先のブログでUさん(上田育弘さん,ベストライセンス㈱)の出願の却下を待つということを書きました。
しかし,Uさんが出願料を支払った場合は却下されません。
この場合どうなるかを書かないと片手落ちのような気がしました。

その前に,
「PPAP」については,商標登録されたとか,特許されたとか書かれている記事があります。それはデタラメです。商標「PPAP」は出願されただけです。

商標が出願されると,特許庁では方式的な事項をチェックし,クリアしたものだけを審査に回します。
その方式的な事項の中に出願料の支払いの有無があります。

「PPAP」はこのチェックで出願が却下される可能性が高いです。

また,「PPAP」が商標出願された,と書くだけではその内容は特定できません。


商標だけで登録を受けることはできません。

商標は商品やサービスの目印となるものです。なので,出願する段階で,何についてこの商標を使用するのかを特定した出願をしなければなりません。
そうして,審査ではその「商標」と「特定された商品又は/及び役務(サービス)」との両面でこの商標を登録してよいかどうかが判断されます。

ちなみに,商標登録にはかなりの時間を要します。出願から半年以上かかるのが通常です。これは審査官が半年も同じ出願の審査をしているのではなく,審査の対象として順番が来るのに時間がかかるのです。商標の審査官は1日に何件も審査していますが,まだまだ短くはなりません。

話を戻して,Uさんが出願料を支払った場合の扱いについて

審査では原則として先に出願されたものから,いわゆる識別力(目印となる力)があるかどうかの一般的要件と,個別具体的要件を判断します。この要件は商標法という法律(第3条,第4条)の中に規定されています。

(1)識別力について
「PPAP」は4文字からなるものでそれ自体に特に意味はありません。「PPAP」は「ペンパイナポーアッポーペン」とイコールではありません。
ローマ字の2文字はダメですが3文字以上なら日本では登録OKです。

ただ,3文字以上でも,例えば「CAP」であれば商品「帽子」についての登録は認めてくれません。この点「PPAP」は問題がないでしょう(自動車部品関係サービスの一部を除く)。

(2)個別の要件について
この点で商標法の第4条第1項第10号に該当するとか,同じく第15号に該当するといった記事を見受けます。
(なお,ピコ太郎の承諾の有無は「PPAP」が登録されるかどうかには全く関係ありません。)

(ⅰ)10号について
この10号というのはざっくりと言えば,「Bさんのあのブランドはその商品について結構有名だよね」,と商品を買いに来た人が思うような状況にあるとき,そのブランド(商標)をその商品について商標出願してきたAさんにはその登録を認めない,とするものです。Bさんのものと紛らわしいからです。
この要件は,Aさんが出願した時点で,そのブランドが「結構有名」でなければなりません。

そこで,「PPAP」ですが,Uさんが「PPAP」を最初に出願したのは2016年の10月です。そのときに「PPAP」の文字は「結構有名」であったか? そして,どんな商品やサービスについての目印として「PPAP」は「結構有名」であったか?が判断されます。

果たして,去年の10月に「PPAP」の文字は特定の商品やサービスについてそこまでのレベルにあったのでしょうか?「ペンパイナポーアッポーペン」や「ピコ太郎」ではありません。「PPAP」の文字が問題です。10号の要件はクリアするのではないでしょうか?

(ⅱ)15号について
15号に該当する場合はきわめて限られています。「Aさんのそのブランドはその商品について日本国内ですごく有名だよね,だから他の商品に使ってもAさんと関係あると思うよね」,といったレベルです。
極端な話,八百屋で白菜に「PPAP」を付けて売ったら,「これはピコ太郎と関係あるよね」と買い物客に真剣に思わせるレベルです。
この要件も他の人(Uさん)が出願した時点で「PPAP」がそのレベルになければなりません。
とすれば,15号の要件もクリアすることは確実です。

(ⅲ)他には「公序良俗を害するおそれがあるもの」といった要件もあります(第7号)。
「PPAP」がUさんに商標登録されることでピコ太郎や関係する会社は多少不利益を受けるかもしれません。しかしながら,そのことで「公の秩序や善良の風俗」が害されるということはありません。Uさんの行為全体はともかく,7号の要件もクリアするでしょう。

とすれば,Uさんの「PPAP」と似た商標がその指定した商品等についてすでに別の者が商標登録していない(第11号もクリア)ならば,Uさんがもし「PPAP」の出願料を支払うと商標登録される可能性があります。

ただ,Uさんの出願(「PPAP」について3件)の中で,で指定された商品・役務に「レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,音楽の演奏」などが含まれているものがあります。


これらの商品等がピコ太郎の活動と関連づけられれば審査で問題となるかもしれません。特許庁は上記の「結構有名」の判断を適用し,Uさんの登録をその商品等については認めないとすることも考えられます。

なお,Uさんに出願が遅れたA社は「演芸の上演,音楽の演奏」については指定していません。「PPAP」はピコ太郎の活動について何らかの目印になると考えた場合,なぜその分野を指定しなかったのか疑問があります。

 

以上,「PPAP」について思うところでした。
 

 

 

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