サラリーマンが大変なのは当たり前。
100%満足している人なんていないし、苦労もお給料のうちだぞ。
困難を糧にしてこそ、君は成長できるんだから。
大丈夫!明日はいいことあるさ!
ガンバロー(^o^)ノ


そういう奴に限って大した仕事はしてないもんだ。
人のことならいくらだって言える。結局、自分じゃないもんな。


異常な程、気持ちがささくれ立っている俺。
感情のコントロールが難しくなっている。


幸いな事に俺の周りには
そんな能天気な事をのたまうバカはいなかった。
ハートのある人ばかりだ。感謝しています。


でも・・・もう限界かも・・・。


そういえば久しぶりにお会いした神様はじーーーっと
俺の顔を見て言った。

「人相変わったなぁ。」
「○○におった頃は自信に満ち溢れとったのになぁ・・」





「苦笑い」
俺は本当の意味でのそれを
生まれて初めて使ったのかも知れない。






小学校から中学校になると
学区も広がり、沢山の奴と出会うことになる。
ヤンキーもいるし、おもしろい奴もいるし、可愛いコ&ブス、一気に世界が広がる。

俺は割りと人数の多い小学校出身だったので
友達や顔見知りも多く、友達作りには有利な立場にいた。


市立第二中学校の『1年4組』
当時多少ポッチャリしていて
母親から「豆タンク」というあだ名で呼ばれていた12歳の俺にとって
初めての異文化交流の場だった。


そのクラスに「河野」はいた。
同じような生活レベルの人間でつるんでいた俺にとって
奴の存在は驚きだった。


まず「小さい。」これは良しとしよう。


服装がボロイ。
カバンもボロボロ・・・。


中一と言えばほとんどの奴が新しい制服に身を包み
それを誇らしげにしているものであるが
奴の制服はどうみても誰かのお下がりでテカテカ。


そしてトドメは「臭い」のである。



絵に描いたような貧乏人で、しかも杉原という乱暴者
(のちに俺が「デコ」というあだ名をつけてやったノータリン)
にイジメさえ受けていた。


噂では夜逃げをするほど生活には困窮していて
妹もいるが、まだ幼稚園児で
とにかく大変な家庭環境らしかった。


ファミコンとか好きな女子とか
そんな事が話題の中心だった当時の俺からすれば
なんだか気になる存在だった。


だが、そんなコトを友達に話せば
多分「ふーん。」で終わるのは目に見えていたし
イジメを受けている河野を庇うほど仲がいい訳でもなかったので
同情しつつも、たまに言葉をかける程度でお茶を濁していた。


しかし正直、「かわいそう」だと思っていた。
その家に生まれてしまっただけで
「貧乏」やら「臭い」やら言われてイジメを受け続ける河野。


顔も「ひょっとこ 」みたいで頼りなく、小さい上に
体力もなく、勉強も出来なかった。

「何とかしてやりたい。」
俺は子供心に小さな胸を痛め続けていた。

本人のせいではないのに「不幸な河野」
「幸せな俺」、罪悪感さえ感じていたのかも知れない。


ある日、俺は思い切って母親に「河野」のことを話した。
曰く、「すごくかわいそうな奴がいる」
曰く「貧乏でかわいそうだ」
曰く「何とかしてやりたい」


母親も驚いたと思う。
読書や、ゲーム、草野球に呆けていたはずの「豆タンク」が
いきなりの爆弾発言である。


河野に同情したのか
俺の気持ちを理解してくれたのか
根掘り葉掘り詮索すること無く
「河野くんに新しい体操服をプレゼントしよう」という話になった。



「おい、河野!これやるわ!」
「注文したけど、俺にはサイズが小さかったけぇ・・・」




誰もいない教室で
押し付けるように渡し、その場を立ち去った。
河野は受け取ってくれた。
泣いてるような笑っているような顔だった。



今から思えば独りよがりだとは思う。
傲慢だったかも知れない。
でもそれしか考えつかなかった。
13歳の俺にとっては精一杯の行動だった。




そんな出来事から5年経った高校2年生の夏、
俺は同じ中学出身の「ツヨシ」と話をしていた。
ツヨシは中学の時、1年4組で同級生でもあった。


なぜか話題は河野の話になった。

中学一年の時は同じクラスだったが
中二では別のクラスになり、中三では俺自身、受験勉強で忙しく
河野の事なんてすっかり忘れ去っていたので
興味を持って聞いていたら

『河野は中3になってから学校に来なくなっており
「サーカスに売られた」という噂が立っていた』という内容だった。


久しぶりに聞いた「河野」の名前に
色んな思いをはせていた俺に、ツヨシは言った。





「そういえばお前、河野の事、よくイジメとったよなぁ~






俺がイジめていたのは
タラコ唇がむかついた「直樹」であり決して「河野」ではなかった。

人の記憶の曖昧さを俺はその時初めて知ったし傷ついた。


俺はそこから開き直り
高校2年生にして同じクラスの嘘つきブタ「池田」を苛め抜くことになる。

多分、ツヨシのせいだ。