私はこの本を買ったことすら覚えていませんでした(汗)。
「好き好き大好き超愛してる。」を本屋で買った次の週にも本屋に行っているので、きっとその時に買ったと思います。
買った理由は完全な「タイトル買い」で、タイトルを見てホラーものだと思ったのではないでしょうか。
なお私は表紙裏のあらすじは普段見ないようにしているので購入時にも見ていなかったのでしょう。
それで本棚にあったので読み始めました。
読み始めてすぐに、ホラーものどころか私の苦手な「イヤミス」の雰囲気が漂っていて、読むのを躊躇いましたが、読んだら面白いのかもしれないと思い読み続けました。
序盤で景子の監禁生活が一年でその後無事助かったという描写があり、監禁の描写も全体の1/4もないくらいなので読んでいてつらくはなかったです。
ただ助け出されてからの景子の味わった困惑や屈辱の方が読んでいてキツいものがありました。
読み終わって、何が本当のことで何が景子の創作なのか分かりにくいし、景子がどこまで本当のことを書いているのかは読者が想像するしかありません。
ケンジがアナを監禁したことやケンジとヤタベの北海道でのことは景子の想像でしょう。
そして作中で景子は『性的な人間』に生まれ変わったと自覚をしても、結局は男性の性的なものを理解できず、ケンジがなぜ自分を誘拐したのかも結局わからないまま、ただ理由を想像することしかできなかったのと同様、読者もこの物語に対して、景子がなぜ「残虐記」を書いたのか、なぜ失踪したのかは想像するしかないです。
私が思うに、作中で結局一番悪いのは「大人」なんだと思います。
原因を作ったケンジが一番悪いのはもちろんですが、気が弱く不倫に逃げた父親、気位が高く無意識に景子を追い詰める母親、監禁事件を想像し愉悦に浸る宮坂、責任を取らずに逃げ続けるヤタベなど、大人の思惑の犠牲になったのが景子だと思います。
その中でも景子の心を呪縛する「男の性的なもの」が子供の人生に計り知れない影響を及ぼすかが描写されています。
終盤では『私はケンジを好きになった。』とケンジと愛を育んだことが書かれているので、景子は「自分の理解者」としてケンジを求め、そして「自分が理解できないケンジ」を理解しようとしているように思えます。
ストックホルム症候群で加害者を好きになったことは仕方がないにしても、それは景子にとって良いことなのか、幸せなのか疑問です。
さてこの感想も最後になりますが、どんなに現在の生活や境遇が大変であろうとも、他人の犯罪により自分の人生を変えられるよりマシであると思えます。
犯罪は被害者も加害者も、自分だけでなく家族や周囲の人間の人生も狂わせます。
また犯罪被害により人生を変えらた被害者がその後に世間的にどんなに成功しているように見えても、心の傷とその後の人生に与える影響を考えると、加害者は許されるものではないと思います。
(個人的評価)
面白さ ☆☆
重いテーマ ☆☆☆☆☆
大人の罪深さ ☆☆☆☆☆
男の罪深さ ★×100