「もしもし・・・岩○様ですか?
 私、●●の石○と申しますが、お電話を頂いたそうで・・・?


営業用の声色を出す。



前任の支店に
俺を名指しで電話をかけてきたド厚かましい岩○。
ムカつくし、怒鳴ってやりたいところではあるが
万が一、全く別の人だったらいけないので念の為だ。



「はい・・・あの・・・」




「はい?





「石○さんでしょうか?」




「はい、そうですが?



明るく元気良く!お客様に失礼があってはいけない。
社会人の基本だ。



「あの私・・・高校生の時にご一緒させていただい・・・」



やっぱりか!!(`´)







「お~ま~え~か~~~~~?。





声の感じ、まどろっかしい喋り方
本来、気はメチャクチャ強くプライドも高いくせに
わざと天然ボケのフリをするしたたかさを持っている岩○。
俺はイタズラで出したハガキを警察まで持っていかれた
苦い記憶を忘れていないぜ。


人の職場に
しかも前の職場にまで電話をかけてきたという
その図々しさに改めて心底腹が立った。



「何の用よ?



「いえ、あの・・・お話したくて・・・」




「はぁ?何を言ってんの?バカじゃねーか?お前?



俺の怒気をはらんだ強い口調に
黙って作業をしていた天然娘が
ビックリした顔をしてこっちを見た。





「お前、どうやって俺がここで働いてるの調べたんよ?




「いえ、あの・・・Yahooで検索して・・」



「はぁ???何でYahooで検索して俺の職場が分かるんよ?」

そういいつつも、
以前に自分でgoogle検索したことがあり
支店と責任者名の俺の名前がヒットするのは知っていた。
みんなもコッソリやったことあるでしょう?


・・・というか勝手に人の名前を検索すんな!!!



「・・・で、何の用よ?






「あの、いえ、何をしているのかぁ・・・と思いまして・・・」




「お前、何言ってるの???何で職場にかけてくるの?




「石○くんの携帯番号を知らないですし・・・。」



「当たり前じゃん!!!教えてないもん。
どうでもええけど、何で敬語でしゃべってんの?」




「なんか、緊張してしまいまして・・・」




「意味が分からんわ。」

吐き捨ててやった。




それにしてもさっきから
「誰と何の話をしているんだろう?」と
こっちをじっと見てる天然娘と
黙ったまま耳をダンボにして聞いているチマチマが
どうにも気になる。


別れ話がこじれて
会社まで女が電話をかけてきて
それに逆キレしている公私混同のバカ上司。


そんな風に思われていたら・・・

しかも相手は岩○。
考えただけでも立ちくらみがしそうだ。




誤解されても嫌なので
少しトーンダウンをして冷静に話してみる。




「ふ~ん。まぁええわ。ところで今、何してるん?」




「今、病院に入ってまして・・・」




「へっ?病院からかけてんの?」





「はい・・・」





社会人なら
私用電話を職場にしないことは基本中の基本。
しかも俺とは10年以上も音信不通の関係である。
普通の人ならまずそんな不躾なことはしない。
常識だろう。

それをものともせず、職場にかけてくるなんて・・・
結局、何の用事なのかもさっぱり要領も得ないし。




はっ!?病院って・・・????





「精神病院か?」



こういう場合は直球勝負だ。
それならそれなりの対処をしないと
どんな面倒ごとが待っているか分からない。
それにしても朝から晩までひたすら一生懸命働いている
この俺がいったい何を悪いことをしたと言うのか・・・。




「いえ・・・婦人系の・・・」




「あっ、そう。そうか、そうか」


少しだけ安心したが、仕事中に
岩○と電話してる場合じゃない。
人生の何分かを確実に無駄に遣っている。



「あの~。携帯の番号教えてもらえますか?」



「何で?」



「・・・。」



誤解の無いように言っておくけど
彼女は俺に対して恋愛感情は全くない。
昔からずっとそうだ。


何と言うか、変わり者の女で
自分は「特別な人間」だと思っている節があり
「そんな私が一目置く男子」=「仲間」
という妙な思い込みがあるようなのだ。


モノの見方がどうにも変わっていて
性格が歪みまくって斜に構えていた
何もわかっちゃいないガキの俺を
学生時代は「俺=凄い人」と勝手に決め付け
英雄視していた。


そしてこいつの妄想のせいで
俺がどれだけ迷惑を被ったか・・・。


俺の中では単なる知り合いなのに
こいつの「石○くんは凄い人」という馬鹿な発言で
痛くも無い腹を探られ、二人の関係を邪推をされた時期もあったのだ。
俺にとってみれば交通事故に遭った様なものだった。



サコッペやツウ、山さんなんかは分かってくれると思う。



とにかくこれ以上話していても埒があかないし
天然娘やチマチマに誤解され
あちこちに喋られては一大事だ。
泥沼に入っていくような感触を覚えたので
強引に終わりにすることにする。



「わかった!じゃコッチからまた連絡するわ!」



「えっ?、連絡先を教えて下さい・・・」



「うんうん、とりあえずコッチからまた電話するし・・・」





「ウフフ、石○くんからは絶対に電話かけて来ないと思うので
教えてく・・・」





「あははは、そんな訳ないじゃん!
そっちの番号を知ってるしメモにも控えてる。

またヒマでヒマでどうしようも無い時に、
もしかしたら連絡するわ!」



「え・・・」



返事も聞かずに切ってしまった。



そして電話番号を書いたメモを
グチャグチャに丸めてゴミ箱に捨てた。



ヒドイと言われてもいい。
傲慢と言われるならそれも結構だ。



俺はこの年にもなって岩○なんかと関わりたくない。
今さら何の発展性があるというのだ?

このブログを読んでくれている一部の同級生なら
きっと分かってくれると思う。




「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた、旅人なり。」


友達を選ぶ年齢になったってことだね。






   現在の岩○想像図。もう二度と会うこともないだろう・・・。