「中○さんに渡したい物があります。
 少しお話もしたいのです・・・(*ノωノ)キャ」



クレームや苦情以外で
チマチマ男が名指しをされるのを初めて聞いた。


普段から虫も殺さぬ顔をして
否、虫から逆に殺されるような弱さを有しながらも
天性の口の上手さをフルに使いその場しのぎのハッタリで
切り抜け・・・られず結局いつも2倍怒られるチマチマ男。


自己主張をしない性格ゆえに
一見、穏やかに見える彼は実は非常にプライドが高く
しかも心の容量が非常に小さいので、陰口はよく叩く。
(そして何故か本人に必ずバレる)


この地球上にいる人間の半分は男。
その中からこんな小さい男を選ぶとは・・・。


でも、これ以上の見世物はない。
○月○日 17:00にその奇特な娘はやってくる。
このイベントは見逃してはならない。


それにしてもわざわざ電話をしてまで
「渡したいモノ」とは何だろう?


そして「話」とは?


当人も内心、相当気になっているはずだが
少しでもチャカついた言動をとると俺から
100倍くらいになってシッペ返しがくるので
平静を装っている。



・・・が、いつもに比べてシャツはパリッとしてて
髪型も気合が入っているその姿を俺が見逃すはずもない。


「モテる男は違うねぇ~」

「実は楽しみにしてるんだろ~?」

「そのコと話す姿、彼女に写メールで送ってやろか?ケケケ」


無抵抗のチマチマ男をここぞとばかりイビる俺。
実に爽快な気分だ。



そう言えば俺もこの仕事を彼の5倍の年数しているが
一度足りともこんな風に香ばしい展開に遭遇したことがない。
そうただの一度もない。


その厳然たる事実にハッと気づき
本気でチマチマが憎くなってくる。


そしてその時はやってきた・・・。



マンションの家賃を振り込みに
外出して帰ってくると、一人の女のコがイスに座っていた。

顔つきは、村祭りとかそういう時に見るキツネのお面に似た感じ。
若いコだ。


横目でしっかりとチェックして事務所に入り
そこにいた女子社員に訊ねた。



「誰か来てるで。もしかして、あのコ?」


「はい、そうです」


あれっ?チマチマ男がいない。
「中○くんは?」


「商談中で、お客さんに対応中です。」


「ふーん、っで、渡したいモノって何か聞いた?」


「手紙です。渡されました。」


「どこ?どこ?」
急に嬉しくなる。



「石○マネージャーに渡したら
絶対に勝手に開けて読むので、本人に返しました。
彼女、中○さんの商談が終わるまで待つそうです。」




(`ε´∴)チェッ
まぁ、ええわ。
どっちにしても読めることには変わりないわ。



商談もすぐに終わり帰ってきたチマチマ男に
「渡したいモノって手紙らしいで、ええか、絶対に見せろよ」
としつこいくらい念を押し、彼女の待っているブースに送り出す。


しかしこんな面白いイベントを
遠くからみるのもシャクに触る。


チマチマ男の後輩、宮○クンを呼ぶ。


「ちょっと話があるんよ」


「はいっ!」


事務所から連れ出し
まさしく今そこでチマチマと奇特な女性が話しこみをしている
ブースのすぐ横に座る。


最初は何を怒られるのかと
緊張していた宮○クンもすぐに俺の意図を察してくれた。


たわいも無い話をしながら
全神経を集中させて、横のチマチマ達の会話を盗み聞きする。


・・・が、小動物のように警戒心の強いチマチマと
そのチマチマに恋慕している奇特娘は
俺たちの盗聴に気づき、小さい声がさらに小さくなり
全く何の会話をしているのか分からない。


ムカついたので携帯で写真を撮ってやった。







夕方のクソ忙しい時に
二人の甘い時間を過ごすチマチマ男&奇特娘。


好みではなかったのか
「のんびり油を売るな、ボケッ」
と俺に怒鳴られることに怯えたのか知らないが結局、
奇特娘に商品を売りつけることに成功したチマチマ男。


後から聞けばやっぱり何となく好意がある風な
奇特娘のリアクションだったそうだ。



で、手紙の内容と言えば
「自分の参加する音楽イベントのチケット」
「○月○日、○時から××ホールですので
お暇だったら来て下さい」

という味気ないメモが入っていただけだった。


あれだけ期待させておいてこれだ。
全く恋愛話までチマチマしてるよな。


PS:午後の紅茶(レモンティー)のことを散々バカにしてたら
   次の日のチマチマセットのお飲み物は
   午後の紅茶(ストレート)に変わっていました。
   小せぇなぁ・・・・。



それでも喜ぶチマチマ男。
ぬか喜びになれ!