焼肉食いながらも
せっせとかき集めた「松の実」。


その汗と涙の結晶を
ビール飲みすぎたくらいで
店に忘れて帰ってしまった宮●。



そんなおっちょこちょいが
どうしても許せず、朝イチから



お前はアホかぁ!!!!!
何、ボケっとしとんじゃいッッ!!!
オレのこと、舐めとんか!おぅ?
クソボケーーーーッッ!!!!
死んでしまえぇぇぇぇーー!!!」



と怒鳴り上げてしまった俺。


最初は冗談だと思って薄笑いをしていた宮●が
涙目になるまで時間はかからなかった。


その後も
「お前、舐めとんか?」
とネチネチやってしまった。


ウチはペットショップではないので
ハムスターに松の実を食べさせるのは仕事ではない。
100%俺の趣味だ



「僕、学生時代から何でもソコソコ出来たので
怒られた経験がないんです。
だから・・・
怒られた時、どうリアクションしていいのか
分からないんですよ~。」


・・・なんてことを得意そうに言っていた宮●。


チマチマが怒られている傍ら
ニヤニヤしながら「ダメな先輩だぜ。」と思っていた宮●も
世の中の理不尽を知ったことだろう。



昨日はチマチマの27回目の誕生日だったので
みんなで焼肉を食べに行った。








例のごとく、松の実を集める。



横に座る宮●はどう思ってるんだろう・・・。
忌まわしい思い出の「松の実激怒事件」・・・。


夢中で焼肉を食って、飲んで
パッと横を見ると・・・




思いつめたような表情で
松の実を割り箸を入れる袋に詰め込んでいる
宮●がいた。









お宮・・・ゴメンな・・・(T。T)









   次の日、「マネージャー、どうぞ!」 うやうやしく献上
人をその気にさせる営業術、ってものがある。
営業マンならば下記の項目で思い当たる節もあるだろう。




①初対面の人は『ささいな失敗談』に好感を持つ⇒緊張をやわらげる


②説得の姿勢は「オープンポジション」:相手の正面を向き手のひらを相手に見せる


③説得にはA、『暗示的説得』とB、『明示的説得』がある。
  Aは結論を言わずに説得するものでBはあれこれ理由を述べて結論を述べる方法、
  実験からBの方が有効である。


④説得にはもっとも言いたいことを最後に持ってくる『クライマックス法』と
 言いたい事を最初に言う『反クライマックス法』がある。
 一般的には『クライマックス方法』の方が有効である。
 ただし大物(社会的地位のある方)の場合は『反クライマックス』がいい。


⑤交渉は最初の3分間が大切。人間の集中力が持つのは3分間が限度。


⑥同じ話は3回まで、3回以上はしつこいに変わる。


⑦自分がどう考えているか、ではなく相手がどう考えているかを考える。
それにより勝率は格段に上がる。


⑧話すスピードは早いよりもゆっくり朴訥としゃべった方が相手に重要に思ってもらえる。
 信用度アップ


⑨『ドア・イン・ザ・フェイス』法
『無理な頼みごと』をするときは
最初に『すごく無理な頼み事』をする戦術。
相手に心理的な負い目を与える。



⑩『泣き落とし戦術』は相手の良心に訴えかける分、すごく有効


⑪マイナス情報は多少おりまぜ、それを打ち消してプラス情報を伝えれば
不信感は消えて、やりやすくなる。


⑫相手の拡大解釈心理を利用:交渉が暗礁に乗り上げた時、
 それまで合意していた点を強調することにより
 残る問題はそれほど重要でないと思わせるテクニック


⑬『残存効果』人間は最後の言葉が印象に残るものである。
 悲観的な話から楽観的な話へ

⑭二者択一をせまるのはかなり有効


⑮「イエス」をたくさん言わせる。
⇒「イエス」を連発すれば「ノー」は言いにくくなる




※例をあげてみよう。

*************************************************************


『マネージャー!ジュース買って来ましょうか?(○_○)』



「あっ?うっ、うん・・」・・・1回目



『何にされますか?お茶でいいですか?(○_○)』



「うん」・・・2回目



『大きいペットボトルのヤツですよね?(○_○)』



「うっ、うん。」・・・3回目







『分かりました!

・・・・ついでに・・・
タバコ吸ってきても宜しいでしょうか?』




「あっ、うん・・・」





    ⑥ ⑨ ⑮を使ってタバコ休憩ゲット♪♪
その前日は職場の連中と焼肉を食っていた。
日頃の労をねぎらう時間。


「しかし、お宮もよく頑張ってるよな~。」

肉を頬張りながらモゴモゴ言う。



「マネージャーのご指導のお陰ですよ。」

ビールを飲んで潤んだ目で答える宮●。



「その会話やらしいなぁ~。政治か?アハハ」

神戸娘の突っ込みも軽妙に入る。


ワイワイやってその日の宴は終了した。
ただ一つ、いつもと違っていたのは
ユッケとか生レバーについていた
松の実をマメにお手拭とか入れるビニールの中に
せっせといれていたことだ。


その時期
職場では空前のハムスターブームの真っ只中であり
神戸娘や天然娘が日替わりで
MY・ハムスターを職場に持ってきては
業務そっちのけで
「見て見て~~~、カワイイでしょ~~??」とやっていた。


オレも元はハムスターブリーダーであり
繁殖させすぎたハムスターを野に放ったり
小学校の前に放置したり、と大活躍していた男なので
そんなんでは示しがつかない・・・と分かっていても
「どれどれ?あっ口の中にエサ溜め込んでるな!(^^)」
と好々爺のように目を細めてハムスター達を眺めて楽しんでいた。

(そのうち飽き足らなくなり、飼い主が離籍中に
ハムスターボールを高速回転させて
ハムスターがフラフラになっている姿を見て大笑いしたり、
冷たい水の中に放り込んで
溺れる姿を見て楽しんだり、とエスカレートしていったのだが・・・)


ハムスターの好物はヒマワリの種と言われているが
「松の実」に関してもガツガツ喰っている姿を覚えていたので
是非、食べさせてあげたい。

そんなやさしい思いから
次々と運ばれてくる料理からせっせと松の実を
取り分けていた訳だ。

横に座った宮●くんにもお願いして
彼の分の松の実もおすそ分けして貰った。

呆れたような視線を神戸娘や天然娘に向けられようとも
実際に大量の松の実をハムスターに食べさせる瞬間のために
上司の威厳をかなぐり捨ててまでかき集めた。


時間もあっという間に経ち
電車の時間があったので先に帰る準備をする。

その際に
「俺、こんなん持って家に帰るの面倒だから
宮●くんが一旦持って帰って
明日持って来てよ。」とお願いした。


「僕がですか!?」
やや、戸惑う宮●。

「何で松の実を家に持って帰らないといけないですかぁぁぁ
アンタが勝手に集めたんでしょうがぁぁぁ 。 死んでしまえ~~~~!!」
とチマチマならば心の中で叫ぶだろうが
宮●はあっさりと観念し

「分かりました。」と言ってくれた。



「じゃ!お疲れ~~~!!」
松の実、頼んだぜ!



「お疲れ様で~す。」

帰路についた。





次の日の朝・・・。


「おはよー!」


「おはようございます!」

いつも返事は元気良い宮●。
実にカワイイ部下だ。



「そうそう・・松の実、持って来てくれた?(^^)」



「へっ・・・!?」



「・・・ん?どうした(^^)?」



「・・・あの・・・実は・・・」



「???何、なに~?(^^)」



「そのまま店に忘れてしまっ・・・」






お前はアホかぁ!!!!!
何、ボケっとしとんじゃいッッ!!!
オレのこと、舐めとんか!おぅ?
クソボケーーーーッッ!!!!
死んでしまえぇぇぇぇーー!!!」



自分でも驚くくらい腹が立っていた。
大好きな焼肉もそこそこに
チマチマと松の実を集めていた俺の姿を見ていたはずの
宮●が・・・。
舐めたマネしやがって!!


「だいたい、お前の仕事ぶりからして
いい加減なんよ!!!」



「お前には誠意がない!」


「こんなミスが許されると思ってるのか?」


一旦、火がついた俺の怒りは
どこまでも収まらなかった。



「松の実」でそこまで言うか?
唖然とした表情の神戸娘と

何が起こったのかさっぱり分かっていない天然娘と

最大の被害者、涙目の宮●・・・。



ここにおいて俺のこのエピソード
「松の実激怒事件」
俺の人間の小ささを物語る伝説として
奴らの記憶の中に刻まれることとなった。



今でも「松の実・・・」と言えば
誰かが「ププッ」と笑う。


松の実が無いだけで
全力で24歳の若者を怒鳴り上げる33歳の俺。
短気にも程がある、と思う。


今年は生まれ変わるぜ!多分。






                狂人。
俺は短気だった。

短気を英語で「ショートテンパー」と言うのを高校時代に知って
短髪で天パーの俺は何か変な気持ちになったのを覚えている。

バブルがはじけるちょい前の
「東京ラブストーリー」が流行っていたあの時代。
俺は高校生だった。

物分りのいい爽やか系が流行っていた
そんな時代に「短気男」がモテるはずもなく
肝心のルックスがイマイチなのは無視し
俺がモテないのは「短気」が原因ではないかと
密かに自己分析していた時期もあった。

だから20歳の時くらいに
「いしべ、(性格が)丸くなったのぅ」
とサコッペから言われた時は嬉しかった。



しかし、それは長続きせず
初めて付き合った彼女に対しても

「ほら!ヘリコプター飛んでるで!見て!(^^)ノ」

「え?どこ?」


「ほら!あの辺り!(^^)ノ」


「え?見えない??どこ?」


「ほら・・・今、あのビルに隠れたけど・・・(^^)ノ」


「えー、どこ?」


「お前はバカかぁぁぁぁ(怒゚Д゚)ノ」
と、ブチ切れてたし


ハムスターのカゴがうまく作れないだけで
プラスチックのカゴを拳で叩き割りそうになったり・・・


社会人になってからも自転車の駐輪で
管理人のオヤジと口論になったり・・・


ビルですれ違ったレゲエ風のオヤジと
怒鳴りあいを演じたり


パチンコで負けた腹いせに
みんなが見てる前で財布を叩きつけ店を出たが
それでも気が納まらなかったので

その時に買い物した洋服の紙袋を大きく蹴り上げたら
他の家の屋根に引っかかってしまったこともある。
(その時に「「おい、まっさんあの紙袋取って来い」と一緒にいた友人に命令した。」
 とツウが勝手に脚色してあちこちで話したオマケつき)


聞く分には笑い話だろうが
俺は30代にもなって【短気野郎】は絶対に嫌だ。

みっともないし、人間が小さくて格好悪い。
そういう自分からは早急に脱却を図りたい。

しかし神様は見てくれているのか
そういう短気人間だからこそ数々の困難を与えてくれた。

特に4月以降、岡山に転勤してからというもの
刺激的な困難の連続に俺の「短気」はすっかりなりを潜めていた。



以前、一緒に仕事をした連中には
俺の「短気=人間の小ささ」はバレバレなので隠す気もないが
新しく一緒に仕事をする連中には
絶対に『怒ることなくいつも穏やかな・・・話のわかる上司』でありたかった・・・。


・・・ところが・・・(続く)





     俺の理想自己図(微笑み上司)

『個性派集団』
と言われる我が職場。

全員が「THE・オレ」的なメンタリティを持ち
どんな話題であれ最終的には自分に強引に結論を着地させる。

密度の濃さは半端ではなく
すべての人間が自意識が高いので
しょっちゅう小競り合いを起こしている。

動物園のサル山の猿達と
オレを含めた職場の人間が入れ替わったとしても
確実に3日は誰も気づかないだろう。

そういえば以前、
心理学みたいな研修を受けた際に聞いたことがある。

自己分析テストって
「思いやりがあるほうだ」とかいう質問に本人が

①はい ②いいえ ③どちらともつかない

という選択肢から選んで答える形式だが
それによって導き出された「本人のパーソナリティ」と
「周囲の人間からのその人のイメージ」に著しい乖離がある場合には
本人はかなり精神的におかしい・・・そうだ。

以前の職場でも社員にそういう自己診断をやってもらったが、
「あご男」にしても「C・K」、「イノハリさん」、まぁそんなもんだろう
という自己分析であった。

一人だけ、まるでブッダのような慈愛に満ち溢れたパーソナリティが出た
女性の社員がいた。

「黒魔術使えます」と言われても「やっぱりね。」としか言いようが無いほど
魔女フェイスのその社員・・・

性格を知っているだけに
診断結果を見た俺たちは唖然としたもんだが
本人は「当たり前でしょう」ってなもんだった。

アニキがホストをしており
利用された女から玄関に鳥の頭を置かれていた。
と自慢気に話し、「ワタシ・・・バイセクシャルなんです」
と公言してはばからず
挙句の果てに自傷癖まであるその女性社員のことは
今でも強烈に印象に残っている。


なぜそんな古い話を持ち出したか?というと
程度こそ差があれ、似たようなメンタリティの持ち主が
現在の職場にいるからだ。


昨日
「お互い誰が一番、変人か? 投票してみんか?」


「いいですね~やりましょう!」


誰が一番か?はっきりさせておくのもいいかも知れない。

エントリーメンバーは6名
それぞれ自分以外の5人に点数をつける

1位=5点
2位=4点
3位=3点
4位=2点
5位=1点


結果は・・・







「えーーーーーーーっ!!!!

何でですか~~~~~~!!!!!!


何でワタシィ~~~~~????

中○さんの方が変ですよ~~~~~!!!!

近○さんでしょ~~~~!!!!

何でワタシに投票すんの~~~~!!!

嫌や~~~~!!!

この職場おかしい~~~~~~!!!!

ホンマに嫌~~~~~!!!!!」


もう大騒ぎの・・・。






天然娘!!





「ワタシ、乙女なんですぅ・・・」

「すぐ泣いちゃうしぃ・・・」

「みんなイジワルや・・・」

少しのことでメソメソ泣く33歳。


悲しいことがあると
相手構わず打ち明け話をして泣く。

誰が周りにいようが気にせず泣き
相談に乗っている人間があたふたしてもお構いなしの33歳。


そうかと思えばキレた時には
肩を借りて泣いた相手のことさえ
「最初から胡散臭いと思ってたんや!」
とありとあらゆる罵詈雑言を吐く33歳。

日頃から愚痴や泣き言を聞かせつづけた後輩の宮○。
いつ終わるとも知れないネガトークを
辛抱強く聞いてくれてた宮○から相談には
「頑張りや」の一言で終わり。の33歳。

乗馬が趣味で、40万の鞍をポンと買い
母親を泣かせた33歳。

「結婚相手は「デブ」だけは絶対に嫌や」とはっきりと言い切る33歳。

「マネージャーからの着信音は
「ダースベイダーの登場の音楽」にしてるんです。
鳴ったらすごく嫌な気分になります」とあっけらかんと話す33歳。

神戸娘と遅くまで飲んだ日、帰りの足がなくなり
「友達なんで大丈夫!」と胸を張って友達を呼び出し送迎をさせ
神戸娘をもってして
「あんな時間に呼び出して手土産ひとつも渡してあげないなんてヒドイ!」
と呆れさせた33歳。

カラオケで「あやや」を熱唱する33歳。

留学経験があるからかやけに横文字を使いたがる33歳。


「ケータイ」のイントネーションが
「【ケ】-タイ」ではなく「ケー【タ】イ」の33歳。

岡山生まれ岡山育ち
大学も就職も岡山でなぜか関西弁。




○原さん・・・順当な結果だと思うよ・・・。

大学入学したての頃
俺はピンク色の妄想の中にいた。


長い浪人生活を経た俺は
バラ色の大学生活を心から夢見ていた。


こっちがシコシコ英単語を覚えているのを尻目に
現役で大学に入った奴は
「講義をブッチして・・・」とか
コンパしたらな~」とか
俺の愛用する「英単語ターゲット1900
には意味が載っていない単語を楽しそうに語らっていた。



俺は今でもその時のムカツキを覚えているし
一人だけ現役で大学に受かったホモの真吾が
浪人生一同でダベっていた時、
これみよがしに
「テメーの大学のロゴ入り」のライターで

タバコに火をつけたことは決して忘れない。


33歳になった今でもあの時の悔しさが俺の原点だ。


そんな悔しさを晴らすのは女しかない!
しかも洗練された都会の女を田舎のイモ連中に見せ付ける!


3年越しの第一志望の大学に落ちてしまい
失意のドン底にあった俺にとっては
「いい女をゲットする」ことで憂さを晴らしたかったし
そういう面で最終学歴になる大学は
関西ではお坊ちゃん大学としてそれなりのネームバリューを誇り
そこだけが救いだった。



現役で関西圏の大学に通う同級生のツテを頼り
紹介してもらうことになった。

その女はこともあろうに
俺の地元の隣の市出身。
近郊の女子大に通っているらしかった。

せっかく関西に来たのだから
京女(きょうおんな)あたりをブイブイ言わせたい俺としては不本意だったが
デビュー戦にそんな贅沢は言っていられない。

それに正直言えば素直に嬉しかった。

節制を強いられる浪人生活に加えて
全く女っけ無しでずっと過ごしてきたモテない君だったから。

「浪人しとるけー、女どころじゃないんよ~」
という言い訳も大学に入れば通用しない。
焦りもあった。

紙切れに書いた電話番号に電話をする。
心臓がドクドク言っていた。


「・・・もしもし、スガモトさんですか?」


「はい、そうですけど。」


「●●から話を聞いてるかな~?石○です。」


「あー、はいはい。聞いてるよ。」


数ヶ月前の浪人生活からは考えられない・・・。
悲壮感漂う受験前の正月と本当に同じ年度なのか・・・。

見知らぬ女子大生と話している自分に
頭の芯がボーッとしてくる。
慌しく自己紹介して本題に入った。



「さっそくだけど会えますか?」


「別にえーよ。」


心の中でガッツポーズ!!!
世の中すべての人にお礼を言って回りたい。
そんな気分。
「じゃあ・・・待ち合わせの場所はどこにしよう?」

「石○くんて大学の近くに下宿してるんでしょ?
私、大学入った事あるから、そこの正門でどう?」


正門で??

正直、そのセンスは長い浪人生活を経た俺でさえ
おのぼりさんみたいで嫌だったが、
そういうもんかも知れないと思ってしまった童貞20歳。


「・・・ところで、どんな感じの顔をしてるん?
待ち合わせで分からんかったら・・・困るし・・・。」


我ながら大胆だとは思ったが思い切って
一番聞きたいことを聞いてみた。

紹介者からはカワイイとも美人とも不細工とも
必要な情報は一切貰ってなかったし。


「・・・目はパッチリしてる・・・かな?」

「二重でパッチリしてる。」

強調してきた。よほど瞳に自信があるのだろう。
俺の想像では中山美穂が微笑んでいた。



全身全霊を込めた電話が終わり
心地よい脱力感を感じつつ
俺は友人に自慢の電話をかけまくった。


雲の上を歩くような・・・そんな気持ちが20歳にして
初めて分かったような気がした。


スガモトという女子大生。
俺の記念すべき女性になるかも知れない。
ピンク色の妄想はどこまでも膨らみ続けていった。


「青い春」と書いて「青春」
まさに青春だった。


待ち合わせの日までは幸福感から
何を言われてもヘラヘラしていた俺。
カレンダーがあったら待ち合わせの日に大きく丸をつけて
そこまでをバッテンして消していただろう。


そしてその日はやってきた!


待ち合わせの5分くらい前に到着し
キャンパスから帰宅する学生で結構ごった返している中
目ぼしい女のコをチェックした。



瞳の魅惑的な美人女子大生・・・?

南国風の美女・・・?

目のパッチリしたカワイイコ・・・?


さりげなく、それでいてどんな些細な変化も見逃さない
レーダーのような視線を辺りに送った。



どこにもいない・・・。




その中に一人だけいた・・・。
小柄な若い女子大生・・・
誰かを探すようにキョロキョロしてる。



ま・・・さ・・・か・・・?




マ・・・ジ・・・?






「ス・・スガモトさん・・?」
声が震えたのが自分でも分かった・・・。



「はい。」と言ったその女のルックスは・・・















そりゃ・・・目はパッチリしてるけどよぉ~~~!!



俺が覚えているのはそこまでだ・・・。



もしも神様がいるのならば
その時、俺が抱いた淡い恋心
二十歳の俺のそんな記憶を今すぐに消し去って欲しい・・・。

「くさいッスわ~~~。」



一日中、靴を履きっぱなしの人なら分かると思う。
立ち仕事は特にそうだ。

聞くところによると
足の指と指の間のはケツの穴よりも汚い
(雑菌が繁殖している)らしい。


ボロボロになった靴の中敷を
自慢気に見せる宮●(まだ24歳)





「こんなん買ってきましたよ。」





抗菌タイプの中敷を購入し
足の裏からデオドラント!


失恋は人を変える。
宮●も今、変わろうとしている。



「マネージャー、本読みました!
やっぱり男は「狼」ですね。
「ブタ」になったらダメですよね!」


「僕の悩みなんて小さいことなんですね~~~。」


「男は仕事です!!!」


『女にモテる本』とか、『一日一杯の読むスープ』なんて
チマチマした本に救いを求めていたコイツに俺が紹介した本


『狼たちへの伝言//落合信彦著』 だ。


俺も悩み多き浪人生だった19歳くらいの時に読んで
「何つまらないコト、ウジウジ言ってるんだ!世界を見ろ!
平和ボケするんじゃねぇ!人生は戦いなんだよ!」的な文章と
著者のくぐった修羅場のスケールの大きさに感動した。


その後、落合本を貪り読んでたら
何となくその世界にも慣れていってしまい
また内容も「あれ!?この話、前の本にも書いてあったような・・・」
ということもあり、今ではすっかりご無沙汰になってしまったのだが。


それでも俺の人生観に多少の影響を与えてくれたことは
疑いようがなく、一部で「ハッタリおやじ」との評もあるが

「じゃあ、批判するテメーに
「アメリカのフットボール選手と喧嘩して勝った。とか
金髪のネーちゃんとやりまくったりした!」
って文章が堂々と書けるのかよ!」と言いたい。


疑うことを知らない若年期には
こういう漢(おとこ)系の本を読むべきだと俺は強く奨めたい。


「買ってよかったです。」

上司に対するおべっかも
多少は混ぜ込んでいるとは言え
事務所の入居してるビルの中にある本屋に
わざわざ宮●を連れて行き
購入させただけの甲斐はあったと言うもんだ。


なぜならば、この本を人に奨めたのは
「初めて」ではないからだ・・・。



自分のことしか考えられず
仕事を任せたらミスの連発。

遠距離の彼女に会うことで頭が一杯で
「どうやって休むか」が、すべてのモチベーションの源泉

失敗すれば丁寧に反省の弁を述べるが
ネズミのように同じミスを繰り返し

注意すれば逆恨みをし
言ってることとやってることが全く持って一致しない
なんて言うか、どうにもピリッとしない



あの男・・・

後輩が怒られている姿にエクスタシーを感じる
ドS(エス)の・・・





そう・・・チマチマである。




「前にな~中○クンにも「読んだら?」って奨めて見たんよ~。

そしたら「すぐに買わせて頂きます」って即答したんだけど
「買った?」って聞いても「・・・注文中です・・・すみません。

その後、大分経ってから「買った?」って聞いたら
かっ、買いました・・・
って、しどろもどろになっちゃって・・・

「読んだ?」って聞いても
「・・・まだ開いてないです・・・すみません。」しか
言わないんよな~。

その点、宮●くんはエライわ・・・。」

と、愚痴めいた話をしていたら



「・・・中○さんですよね~~?
実際本さえ買ってるか怪しいですよ~
本当に買ってるかどうか聞いてみましょうか?

僕、実際に買ってますから
「その本、どんな表紙なんですか?」って聞いてみます。」



ナイス提案!!



いつものように口を半開きにして
パソコンをカチャカチャやっている中○くんに


「なぁ・・・前に奨めた本があったじゃん?
あれ・・・読んだ?」




(゚口゚;)うっ・・・・・・・・となった中○・・・



「・・・・」
しばしの沈黙の後・・・



まっ、まだ読んでません・・・
と、つぶやくように言った。


奨めた時にはじっと俺の目を見据えて
「ありがとうございます!是非、読ませて頂きます!」
と言ってたくせにさ。あれから何ヶ月経ってるんだよ・・・


「中○さん、僕もその本、読んでみたいんですよ~。
表紙どんなんですか~?」


ナイス突っ込み!




「・・・」


「・・・」


「・・・読んでないんで・・・ごめん・・・」


最後は消え入りそうな声だったチマチマ。









【結論】・・・買ってない。

昨日の晩飯は『おんどる房』 のプルコギだ。







カウンターのみのこじんまりとした店の中は
韓流一色で、店内にはどこかで聞いたことのある
懐かしいメロディーの韓国人歌手のBGMが流れていた・・・


ちょっとッ!!音量が大き過ぎるぞ!!


フーフー言いながら食べる。
うまいっ!!

深夜にこんなモンばっか食って
成人病まっしぐらの生活だが気にしない。

仕事に休みをレイプされているので
やや自暴自棄になっている。



「僕、本買ったんスよ。」


失恋したショックで今や何でもありの宮●。


ヤケをおこして友人と行った
フィリピンパブのユウコちゃんからの

「ヒロシサーン!オミセマタキテネー!マッテルヨー」
の留守電も宮●の心を癒すことは決してない。


『しあわせの雑学/近藤勝重』
元気が出る系のいい話集だ。


何かにすがるように真剣な表情で読む。





「人間の不幸の数は神様によって決められてるんですって!

例えば交通事故3回とか病気5回とか・・・
だから悪いことが起こっても

「あっ、これは人生で与えられた不幸の数がひとつ減った。」

って思えばいいんスね~。」


新しい自分になるために
彼女から貰った時計を捨て去り
チュードルの時計 (215,000円!)を注文した宮●。


心を紛らわす為になら今は投資を惜しまないだけに
インチキな宗教の人、チャンスです。
鴨がネギ背負ってプルプル震えています。


高い壷でも即アポ、即決、即回収です。
小銭は持ってますからね。
仲介手数料は10%でどうですか~?


ではメール待ってます♪
「アンタは何回言うても変わらへん。
今後も付き合っていくのは不安や」


5年付き合っていた彼女からのいきなりのダメ出し。
直後の宮●は本当にボロボロだった。


失恋濃厚の展開から一筋の光明を見出し
よりを戻す最後のチャンスをつかむ為
大阪まで愛車を走らせた宮●を待っていたのは
クリスマス前の【別れましょう宣言】だった。


「・・・でも、マネージャー・・・
『これからも電話で話とかしような』
って言われたんスけど
これってまだチャンスが・・・???」


それは・・・絶対ない!!
でも・・・その気持ちわかるぜ。


写真を見たけど本当に美人のコだった。
多分、こいつの人生ではもう二度とあんな上玉とは付き合えないだろう。


学生時代からの付き合いだから
宮●もあんな美人と付き合えたんだと思う。


学生時代、垢抜けないコが社会人になって
花開くのはよくある話で
人間って旬の時期があると思う。


「いや~、昔はねぇ、
そんなに可愛いって訳でもなかったんですけど・・・
社会人になってからは結構キレイになったんスよ。」
宮●のコメントである。


彼女がキレイになる前に手を出して
付き合ってる間に勝手にキレイになっていって・・・
先物買いが効を奏した例だろう。


「悪い方向にばっか物事を考えちゃうんですよ。
○原さんのお得意のネガトーク(会社批判、職場批判、自己否定)も
いつもなら「甘いな~」と軽く流せるんですけど・・・
「そうだよな~~」って言っちゃう自分がいるんです。」


俺はそういう悩みを打ち明ける素直さがあるコイツが好きだ。



で、少しでも気を紛らわしてやろうと
カツ丼を食べに行った。(もちろん『だて』だ』




      「まいうー」って自然に言っちゃった(^m^)



帰り道、

「もっと偉くなって見返してやれ!」

「女なんて電車と同じ、後からいくらでも来るさ」

「ファッションから変えてみたらどうだ?まず靴を新しいのに変えろ」

と自分に言われても到底納得いかないであろうアドバイスをする。





「何か新しいことでも始めようかな~、なんて思ってるんスよ。」

失恋に代表される挫折は竹の節みたいなもんで
それがあるから強くなれる。

まだ若い。いくらでも出会いはあるさ!

「頑張ります!」




「こういう所から変わっていきます」

事務所に帰り、颯爽とアイテムを出す宮●



拡大すると・・・









        消臭作業中の宮●


白鳥が水面下では足をバタつかせているが如く
新しい誰かのためにまずは泥にまみれてガンバレ!宮●。



「ブログ見たけど本当に宮●、フラレたん?
嬉しい~~~~、めっちゃ嬉しい、お前も嬉しいやろ???
強烈に嬉しい、お前のブログに何か書かれても嬉しいッ!!」

宮●が美人の彼女にフラれたことに喜びを爆発させるタカシ。

誰かが美人と付き合っているだけで
「最高にムカつく!」と大騒ぎするこの強烈個性をまずは見返そうな!
チマチマ男の「器の小ささ」を散々バカにしている俺だが
実は俺の器の小ささも負けていない。


例えばコンビニで買い物をしたとする。
品物を買い、レジのアルバイトから
「○○円のお返しになります。」と
お釣りを返してもらうとしよう。


その時に男性なら問題ないのであるが
女性、特に若いコになると
もういけない。

俺の手に触れないように
渡すと言うよりはむしろ「上から落とす」と言った方が適切な
手と手を接触させないようにした渡し方だと


「このアマ、俺だってお前に触られたくないんじゃぁぁぁ~~」
という強い反発と
「俺って小汚いオッサンとして認知されているのでは??」
という不安が
コンマ数秒の間、俺の心を悩ませるのだ。


この気持ち、分かってくれるだろうか・・。


そう言えば最近まで俺の職場には
派遣社員の女の子がいたのだが(契約満了でいなくなった)
前前職の職場を「セクハラで辞めました」と言っていた。

まだ20代の上司からしつこく食事に誘われたり電話をかけられたり
それはもうパワハラ+セクハラ状態だったらしい。

ぶっちゃけ、「何でコイツなんかを追い掛け回すんだ?」
という気持ちになるようなルックスのコだったのだが
「蓼食う虫も好き好き」と言うし、別に俺の人生には関係ない・・・

と思って採用したのだが
良く考えてみると俺は彼女にとって上司に当たる訳で

セクハラの被害を受け些細なことにも敏感になっているであろう若い娘に
「エロ単語古今東西」をチマや宮とキャッキャッ楽しむ俺が
同じ職場で働くのはどう考えてもヤバイ。


食事に誘ったり、電話をすることは一切ないと断言できるが
何を持ってセクハラと見なすかは本人の胸一寸だ。


タダでさえ奔放な言動で誤解を招きやすい俺。

タカシのように「セクハラ大魔神」と言われても
ヘラヘラするほど神経は太くないし・・・。


聞けば、この娘は退職の際には
会社のお偉いさんまで巻き込んで
「セクハラされました~~~。」と大立ち回りを演じたとも聞いている。


もしかしたら男性にも言い分があったかも知れないが
電車での痴漢と同様に女性が「セクハラ」と言えば
それはセクハラなのである。


全く面識のない女から突然「ストーカー野郎」呼ばわりされた
ムカツキ、やり切れなさは以前にこのブログで書いたことがあるが
知的なイメージの俺様の洋々たる前途が
一小娘の思い込みによって台無しにされるのは避けたいところだ。


彼女曰く
「住んでたマンションまで押しかけてきた」
セクハラ上司。

20代中盤の若い男性のそのアプローチは
もしかしたら恋愛感情に起因したものかも知れないが
真意を確認することは永遠に出来ない。


ここから本題に入るのだが

契約満了で去っていったその娘、
そのコが事務所にいるだけで急に無口になったり
外出させたり、なるべく接触を避ける行動に出た俺の作戦が功を奏したのか
懸念していたセクハラ呼ばわりはされることはなかったが


最近、2度ほど偶然近くのコンビニで会った。
二度と会うことはないだろうとタカをくくっていただけに
びっくりしたが、彼女の次の派遣先は俺の職場と近いらしい。


普通はそれで終わりなのだろうけど
二度目に出くわした時の彼女の目が
一瞬、「何でこんなに会うの?」と言っているような気がした。


人に買い物を行かせる出不精がわざわざコンビニに買い物に来る
                ↓
私を発見したのに味をしめ偶然を装って頻繁にコンビニに来てる
                ↓
            私をつけ回している?
                ↓
              ストーカー


彼女の頭の中でこういう思考がされていたら・・・・?
俺はそこまで想像してしまう。






人は皆、心にチマチマを飼っている。

俺もまたチマチマ・・・だ。