ハロウィン————カボチャ男のからっぽの晴れやかさ | hermioneのブログ  かるやかな意識のグリッド(の風)にのる

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バシャーリアン。読むことで意識が変わるようなファンタジーや物語に出会ってゆきたい。

 

『リターントゥOZ』(1985)というディズニーの映画があります。あの『オズの魔法使い』の続編で、原作の2巻3巻をまぜて創った作品。

 おそるべし、この原作シリーズ。1900年の『オズの魔法使い』では、児童文学初のサイボーグ、ブリキのきこりが登場しますし、続編『オズの虹の国』(1904)『オズのオズマ姫』(1906)では性転換、頭のすげかえ、四肢の先に車輪のついたハイブリッド人間(ホイーラー)、寄せ集め家具に生命を与える「命の粉」など、時代を先取りした身体イメージが出そろっています。魔女もいますが、SFテクノロジーが平然と魔法と両立している、アメリカならではの怪作です。

 

★この季節になると、その中でも気になる存在のジャック・オ・ランタン。かぼちゃをくりぬいた頭に、枝で作った四肢。中身がからっぽであること、笑顔が彫りつけられたものであることをいつも気にしています。

 かぼちゃ色の明るさとともに、その固さ(どくろみたい)と、エディブル(食用)性が、私にはたまらない存在です。(「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」に先駆けること80年以上)笑うどくろの大王!

 

★映画も、ハロウィンの不気味さとカラフルさと混沌さを味噌漬けにしたような味わいで、日本版DVDは出ていないのですが、授業では学生の人気も高い一品。

 中でも「きょうはあの顔の気分」と言って60個ほどストックしてある首をすげかえる王女(映画では魔女)の映像は美しくもホラー。ほえええ……

 四肢の先が自転車の補助輪になっているホイーラーたちに加えて、「パーツ化される身体」「機械と接合される身体」という、近未来的なテーマがてんこ盛り。


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 さて原作のジャックは、オズの田舎の少年チップが、育ての親の魔女を脅かそうとしてこしらえたかぼちゃ人間(ちなみに、かぼちゃがハロウィンの主役になったのは、ハロウィンがアメリカに渡って以降で、本家アイルランドではカブだったそう)、これが魔女の命の粉で動きだしてしまいます。

 『虹の国』では、教授がプロジェクターで大きく拡大した虫がその大きさのまま脱走してしまったり、大鹿の剥製の頭とソファと椰子の葉を結びつけたハイブリッドなフランケンシュタイン的存在が、魔法の粉で奇妙なアイデンティティを得て生き返ったり、ジャックだけでなく頭が水にふやけやすいかかし含め、チップ以外、みんな、「生きてない」no life king なのです。

 この「生命のない」モノたちはどこかが壊れればすげかえればよい、というおもちゃ箱的な不死身存在で、ハロウィンの街角を練り歩くのにふさわしいツワモノ。

 そしてラストでは、チップが何と魔女の魔法で、赤ちゃんのときに男の子に変身させられたオズマ姫であることが明らかになり————けっこうな大騒ぎになるのですが、ジャックはひとこと

 

「あなたが女の子になってしまったら、もうわたしのお父さんになってもらえないじゃないですか」

 

 そして美少女にもどったチップに対しても「ちょっと見が変わっただけですよね」。

 

 と動じません。頭がからっぽですから……

 

★『スヌーピー』の毛布を放さない天才ピアニスト、ライナスくんは「ハロウィンにはかぼちゃ畑にかぼちゃ大王が来て願いをかなえてくれる」という話をひとりだけ信じて、かぼちゃ大王を出迎えるためかぼちゃ畑で寝ずの番をしています。

 かぼちゃ頭は、アメリカに来てからの新キャラで、でも一番人気を博してしまった存在。

 

 

まあ、ココアをおひとつ。