産経新聞 6月5日(水)14時20分配信

「成長戦略スピーチ第三弾」と題した講演を行う安倍晋三首相 =5日午後、東京都港区高輪のグランドプリンスホテル新高輪 (撮影・大橋純人)(写真:産経新聞)

 安倍晋三首相は5日午後、都内のホテルで開かれた内外情勢調査会で講演し、規制改革に重点を置いた成長戦略第3弾を発表した。対象地域を絞って規制緩和する「国家戦略特区」の創設や大衆薬のインターネット販売の原則解禁などを通じ、10年後に1人当たり国民総所得(GNI)を現在の水準から150万円以上増やす目標を掲げた。すでに発表した第1、2弾と合わせた全体の成長戦略を14日に閣議決定する見通しだ。

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 首相は成長戦略第3弾のキーワードを「民間活力の爆発」と表明。「規制改革こそ成長戦略の1丁目1番地。成長のために必要ならば、どのような岩盤にも立ち向かっていく覚悟だ」と成長戦略の実行に強い意欲を示した。

 国家戦略特区については、世界中から技術、人材、資金を呼び込むため、国際的なビジネス環境の整備に取り組む。具体的には、海外から来日したビジネスマンが安心して通院できるよう、外国人医師の診療行為が可能になる制度を導入。インターナショナルスクールの設置要件も大胆に見直す。米ニューヨーク・マンハッタンのような都心での職住近接を実現するため、建物の容積率緩和も進めていく。

 市販薬のネット販売をめぐっては、首相は「消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、全ての一般医薬品の販売を解禁する」と述べた。病気予防の観点から、健康食品の機能表示の規制を緩和するほか、最先端の医療技術が生まれれば速やかに「先進医療」と認定し、例外的に保険適用を認める「保険外併用療養費」制度の対象としていく考えも示した。

 また、インフラ整備に関し、民間資金を活用した社会資本整備(PFI)を積極的に導入し、空港、上下水道、高速道路など施設ごとの特性に応じたPFI事業の推進を表明した。

 これらの成長戦略を確実に実行するため「3年間で民間投資70兆円」「平成32(2020)年にインフラ輸出を30兆円」といった将来的に達成すべき指標を明確化し、進捗(しんちょく)管理も行っていくことも明らかにした。

 首相は、必要な法改正や制度改革について「従来のスケジュール感にとらわれる発想は捨て去るべきだ。急ぐものは、この秋にも政府として決めていく」と述べ、スピード感を持って対応していくとの姿勢を強調した。


日経平均、518円安=安倍首相講演後に急落、今年3番目の下げ幅―東京株式市場
時事通信 6月5日(水)16時30分配信
 5日の東京株式市場は、安倍晋三首相が内外情勢調査会の講演で発表した成長戦略第3弾がほぼ予想の範囲内で買い材料に乏しかったことや、為替相場の円高・ドル安を受け、幅広い業種が売られた。日経平均株価の終値は前日比518円89銭安の1万3014円87銭で、下げ幅は今年3番目だった。
 首相の講演開始直後は市場の期待感が高まり、一時1万3700円台まで上昇した。しかし、講演の詳細が伝わると「内容の9割は既に報じられたもので、新鮮味に乏しい」(中堅証券)と受け止められ、急落した。
 また、外国為替市場で1ドル=99円台まで円高が進んだことから、電機、自動車など輸出企業を中心に、業績改善に対する期待感が後退。株価下落への警戒感が強まった。
 東証1部全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は、前日比35.44ポイント安の1090.03。出来高は43億6833万株、売買代金は3兆2727億円。


ドル下落、99円台後半=成長戦略、サプライズなし〔東京外為〕(5日午後5時)

時事通信 6月5日(水)17時30分配信

 5日の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、政府の成長戦略にポジティブサプライズがなかったことが売り材料となり、株安と歩調を合わせて下落した。午後5時現在は1ドル=99円72~73銭と前日(午後5時、100円28~30銭)比56銭のドル安・円高。
 朝方の東京市場は、週末発表の5月の米雇用統計を控えて小動きとなった海外の流れを引き継ぎ、100円30銭前後で始まった。仲値にかけては、日経平均株価の上昇を眺めて連れ高となり、100円40銭近くを付けた。
 午後に入って安倍晋三首相が内外情勢調査会の講演で成長戦略第3弾を発表。期待感から100円50銭近くまで買われる場面もあったが、次第に失望感が広がり、株安の進行と同時に売りが活発化。99円40銭前後まで下落した。欧州勢参入後は買い戻された。
 成長戦略第3弾については、期待外れとの声がある一方、「事前予想通りの内容。日経平均の下落に連れ安となった印象だ」(大手外銀)との指摘もあった。
 市場の目線は、海外の経済指標に移っている。欧米時間に発表される米指標を受けて米株価が上昇すれば、ドル買い材料になるとみられている。ただ、「指標が改善しても、米量的緩和の縮小観測が強まって米株安となれば、ドルは売られる」(生保系エコノミスト)として、海外の反応を慎重に見極める必要があるとみられている。
 欧米時間には、5月のADP全米雇用報告、4月のユーロ圏小売売上高、4月の米製造業、5月の米ISM非製造業景況指数などが発表される。
 ユーロは対円、対ドルで小幅上昇して始まった後、午後に入って値を下げた。午後5時現在は1ユーロ=130円42~44銭(前日午後5時、131円02~04銭)、対ドルで1.3077~3079ドル(同1.3064~3068ドル)。