれるのではないでしょうか。

 

さてここから久しぶりにどうでもいい細かな雑感を書いていきます!

(=^・^=)(=^・^=)(=^・^=)(=^・^=)

「夜届く」の序盤読んでいて、電報の送り主をNTTに問い合わせたら教えてもらえないか?と思っていたら、当然のごとく教えてもらえないようですね。

 

もっとも電報をイタズラで送る人にとっては、申し込みの名前も偽名を使ってそうです。

 

同じく「夜届く」で、世界の終わりの日に何をしたいかのアイドルの回答に対して、猫丸先輩はそれは傲慢だといいましたが、私にはその考えはなかったので、確かに猫丸先輩の言うとおりだな~と思いました。

 

ただ八木沢も突っ込んでいるように、アイドルのラジオでの一般人に向けた回答にそんな捉え方をしなくてもと思います。

 

しかし最近の何でも批判されてしまう風潮では、ラジオの発言を聞いた人が同じように傲慢だと感じて批判してくるかもしれませんね。

 

「失踪当時の肉球は」はこれはちょっと寂しい話で、そしていろいろ考えさせられる話ですが、好きな短編です。

郷原の探偵ぶりが面白い・・と言っては郷原に失礼ですが面白いです(汗)。

 

そして出ました!!!

『探偵は職業ではない。生き方だ。』

 

郷原の探偵としての矜持を感じます。

 

そういえば歌野晶午さんの「そして名探偵は生まれた」でも少し違いますが名探偵としての在り方を示したセリフがありました。

 

やはり「探偵」という仕事に誇りを持つ人はこういうセリフを言うものなんでしょうね。

 

「たわしと真夏とスパイ」は犯人が誰か明白であり、犯行の様子が猫丸先輩の口から明らかになったになった珍しい作品でした。

 

途中、商店街の人達の言い合いの場面が多くて、誰がどのセリフを言ったのか書いていないため分からないまま場面が進む事が気になっていましたが、これはセリフを言った犯人が誰か分からなくするための小説ならではの叙述トリックだったんですね。

 

なおこの短編の中で商店街の人が『没義道者めらが』と言っていましたが、その言葉自体を初めて聞きました。

没義道(もぎどう)・・まだまだ私は日本語を知らなさすぎだと実感しました。

 

「カラスの動物園」の長尾はいいキャラクターですね。

そして長尾がラストで考えついた『ねこまるたろうくん』を実現させて欲しいものです。

そしたら私は買います(笑)。

 

ただ長尾が”営業には絶対行きたくない”という考えは、個人がそう感じるなら仕方がない事ですが、少しわがままだし、営業の仕事をしている人に失礼かなと感じました。

 

しかしただわがままを言っているだけではなく、デザイン課にいられるように努力をしているので、「ねこまるたろうくん」がヒットしてずっとデザイン課にいられるようにと願うばかりです。

 

「クリスマスの猫丸」の猫丸先輩の推測は今回はかなり強引な気がします。

 

ただ『一人のサンタが大きな紙箱をいくつも抱えて、えっちらおっちらと通り過ぎようとするのが見える。紙箱の大きさから判断するに、中身は多分、デコレーションケーキか何かだろう。さっきから、こういうふうに荷物を運んでいるサンタも、何度か見かけている。』

 

という描写があるので推測はおそらく真実なんでしょう。

 

しかし混みあう商店街の中をアルバイトに手持ちでケーキを運ばせるのはリスクが高過ぎると思います。

しかもクリスマスのデコレーションケーキの箱を1回で何個も運ばせると、ひっくり返すリスクがより高まります。

 

ケーキ屋もそんなことをするくらいならもっと別の方法を考えるべきだ・・と思いますが、これはあくまで猫丸先輩の推測であって真実ではないかもしれませんので、あまり目くじらを立てて言うのも大人げないですね(汗)。

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さて今回も猫丸先輩を十分堪能させていただきました。

 

以前の私のブログの「読んだ中で印象に残った作品(極力ネタバレなし)」でも語っていますが、猫丸先輩というキャラを生み出した倉知さんは素晴らしすぎます。

 

あと猫丸先輩の作品が2冊あるので大切に読んでいこうと思いますし、他の倉知さんの作品も機会を作って読んでいきたいです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆☆

驚き    ☆☆

ドキドキ感 ☆☆

猫丸先輩  ☆☆☆☆☆