本日、強烈個性氏は朝から熱心にパソコンに向かっていた。


眉間にシワを寄せ、熱心にカタカタとキーを叩いている。
表情は真剣そのものだ。
無言で時折、ボロボロの地図を睨みながらの作業だ。



普段の言動はどうであれ、仕事は基本的に熱心な人だ。
と少し尊敬をする。



俺も負けじとパソコンにて山のように溜まった
不良債権のような仕事に精を出す。



二人の中年が奏でる仕事のハーモニー。
時間は静かに流れていく。




「やっぱ、あかんなぁ・・・」


沈黙を破ったのは強烈個性だった。




「どうしたのですか?」





「前に話した物件あるやろ?
あれ、他の奴に押さえられてん。
ホンマ、うちのサービスは・・・」




自分が引越しをする予定のマンションが入れなくなったので、
必死で住宅関係のサイトを見ていた強烈個性氏。
地図も自分が転勤する地域のものだった。




そんなコトにもはや驚きもしない程
強烈個性に調教されている俺は

あっ、今日はお手すきなんだ!と思い、
部下の中○くんが外に出る案件があったので
それを代わりに行って頂くことにした。



「○○へ撤去に行っていただけませんか?」



「あっ、そう。ええよ。行きましょか」



すると強烈個性はクルリと振り返り
中○くんに向かって怒気をはらんだ声で言った。



「中○くん、これって本来
石○マネージャーじゃなくて
自分が俺に頼むことちゃうんか?

「「朝からボケーッと住宅情報見んと
撤去に行ってください」とかさぁ。」




「俺なら絶対に言うてるで、ホンマ。」


強烈個性先輩・・・
お怒りはごもっともですが
住宅情報を見ていたことなんて彼は知らないと思いますよ。






その日はいつものように忙しく
あっと言う間に時間が経ち仕事も終わり
ヘトヘトになってエレベーターに乗る。


「いつでも、どこでも♪

ウーシーシーコーヒー♪



いつでもどこでも♪

ウーシーシーコーヒー♪


いつでもどこでも♪



石○マネージャー、広島に言うてくれた?



あっそう?それって伊○田さん経由?
違うん?あっそう。


ウーシーシーコーヒー♪ギャハハ」




一緒にいた女子社員の冷ややかな目線をモノともせず
自作の替え歌を歌い上げる強烈個性



その特定の人物を揶揄した歌は
ホールでも響き続けたが

ビルを出るとピタッと止め、急に不機嫌な表情になり
「ほんま、ホテル遠いねん」とブツブツ言いながら去って行った。




・・・『強烈個性』、この人のあだ名はこれ以外思いつかない。