夏と言えばホラーです(笑)。

 

毎年夏になると近所の本屋でホラーコーナーができ、本屋のチョイスで怖い小説や漫画が置いてあります。

それを見ると、やはり年に1冊は怖い本が読みたくなり、また今年も買ってしまいました。

 

今回は「樹海村」や「犬鳴村」の映画の小説版が目につきました。

しかし『村』モノは昨年滝川さりさんの「お孵り」を読んだので今年はスルーしました。

 

今回も短編集よりは長編を読みたかったのですが、今年は似鳥鶏さんの短編集「そこにいるのに 13の恐怖の物語」を選択しました。

 

選んだ要因は“サイン本”だったからです(笑)。ちなみに私はサイン本は初めて買いました。

 

そもそも私はサイン本というのは、著者がサイン会で買ってくれた人に対して書くものだと思っていました。

こういうサイン本もあるんですね。

 

似鳥鶏さんの作品は初めて読みます。

名前は知っていましたが、どんな作品を書いていたのかは知りませんでした。

読む前に似鳥さんについて調べてみたら多くの作品を書いていて、推理小説がメインで書かれているようです。

推理作家が書くホラー小説はどんなものかとても楽しみにして読み始めました。

 

そして読み終わって、ホラーモノは相変わらずツッコミは多いです。

(しかし1つ前に読んだ「コズミック」ほどではないですが(笑))

 

どの短編も“正体不明の怪異”なので、後味の悪いじんわりとした怖さがあります。

典型的なモダンジャパニーズホラーという気がします。

そして以前読んだ日向奈くららさんの「私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。」の帯で鈴木光司さんが『この恐ろしさは、ねっとりしている。』と紹介していますが、ねっとり感というならこの作品の方がしっくりきます。

 

強いて比較をするなら「私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。」はアメリカンホラーで、こっちはジャパニーズホラーの趣です。

 

そして似鳥さんはまだお若いので、話の筋にSNSやスマホやインターネットを当然のように話に絡めています。

これは時代の必然なのでしょうが、これを20年後に読むと「リング」と同じように古く感じるんでしょうね。

 

他に思うことは、とにかく怪異の原因がはっきりしない事の連続で、怖さを感じる前に疑問ばかりが頭に浮かんできます。

(ホラーとはそういうものだと言われればそうなんですが・・)

 

まずはこの短編全部にクママリという熊のマスコットキャラクターが共通して出てくるので、これが今回の怪異の元凶なのか、それとも無関係なのでしょうか。

 

次は各話ごとで疑問に思った事などを書いていきます。

 

「瑠璃色の交換日記」

お母さんはなぜ雑誌社の人を呼んだのでしょうか?

娘が自分に殺されることを恐れていた事をバラしたかったのでしょうか?

それともわざとお母さんに殺されるという文章を記者に発見させて、恐怖に陥れてから殺すつもりだったのでしょうか・・疑問が多すぎていまいち怖さを感じる事ができませんでした。

 

ただ、娘がお母さんに殺される事を恐れていたというオチにはビックリしました。

 

「街灯のない路地」

なぜ母親から3ヶ月前の自殺の話を聞いたときに、今日カーテンから見えた影が自殺者かもしれないと不審に思わなかったのでしょう?

3か月前の自殺者の影が見えるという非現実的な事を受け止められなかったのでしょうか。

 

「オンライン中」

どの話も理不尽さがありますが、この話は理不尽さが際立っているように思います。

”怖い”というより”何でこうなる??”という感想です。

得体の知れない恐怖感を演出してるにしても理不尽さが過ぎます。

 

「労働後の子供」

この話が一番面白かったです!

今までの短編と同じようにバッドエンドかと思いきや、相変わらず「子供」が何なのかさっぱり分かりませんが唯一ハッピーエンドのオチにほっとします。

 

そして何よりラスト1行!!!

『涙で何も見えない。気付いていなかった。私は天使だった。立ち食い蕎麦屋の天使。』

には笑わせていただきました(笑)。

 

「敵性記憶」

この短編の”自分の記憶に入り込まれる”というのは、私は今まで聞いたことがなかったので斬新に感じました。 

 

「インターネット・プロトコル」

ここに乗っている座標をストリートビューで見ると、記述通りなのか確認してみたいですが、怖くてできません。

いるわけないとわかっているのに(笑)。

 

「終りの日記」

父親と関内は久賀和里村に捜査に行くと言って出かけ、久賀和里村の手前で5人分の死体が発見され、二人とも行方不明なら、当然警察は村の中まで捜索するはずでは?

 

その村に父親の私物の車が気付かれずに置きっぱなしなのか?

そして拳銃やメモも置きっぱなし・・警視庁は二人を探す気がなかったとしか思えないです。

 

さて感想も最後になりますが、他の人の感想を読んでいるときに、短編のタイトルが私の本と違うことに気が付きました

私が購入した本は2021年6月に文庫本化される際に短編のタイトルが全て変更になったようですね。

比較をしてみたのが以下のとおりです。

 

  【単行本】

六年前の日記

写真

お前を見ている

陸橋のあたりから

二股の道にいる

痛い

なぜかそれはいけない

帰り道の子供

随伴者

昨夜の雪

なかったはずの位置に

ルール(Googleストリートビューについて)

視えないのにそこにいる

 

【文庫本】     

瑠璃色の交換日記

空間認識

街灯のない路地

こどもだけが

遠くのY路地

オンライン中

後(のち)にそれは

労働後の子供

口は動いていない

不格好の雪だるま

敵性記憶

インターネット・プロトコル

終わりの日記

あとがき

 

単行本の感想を書いている人で、単行本の短編のタイトルの最初の文字を並べて反対から読むと・・というのがありました。

なるほど!!!「ミルナキズカナイフリオシロ」になるんですね。

 

そして文庫本のタイトルも同じように最初の文字を並べて反対から読むと「アオイテブクロノオトコガクル」・・

 

うーん・・相変わらず意味が分かりません。

もしかして私が見落としていただけで、作中に青い手袋の男は出てきたのでしょうか?

それとも似鳥さんの別の作品に青い手袋の男が出ているのでしょうか??

それとも次回予告でしょうか(笑)。

 

最後まで疑問点を提供してくれる作品でした。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

怖さ   ☆☆

疑問点  ☆☆☆☆☆

立ち食い蕎麦屋の天使 ☆×100