前職の百貨店時代
そんなに長くも在籍しなかったが
そこは生まれて初めての社会人生活、印象は強い。
当時、その店舗に配属された新入社員は11人
男性は俺一人、残り10名の同期はすべて女だった。
その話をすると大抵の人は
「ええのぉ・・」「うらやましい・・」という反応をしてくる。
正直言って俺も入社前にその話を聞いた時は
楽しみ楽しみで夜も眠れず
愚痴る風に見せかけて自慢をしまくり
まだ見ぬ彼女達のコトを考えるだけで見知らぬ他人にも親切になれた。
イメージはまんま「ハーレム
」。
優雅に寝そべって美女達にかしずかれる。王様のような生活。
俺の前途は間違いなくバラ色だった。
しかし懸念事項はあった。
大阪で内定が決まった連中を集めての親睦会が
大学四年生の夏にあったのだが
(俺も関西の大学に通っていたのでそこに集合)
その時に来ていた女どものレベルは総じて低く
しかも俺と同じ店舗に配属されそうな女のコ達と言えば
①出身高校が同じで、いい奴だけどお笑い系のコ。
②顔に険のある業の深い人生を送っていそうな顔をした女
③留学経験がありキャリア志向が強く「ガハハ」と大笑いをするような女
の3人だった。人材的に俺のハーレムに入るのは一次面接の段階で不可だ。
10人中3人が×となると・・
あとの7人に期待するしかない。
東京や岡山でも同じような懇親会は行われているようだし
上玉はその辺りに集中しているのかも知れない。
俺の人生、最初はマイナスからのスタートだ。
季節は夏から秋に、秋から冬へとうつろっていく。
その間、俺は肝心の百貨店業界のことなど全く勉強をせず
大学を卒業するための単位に追われ、パチンコを打っては負け続け
当時付き合っていた彼女にフラれ、自動車学校でも補講の繰り返し
という忙しい日々を送っていた。
何とか卒業単位もゲットし
大学の卒業式から入社式のある4月2日(その年は4月1日が日曜日だった)
までの間にも一泊二日の研修があり、もう二人ほど
俺と同じ店舗に配属されるであろう同期の女を発見したが
到底、ハーレムに入れるレベルではなかった。
夏に3人+春に2人、計5人の同期の女のコ達は
残念ながら厳しい審査に勝ち残ることは出来なかった。
それほど当時の俺は妥協なき信念の男だったと言えよう。
残りの5人の中に一人でもそれなりのタマがいてくれればいい。
俺の百貨店マンとしてのキャリアを支えるデパートガール!通称デパガ。
俺に選ばれる幸運なレディーはどいつだ?
自分のルックスの事は全く無視し
相手がこっちをどう思っているか?など基本的な事は全く顧みることなく
俺は何かのオーディションの審査員長のような気持ちでいた。
世間ではこういう奴を「色キチガイ」と呼ぶのだろう。
色んな妄想をし倒し、それにも飽きてきた頃
遂にその日はやって来た。
そう、ついに同期11人が全員集合する日が来たのだ!!!
・・・。( ̄ι_ ̄ )
俺のハーレム計画は永遠に成就することはない・・と確信した。
しかし俺のそんな尊大な思い上がりはすぐに打ち砕かれることになる。
『俺だけ呼ばれない同期会』が実施されたり
「同期の男はカッコ悪い」
と夏の懇親会に同席した「顔に険のある女」が
俺の悪口をしゃべってた、という噂を耳にしたり
何とかお情けで同期主催の飲み会に呼ばれたものの
一部のクソ女のモクモクと吹かすタバコの煙と下品な喧騒の中
「石○くん、エガシラね。」
という意味不明の命令に訳もわからず「うん・・」と答えてしまったのが運の尽き。
他の10人の同期の女のコ達が、店舗主催の懇親会で
可愛くフリ付きで「パフィー」の歌なんぞを熱唱している中
俺は上半身裸で黒いスパッツを履いて
「江頭2:50
」の物真似を一人でやらされる
という細かい攻撃に俺はすっかり女性に対して従順な男に変身してしまった。
何人かの同期達とは今でも親交があり
すごく良好な関係を築けているが、街でバッタリ会っても
「見てはいけないモノを見た」とばかり俺から目をそらす同期もいる。
その上、彼女達の先輩、大先輩(おばさん)という猛者も
百貨店には多数存在するのだ。
「女が多い職場で羨ましいのぉ」
と羨望の眼差しで俺を見ていた友達。現実はかくの如しだ。
だからもう二度と「うらやましい」なんて言うな。
過去のことも、そして現在の状況もな。
