上期首領(かみきどん)の好きなタレントは井上和香。
和製マリリン・モンローだ。


38歳の独身男が好みのタイプに選ぶタレントとしては
まずまずシャレが利いているが


こういうタイプの独身男性は
若くて乳がデカイけど割とブスな女と結婚するような
そんな気がする深夜0時。

しかし実は俺もそんなエラソーなことは言えない。


この場を借りて告白するが
今から6年前の26歳当時の俺は
こともあろうに「鈴木あみ」の写真集を買ったことがあるのだ。

タイトルは「Amigo(アミーゴ)」 だ。


品があり、都会的なセンスを持ち、似顔絵も抜群に上手い
知性あふれる俺のイメージにそぐわないかも知れないが
まぁ聞いて欲しい。


百貨店を辞め、しばらく塾の講師をしていた26歳の俺。
持ち前の頭の良さを生かし、「英語」、「国語」、「社会」を
下は小学校6年生から上は高3の受験生まで
得意のハッタリで騙くらかしていたあの頃。


中2のクラスで授業をしていた時のこと。
勉強よりも「クラスの女子の話」に
100%ベクトルを合わせていた思春期真っ盛りのガキの一人が
恥ずかしそうに俺に頼んできた。


「先生、鈴木あみの写真集、買うてきてや~



「何で??自分で買いにいけや」



「だって恥ずかしいじゃんか~






その瞬間、中2の頃
サコッペ、タカタンと生まれて初めて
自動販売機でエロ本を買った日のコトを思い出した。


塾の帰り、少しだけ遠回りをしてチャリを飛ばす。
目的地は小森の家の近くに佇んでいたエロ本の自動販売機。


人目を気にしながら、200円を入れる。
その瞬間に誰かに声をかけられたら
「わっ」と叫んで逃げてしまう程の緊張感。


その時買ったエロ本の名前
「エロトップ」
俺は生涯忘れないだろう。
(ちなみに2冊目は「「バンプ」辞書で意味調べたら「妖婦」)

その日の帰り道、あれほど自宅が遠く感じたことはなかった。
1秒でも早く家に帰り貪り読みたかった、中2の夏の夜。




「・・・先生?」

フッと我に返る。


「・・・わかったわ。
塾に来る前に買ってきてやるわ。金は後で徴収するで」



「ありがとう、先生



その時の俺は金八先生も真っ青になるほど
生徒のハートを掴んでいたことだろう。



厚かましいことにもう一人のガキも
「僕の分も買うて来て。と頼んできやがった。
まぁ別にいいけど。




そして中2のガキと約束した当日
塾に行く前に俺は本屋でその本を探した。
写真集のコーナーに行くとあっさり見つかった。



しかし・・・20代も中盤の若者が
アイドルの写真集をレジに持っていく、
しかも同じの2冊!


「一冊は観賞用、もう一冊は保存用か?この人
と勝手に邪推されるんだろうか?

知り合いに見られたらどうしよう?

どんなに事情を説明しようとも
ガキ共の証言が無い限り絶対に証明は出来ない。
言い訳無用の世界だ。

人の性癖を針小棒大に膨らまし
さんざん笑い者にしてきたお山の大将の俺が
「アミーゴ大好き野郎」とされ笑い者にされる・・・。

数秒間で色々な悪夢が頭をよぎると共に
一時の親切心で自分の人生が狂ってしまいそうな
そんな予感すら感じ、安請け合いした自身の軽率さを心から後悔した。


レジは最悪なことに若い女性だった。
ビデオ屋でHなビデオを借りるよりある意味恥ずかしい。


なんせ「鈴木あみ」
×(かける)「2冊」だ。


えーい、ままよ!
俺はマシーンと化し、レジの女子店員に目線を
合わせることなく商行為を終えた。




普段はテストを入れているカバンに
「アイドルの写真集」を2冊入れ、ガキ共に渡す。



「おう、これ買うてきたど」



「先生、ありがとう
全く・・・。


「先生、俺はいらんわ
へっ!?


もう一人のガキの意外な発言に
のけぞる俺。



「何で?」




「今日、学校の帰りに買ったんよ。ごめん」




「おいッ、じゃあこの本はどうするんよ?
俺、金払ったのに!!




「先生、ごめ~ん



相手が大人なら回し蹴りを入れるところだが
ガキ相手だし、しかもコトを荒立てて
親にチクられたら俺の立場もヤバい。



やりきれない思いで俺は「Amigo」を家に持ち帰り
押入れに放り込んだ。



それを当時付き合っていた彼女に見つかったりして
本当に気まずい思いをしたが
大掃除の時に古本屋に売ってやった。


2000円くらいした「Amigo」は100円玉一枚になった。



いつになったら楽になるんだ?俺の人生。







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