あなたは第六感というものの存在を信じるだろうか.
第六感とはWikipediaによると、基本的には視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚の五感以外のもので、五感を超えるものを指しており、理屈では説明しがたい、鋭くものごとの本質をつかむ心の働きのこと、とされている。
また、人以外の動物にみられる五感以外の感知能力(微弱な電場などの感知能力)を表現することもあるという。
本当ならば、「嫌な予感がする」とか「虫の知らせがあった」などという、いわゆる霊的な第六感を科学的に説明できたとするニュースを紹介したい.
実際、今年の1月には、「第六感」を解き明かす固有受容覚を促す遺伝子を発見という記事も出ていた。
だが、今回は動物における地場の感知能力の話である。
しかし、それもなかなか不思議な世界の話であり、もしこれが本当ならば、これもまた霊的な第六感を解き明かす根拠となるかもしれない。
動物が磁場を感知する能力は「磁覚」と呼ばれ、これがいわゆる動物の第六感である。
渡り鳥はかなり正確な方向感覚を持っているが、これは彼らが磁場を知覚できるからだと考えられている。
数多くの動物番組でも紹介され、一般人でもその説を正しいものだと思っている。
それほどまでに「常識」となっている「磁覚」だが、実はそのメカニズムはこれまで謎のままだった。
それを東京大学の研究グループが史上初めて磁場(磁力)に対して量子力学的な反応をする細胞の様子を観察することができたというのである。
この磁覚だが、2020年には地磁気の影響を受ける特殊な細菌と動物が共生することで得られている可能性を示唆する研究が発表されていた。
磁覚は「受容体のない感覚」であり、その機能をはたす磁覚器官の構造はおろか、そもそもどれがその器官なのかも特定されていない。
米セントラル・フロリダ大学の生物学者ロバート・フィタック氏によれば、「感覚生物学の最後のフロンティアの1つ」で、それを突き止めるのは「ワラの中にある針」を探すように難しいのだとか。
そこでフィタック氏は、地磁気の影響を受ける特殊な細菌との共生関係によって磁覚が生じるという「共生走磁性細菌仮説」を提唱した。
その「走磁性細菌」と呼ばれる仲間は、地磁気を浴びると、まるでコンパスの針のようにそれに沿って動き出す。
こうした不思議な性質が、動物の体内の中で作用して磁覚が生じるというのだ。
フィタック氏のグループは、「MG-RAST」という細菌に関する最大級の遺伝子データベースを参照して、過去に動物の体内で走磁性細菌が発見されたことがないか調べてみた。
するとペンギン、アカウミガメ、コウモリ、タイセイヨウセミクジラなど、様々な動物から、それぞれいろいろな種類の走磁性細菌が見つかったという。
走磁性細菌がこれら動物の体内のどこに潜んでいるのか不明だが、目や脳のような神経組織と関連していると推測されている。
このように「磁覚」には細菌が関係しているという説がある一方で、今回東京大学の研究グループが観測した事象は、「ラジカルペア・メカニズム」という細胞内で起きる量子力学的・化学的反応が関係していることを示唆するものである。
実は、その現象を何とか分かりやすくお伝えしたかったのだが、その説明を何度読んでもなかなか理解できなかった。
一応観測の経過を掲載してみるので、内容を理解できてうまく説明できる方がおられればぜひともご教授願いたい。
分子が光によって励起すると、そこにある電子が別の分子に向かってジャンプすることがある。
通常、電子は2つずつのペアになっているものなのだが、こうしたジャンプによって電子が1つしかない(ラジカル)分子が2つ出来上がる――これが「ラジカルペア」だ。
ところで電子のような粒子には、「スピン」という量子力学的な状態がある。
そして、もしこのラジカルペアのスピンが互いに一致していれば、ゆっくりとした化学反応が起こる。
その反対にスピンが一致していなければ、化学反応は素早いものとなる。
磁場は電子のスピンに影響を与えるので、細胞内の化学反応を左右し、それが動物の行動の変化にもつながる。
これがラジカルペア・メカニズムと磁覚の関係だ。
磁覚を備えた動物の細胞の中でラジカルペア・メカニズムを起こしているのは、「クリプトクロム」というタンパク質だと考えられている。
今回、史上初めて観察されたのは、このタンパク質が磁力に反応している姿だ。
研究グループは「HeLa細胞」(1950年代に亡くなった女性の癌細胞から分離された人間由来細胞株)のクリプトクロムを構成する亜粒子「フラビン」に着目した。
この粒子には、青い光を照射すると蛍光色を発する性質がある。
そこで細胞に青色光を照射して光らせながら、4秒毎にさっと磁場にさらしてみた。
するとその度に蛍光が3.5%ほど低下したという。
研究グループによると、こうした陰りはラジカルペア・メカニズムが起きている証拠であるという。
フラビンが光によって励起したとき、ラジカルペアか蛍光のどちらかが生じる。
これはつまり、蛍光の強さは、ラジカルペアの反応の速さによって左右されるということだ。
磁場にさらされると、ラジカルペアの電子スピン状態はお互いに一致する。
すると化学反応がゆっくりになる。
だから蛍光の強さが全体的に陰る。
「純粋な量子力学的プロセスが細胞レベルの化学反応に影響を与えているところを観察できたことを示す、超強力な証拠だと考えています」
と、論文共著者のジョナサン・ウッドワード教授は述べている。
なお今回の実験で使われた磁場は、一般的な冷蔵庫の磁石くらいの強さで、地球の地磁気より500倍も強いそうだ。
ならばやはり地磁気とラジカルペア・メカニズムは関係ないのではと思うかもしれないが、面白いことに、磁場を弱くした方が、ラジカルペアの電子スピン状態を切り替えやすかったとのことだ。
このこともまた、磁覚を備えた動物の細胞内でラジカルペア・メカニズムが作用していることを示唆しているのかもしれない。
さて、いかがだっただろうか。
重ねて言うが、理解できた方にはぜひともご教授願いたい。
短絡的に言うと、磁場に対して、我々の身体は分子・電子レベルでの反応を起こしているということだ。
当然ながら動物の種や、個体差によって、他の感覚同様、感受性が違うのだろうから、渡り鳥が当たり前のように磁場を感受することができるほどには人間には感受できず、同じ人間の中でも方向感覚の鋭い人と鈍い人がいるのはそのせいなのかもしれない。
しかし、地球の磁場にそれほど体が反応しているという事実は、それ以外の磁場にも知らず知らずに人の身体は反応している可能性もあるということだろう。
そうなれば人と人との関りの中でも、当然ながら無意識に体が反応していることは十分ありうるのではないだろうか。
いわゆる霊的な第六感の存在ももしかしたら証明されるかもしれないし、その日が来るのもそう遠いことではないかもしれない。
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