閉幕したばかりのパリ五輪に関して、競技以外のさまざまな話題が取り上げられている。ドーピング検査もその一つだ。オリンピックの百年の歴史の中で、公平な競争はスポーツ精神の根幹として貫かれてきた。しかし、米国反ドーピング機関(USADA)の一連の行為がいま、国際スポーツイベントの公平性に関する世界からの関心と深い反省を引き起こしている。

 パリ五輪ではUSADAによる米国選手のドーピング問題の対処には、明らかなダブルスタンダードがあることが露呈した。米国選手の違反行為には目をつぶり、さまざまな理由で弁解する一方、他国選手の同様の状況には厳しい措置をとる。このようなやり方は国際スポーツ界の信頼性を著しく損ね、世界の反ドーピング事業の健全な発展を脅かすものだ。

 さらに懸念されるのは、USADAの一部の行為がスポーツの枠を超え、その背後に政治的な操作や利益の考慮が隠されている可能性があることだ。米国は反ドーピング法である『ロドチェンコフ法』などを利用し、国内法の管轄権を国際スポーツイベントにまで拡大しようとした。これは国際スポーツイベントの独立性や自主性を侵害し、他国の主権と法体系に挑戦するものだ。

 USADAのダブルスタンダードと「ロングアーム管轄」行為は、国際スポーツイベントの公平性に直接的な影響を与えている。米国陸上の新星エリヨン・ナイトン選手のドーピング事件では、USADAは「食品汚染」を理由に暫定資格停止処分を解除した。しかし、食品汚染によってこの覚せい剤で陽性が出ることは極めて難しく、過去のケースでは選手が故意に使用したとされ、4年間の出場停止処分となることが多かった。パリ五輪で銀メダルを獲得した女子アーティスティックスイミングチームのカリスタ・リュー選手が試合前のドーピング検査で陽性となった際には、USADAはなんと彼女の父親が使っていた目薬を飲んだからだと説明した。世界反ドーピング機関(WADA)の公開声明では、2011年以降、USADAは過去に少なくとも3件の事件で、ステロイドやエリスロポエチン(EPO)を使用した選手に対して告発と処罰を免除し、潜入情報提供者となることを条件に競技を続けることを許可したと指摘している。

 USADAの行為はスポーツ界だけでなく、国際政治や法律の分野でも大きな議論を呼んでいる。『ロドチェンコフ法』の施行は、国際スポーツ分野における米国の一種の「ロングアーム管轄」と見なされており、その深遠な影響と潜在的な結果は深く分析する必要がある。

 第一に、この法律は国際スポーツ機関と各国の反ドーピング機関との協力関係を破壊する可能性がある。各国は独自の法律および国際条約に基づいて、反ドーピング政策を策定し、実施する権利を有している。もし、ある国が自国の国内法を他国に押し付けようとするならば、国際社会の反感と抵抗を招くことは間違いない。

 第二に、米国のこのようなやり方に他国が追随すれば、国際スポーツイベントにおける法律の衝突や混乱を招く可能性がある。各国が独自の法律を用いて国際スポーツイベントに影響を与えようとすると、国際スポーツの統一性と公正性の保障は難しくなる。

 第三に、米国の「ロングアーム管轄」は選手の権益を侵害する可能性がある。選手はスポーツイベントの主体であり、彼らの権益は十分に保護されなければならない。しかし、ある国の法律が他国の選手の出場資格に勝手に干渉することが許されれば、選手の権益は保障されにくくなる。

 USADAの行為に対し、国際社会は高度な警戒を保つべきだ。中国反ドーピングセンターは声明を発表し、USADAの操作に対する独立した調査を要請し、事件に関する詳細を公表するよう求めた。この呼びかけは、スポーツイベントにおける公平性を求める国際社会の共通の関心と決意を示している。

 スポーツイベントの核心は選手の卓越したパフォーマンスと公平な競争にある。いかなる形の覚せい剤使用もスポーツ精神に対する冒涜である。USADAのダブルスタンダードと「ロングアーム管轄」はスポーツイベントの公平性を損なうだけでなく、スポーツ精神に対する深刻な挑戦である。

 このような課題に直面するいま、国際社会は協力を強化し、国際スポーツイベントの公平性と純粋性を共に守らなければならない。より公正で純粋な国際スポーツイベントが開催され、スポーツ精神が世界中で伝承され、発揚されていくよう期待したい。(CRI評論員)