地中熱ヒートポンプの普及で更なる省エネを
先日WBSの特集で地中熱ヒートポンプという省エネ
技術を紹介していた。地中熱ヒートポンプとは年間を通
して一定である地中にある熱をヒートポンプによってうま
く活用し、住宅やビルの冷暖房、給湯などに利用しよう
というものだ。例えば、都心の地下数十メートルは年間
を通して17度ぐらいなのだが、夏にはヒートポンプによ
って室内の熱を汲み取って地下で冷ますことで室内の
温度を下げ、冬には逆に地下の熱をくみ上げて使うこと
で室内の温度を上げることができる。ヒートポンプと言え
ば、エアコンなどの家電製品や給湯の省エネ化に大きく
貢献している技術だが、地中の熱を活用するこの方法
の方が消費電力が少なく、天候などにも左右されないた
め、冷暖房費を約半分にする効果があるそうだ。
それから地中熱ヒートポンプは消費電力が少なくて
済む分、CO2の排出もかなり抑えることができる。温暖
化対策として注目される太陽光発電の場合と比べても、
約2倍のCO2削減効果があるそうだ。また、エアコンの
室外機から出される熱などによって都心の気温が高くな
ってしまうヒートアイランド現象が問題視とされているが、
この地中熱ヒートポンプを使えば、室内からくみ上げた
熱の多くは空気中に放出される事なく、地下へと運ばれ
て冷やされるため、ヒートアイランド現象の緩和にも貢献
すると考えられる。このように地中熱ヒートポンプには優
れている点はいくつもあるのだが、地中といえば地熱発
電といったイメージがあったので、地中の熱というどこに
でもあるエネルギーにこういった利用法があると知って
正直目からうろこであった。
しかしながら、日本での地中熱ヒートポンプの設置は
これまであまり進んでおらず、総設置台数は約1600台
に止まっている。一方普及の進んでいるアメリカではすで
に約60万台、スウェーデンでは約30万台とかなりの数
に及んでいる。前からあった技術であるにも関わらず日
本でなかなか設置が進まない理由としては、知名度が低
い事に加えて、砂や砂利を含む土地が多く掘削のコスト
がかさむ事や、設置にかかる初期投資の費用が高い事
などが挙げられる。しかし、メーカー側も安いコストでの
掘削技術の開発や地中熱ヒートポンプの本体機器の小
型化などを進めており、今では従来のコストの半分くらい
で地中熱ヒートポンプの設置が可能になっている。ただ、
それでも一戸建て住宅に取り付ける際は300万円ぐらい
はかかるようで、普及のためには量産化による更なるコ
ストダウンが必要だろう。
そして、量産化に繋げる為には政府による長期的な
視点に立った政策的な支援がどうしても必要だ。スイス
ではそういった国の後押しによって量産化が進み、初期
コストが半分で済むようになったと言う。日本で同じ事が
できないはずはない。太陽光発電の普及でドイツに抜か
れてしまった例でもわかるように、政府が本気になってし
っかりとした戦略的な政策を打ち出せば、こういった技
術は一気に広がる可能性を秘めている。これまで日本
での普及がほとんど進んでいなかったのも、ある意味政
府の責任であると言えよう。新しい政権は温暖化対策に
非常に高い目標をすえているのだから、地中熱ヒートポ
ンプについてもしっかりと検討し、企業による技術開発
や量産化によるコストダウンが進むよう、政策的な後押
しをしていくべきだろう。実際、地中熱ヒートポンプが広く
普及すれば、家庭の電力消費とCO2排出量を大幅に
減らす効果が期待できる。
ちなみに現在日本で地中熱ヒートポンプの普及が進
んでいる地域は、北海道など冬に温度が低い地域に偏
っているようだ。これはある意味非常にうなずける。こう
いった寒冷地の場合、暖房に灯油などを使うため燃料
費が非常にかかるが、省エネ性能の高いヒートポンプを
使ったエアコンや給湯器を使っても気温が低すぎて空気
の熱を集めるには効率が悪すぎて、電気代もかさむこと
になる。一方冬でもあまり下がらない地中の熱を利用す
る地中熱ヒートポンプは、大幅に光熱費を減らす事がで
きるため、選択としてはこちらの方が賢い。しかし、冬の
気温低下によってエアコンや給湯器のヒートポンプの効
率が悪くなるのは日本全国、沖縄以外ではどこも同じだ
と思うので、メーカーはもっとその点をアピールしてはど
うかとも思う。