人間、ストレスが
かかり過ぎると「どうにでもなれ~」とランナーズハイのような
状態になることを身を持って知った今日この頃。
多分、今の俺は1ヶ月前の俺ではない。
海軍士官学校でも目標がある分、今の状況よりはマシだ。
そんな訳で、以前の輝いていた俺を探す旅に出よう。
押入れの奥から見つけた1冊のブルーの冊子。
あちこち黄ばんだ染みが出来て汚いことこの上ないが
かつて俺が働いていた百貨店での日々を思い出させてくれる
お宝ノートである。
その名も・・・
「フレッシュマン トレーニングノート!」
表紙をめくると
「このノートは、あなたが社会人としてスタートを切り
初任格付けされるまでの2年間にわたって、仕事を通じて
どのように成長したかを綴るノートです。
あなたが一日も早く職場に適応し、
すばらしい○○○人となれるよう優秀な先輩(トレーナー)が
あなたをマン・ツー・マンで指導してくれます。
時にはきびしく叱ることがあるかもしれませんが
それもあなたを思ってのことであって、決していじわるを
しているのではありません。
一日も早くトレーナーに追いつく熱意を持って仕事を
マスターする努力をしてください。
なお、このノートの記入方法は、名欄の指示にしたがってください。
記入者が記載されていない欄はあなたが記入してください。
同時に商品知識ノートを作ってください。
「新入社員の100日修行」で一日ノート1ページ
商品知識や販売知識をまる写ししてください。
それを100日間続けましょう。
すばらしい○○○人となれるよう頑張ろうね。」
と、どう考えても中学生に教え諭すような文章が綴られていた。
当時の俺は何も感じなかったのだろうか?
「決していじわるをしているのではありません。」
って小学校低学年か?俺達。
このノートは上司(または先輩)との
仕事上の交換日記であり、当時の俺達にとっては
「前向きな精神で頑張る僕たち!」を日々アピールしなければ
ならない拷問のようなレポートだった訳だ。
女のコはこういう部分が妙に生真面目なので
自身のプレゼンも兼ねて熱心にやっていたようだが
俺のようなグータラ社員はテキトーにしか向き合えなかった。
自分がダメルーキーだったことは記憶しているが
どれほどダメだったか確認すべくページをめくろう・・・。
俺は元々、百貨店業界には全く興味がなかった。
だから就職活動の時期にも
どのデパートにも一切資料請求をしていない。
では何故、百貨店マンになったのか?
大学時代、就職活動のうさを晴らすべく
ツレのアパートでおしゃべりしていて
偶然見つけたその地元百貨店の会社案内に興味を引かれ
(俺達は商学部で金融中心に会社訪問していたから)
「これ何?」と聞いたところ
「向こうから勝手に送ってきたんじゃ。俺はいらないから持って帰れ。」
と言われて何気なく自分の部屋に持って帰り、魔が差したのか
電話をしてしまい面接に行く羽目になり
あれよあれよという間に内定を貰ったのが真相だ。
当時、地元の銀行にも内定を貰っていて
そちらにお世話になろうと思っていたのだが
入社前の顔合わせの時の弁当のショボさに呆れたのと
父親の「銀行?しょせん金貸しじゃろうが?」の一言に動揺して
消去法で百貨店に決めただけなのだ。
だから百貨店業界には何の思い入れもなく
なるべく販売とは関係ない「企画」とか「人事」の
スタッフ部門を希望していたのだが
何の因果か、店内で一番厳しく大変とされる食品部門に配属なってしまった。
俺は昔からこういう星回りなのだ。
・・・トレーニングノートの話に戻ろう。
4月15日(火)が最初の記録になっていた。
1.今日習った内容
なし
2. お客様の声
オレンジの味 甘夏とオレンジの味の違い
3.今日の感想
果物の味がわからなかったのでお客様に説明できなかったし
レジをほとんど打たなかった。
配達伝票もたびたび門田さんにたずねてしまった。
※トレーナー所見
果物の味は時期によっても変わります。産地によっても変わります。
それぞれの果物がおいしい時期、おいしい産地は一つ一つ覚えていくしか
ありません。また見分ける方法も勘と経験で見つけていくしかありません。
とりあえずは食べてみてください
必要であれば食べさせてあげます。
部下もでき、エラソーに「仕事とは・・」と訓示を垂れている現在32歳の俺。
またしても嫌な記憶がフラッシュバックのように蘇ってきた・・・。
コメントを書いてくれたトレーナーは
当時、ダメな俺に目をかけ可愛がってくれたT課長。
男気もあり、仕事もでき、面倒見も良かった最高の上司で
今でも俺にとっては師匠のような存在だ。
しかし「食べさせてあげます」どころか、当時の俺といえば
冷蔵庫に商品を取りにいくフリをして
「メロン」とか「いちご」とか「さくらんぼ」
デパ地下の誇る季節の果物たち、高価な商品を気の向くままに
つまみ食いしまくっていたのだった。
T課長・・
半年に一度、たな卸しで冷蔵庫の中、徹底的に掃除しますが
その時に床に落ちまくっていた種とか皮・・・全部、僕の食べた残りカスです。
・・・輝いていた過去どころか・・・
やっぱ俺ダメ人間だわ。
