サラリーマン生活、山あり谷ありだ。
所詮は気楽な勤め人。
仕事なんて時間の切り売り。

分かっていてもストレスは溜まる。
本気で悩んで占いに行ったり、バカ食いしたり
発作的に「桃太郎ぶどう」を2箱買ってみたり・・・。

本当はどこか遠くに旅行に行きたいのだが
時間もなければ金もない。仕方がないので過去に旅してみよう。


高校生から大学生にかけてのメールなど無かった時代
俺は意外にも筆マメな男だった。
年賀状も結構出していた。

その中で唯一、親友サコッペには
自分の名前では書かず
中学時代「ヘココ」とあだ名されたブスの名前で出していた。



女の子からは一枚も貰ったことがないであろう
当時の彼の女日照り人生。

そこに届く一枚の年賀状。
あいつが郵便受けに年賀状なんて取りにいくはずがないから
家族が先に女性の名前で書いてある年賀状を見るわけだ。

ちょっとした事件にはなるはず。
先走った親からは冷やかされ、弟からは尊敬の眼差しで見られる


「ひとし~、女のコから年賀状が届いとるよ~」
俺が何度となくモノマネをした奴の母親の甲高い声が
下の部屋から二階でファミコンをしているサコッペの耳に入る。


「えっ!」


驚きと喜びが交錯したような不思議な感情。
短い足をバタつかせながら1階まで階段を駆け下りる。


「誰から?」


モテない息子に届いた女のコからの手紙
家族も緊張し、サコッペの一挙手一投足に注目する。


とは言え、まだ思春期真っ盛りの童貞男。

「そのコ誰?彼女?」との母親の質問に
「誰でもええじゃん!」とぶっきら棒に答え
バクバク高鳴る心臓の音を聞かれやしないか
ドキドキしながら、差出人の名前を見る。


そこには中学時代、圧倒的なスケールでNO.1だったブスの名前。
愛を告白するようなメッセージ付き。


その時のサコッペの顔を想像するだけでも
腹がよじれる程笑えた俺。


「ヘココから年賀状が届いたわ。」


俺からだと分かっているくせにボケてくるサコッペ。


「マジで?すげぇじゃん。モテるのぉ~」と俺。


大笑いして、別の話をする。
恋の話、友達の話、将来の夢、噂話・・・


何者でも無かったし
何者にでもなれる可能性があったあの頃。

あの頃の未来が現在このざまだ。


もっと頑張ろう、と思う。


l※明日はその後
毎年恒例となった「へここレター」に対する
サコッペからの手紙を公開!




【へここ肖像画】 (卒業アルバムより)

「へここってブサイク」とか言う以前に
自分達のルックスを顧みる必要があった俺達。
男はいつまで経っても子供だね。