読売新聞 6月4日(火)10時18分配信
政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)は3日、現在は栄養成分の機能表示が認められていないサプリメントなどの一般健康食品について、「目の疲れを和らげます」「おなかの調子を整えます」などの表示を可能にする新制度導入を関係省庁に求める方針を固めた。
同会議が5日にまとめる答申に盛り込まれる予定で、表示規制の緩和により、健康食品の市場や輸出の拡大が期待できるとみている。
健康食品のうち、消費者庁が機能表示を認めている栄養成分は現在17種類(ビタミン12種類、ミネラル5種類)で、「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」などの表示ができる。これ以外の製品は、国の厳格な審査を受けた特定保健用食品(トクホ)に認定されない限り、栄養成分の機能を一切表示できない。
トクホを含めた健康食品の市場規模は2011年に約1・7兆円に上ったとの推計もあり、同会議では表示制限を緩和すれば、メーカーの開発意欲の向上につながると指摘している。
農業分野は「1年程度かけて結論」 政府の規制改革会議
SankeiBiz 5月31日(金)8時15分配信
政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は30日の会合で、6月5日に規制改革の答申をまとめ、安倍晋三首相に提出することを決めた。農業分野の規制改革については、この夏以降に議論を本格化させ、「1年程度かけて結論を出す」(岡議長)方針を確認した。
規制改革の答申は、6月中旬に閣議決定し、関係省庁が具体化を進める。規制改革会議ではその後も項目ごとに改革が進捗(しんちょく)しているかを点検する方針だ。
一方、これまで議論してこなかった農業について、30日の会合で、農林水産省の担当者からヒアリングした。攻めの農業を展開する中で、農地の大規模集積化などの施策が説明された。
これを受け、規制改革会議では農業分野の規制改革を図ることを決定。ワーキンググループまたは小委員会といった専門の検討チームを作り、専門家も招いて、集中的に議論する。
会合後の記者会見で、岡議長は「まだ、具体的な検討項目については決定していない」としながらも、政府が今後進める農地の大規模集約化を進める「農地集積バンク」が、「誰もが農業に参画できるような運営になるかなどがテーマになる」との見通しを明らかにした。
また、耕作放棄地が増えるなど課題が多い減反政策については、「減反自体は農業政策そのもので、規制とはとらえない。議論は産業競争力会議で展開することになる」(岡議長)との認識を示した。
成長戦略第2弾は「企業版特区」 産業、観光、農林水産業…問われる手腕
2013.5.18 08:00
安倍晋三首相が17日打ち出した成長戦略の第2弾は、農業所得倍増などの農業改革と設備投資の拡大など産業政策を柱に据えた。金融緩和、財政出動に続く、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略は、日本経済の浮沈のカギを握る。実現に向けた道筋が問われる。
産業強化策 技術革新後押し
安倍晋三首相が民間投資の喚起を柱とする産業強化策を打ち出したのは、投資の長期低迷が日本経済の停滞を招いているとの強い危機感があるためだ。企業が新技術の開発や生産設備の拡充に積極的に投資できる環境を整備することで、企業の国際競争力を取り戻し、国内雇用や賃金を上向かせて消費を押し上げる好循環の実現を目指す。
「国内投資を阻害する要因は何であろうが一掃する」。安倍首相は国内投資の大胆な喚起にこう意欲をみせた。
今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は2四半期連続のプラス成長を達成したが、設備投資は0.7%減となお水面下に沈んだままだ。日本企業は200兆円を超える余剰資金を抱えるとされるが、将来の展望を描けず、投資に踏み切れない状況が続いている。
今回の投資喚起策で柱になるのは、技術革新に挑戦する企業に規制緩和を特例的に認める新制度「企業実証特例制度(仮称)」の創設と、投資による財務負担を軽くする新たなリースの仕組みの導入だ。
企業実証特例制度は「企業版特区」ともいえるもので、具体的には、国内の自動車メーカーが、運転手が操作しなくても自動的に走る「自動走行車」の公道での走行実験を求めた場合、安全に走行することを条件に特例として認めることなどを想定。自動走行車は米グーグルが公道での実験に乗り出すなど有望視されているが、国内では道路交通法などの規制が開発の障害になっている。
ただ、予算や規制改革も含めた投資促進策の全貌は示されなかった。政府は設備投資の促進が6月にまとめる成長戦略の「鍵を握る」(経済産業省幹部)として具体策の取りまとめを急ぐ。
観光立国 訪日外国人2000万人目指す
観光立国としての日本の存在感を示すため、政府は来日する外国人数を、現在からほぼ倍増の2000万人とする目標を打ち出した。
昨年1年間では約837万人で、マンガやアニメなど日本独自のコンテンツを発信する「クール・ジャパン」を呼び水の一つとしたい構え。富士山(山梨県、静岡県)が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されることがほぼ確実でもあり、あわせて追い風としたいところだ。
今年1~3月の訪日外国人数は前年同期比18%増の約226万人。日中関係が好転しないことで、中国からは同27.3%減と冷え込んでいる。その一方、韓国や東南アジアが、円安や格安航空会社(LCC)の就航を背景に堅調だ。
特に政府が強化したいのは、経済が急成長中の東南アジア諸国だ。タイやマレーシアの旅行者は現在ビザが必要だが、今後は発給条件の緩和を進めていく。
日本政府観光局(JNTO)は17日、「ムスリム・ツーリズムセミナー」を都内で開催。インドネシアやマレーシアなどイスラム圏からの観光客を増やす狙いで、JNTOは年内にジャカルタに事務所を開設する。
課題は日本側の受け入れ態勢の拡充。成田空港や羽田空港には、飛行機の発着時間や都心部への交通が「海外の空港に比べて不便」という指摘も多い。インフラの充実も迫られる。
攻めの農林水産業 輸出・生産・所得倍増
「攻めの農林水産業」では農林水産品・食品の輸出額や農業生産額、農家の所得を今後10年間でそれぞれ倍増させる目標を掲げた。農地集約によりコスト削減を進めるとともに、生産者が加工や流通まで手がける「6次産業化」で収益を高めることで実現を目指す。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に向け農家の体質強化を図る。
農林水産省によると、2012年の農林水産品・食品の輸出額は約4500億円と5年前に比べ1割以上減少。農業生産額は10年度に9兆8000億円と20年前から約3割減り、所得も3兆2000億円とほぼ半減した。
安倍晋三首相が打ち出した改革の柱は農地集約と6次産業化だ。農地集約では、農地の所有者と借り手の受け皿として「農地中間管理機構(仮称)」を設置。所有者から機構が農地を借り受け、国費を投じて水路などを整備。
意欲のある農家に貸し出し、大規模化を後押しする。6次産業化では、政府が地銀などと設立した官民ファンドを活用し、農家と商社や流通業が組んだ事業に出資する。6次産業化の生産額は10年後に10倍の10兆円に増え、農家の所得を1兆8000億円押し上げる見込みだ。
キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁・研究主幹は「TPP参加に向け、価格維持を目的とした減反政策を廃止するなど抜本的な競争力強化策に取り組むべきだ」と指摘した。
安倍首相発表の成長戦略第2弾のポイント
【成長戦略】
・インフラシステム輸出を2020年までに3倍の30兆円に
・世界の成長を取り込んで、雇用や報酬の引き上げにつなげる
「6次産業化」で収益を高めることで実現を目指す【イノベーション】
・燃料電池車の2015年の本格普及開始に向け、関連規制一挙見直し
・公道における自動走行車実証実験など先端実証「規制ゼロ」へ
【大学改革】
・国立8大学で外国人教員を今後3年間で1500人迎え、倍増
・世界大学ランキングトップ100に現在の2校を10年で10校に
【民間投資の拡大】
・現在年63兆円の民間設備投資を3年間で70兆円に引き上げ
・稼働状況に応じてリース費用を変えられる設備リース手法の導入
・ベンチャーなど起業の際の個人保証偏重慣行から脱却
【攻めの農林水産業】
・首相が本部長の「農林水産業・地域の活力創造本部」を発足
・10年間で、農業所得を倍増
・2020年までに農林水産品の輸出を1兆円に倍増
・農地の集積中間的受け皿機関「農地集積バンク(仮称)」創設
【クールジャパン戦略】
・年間800万人の訪日外国人旅行者を将来的に2000万人に
・ASEAN諸国からの観光客増加のためビザ制度の見直し
・海外での放送コンテンツ売り上げを5年間で100億円超増加
・500億円規模の官民ファンド「クールジャパン推進機構」創設
規制改革会議で進む保育分野の規制緩和――親の会らが意見書を提出
週刊金曜日 6月3日(月)17時19分配信
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規制改革会議への意見書を共同提出した保育園を考える親の会などの記者会見。(提供/普光院亜紀) |
規制緩和を進める安倍政権下で今年一月に発足した規制改革会議(議長=岡素之・元住友商事社長、委員一五人)は現在、保育分野の規制緩和の検討を進めている。
第五回会議では保育分野の検討事項として、(1)自治体が認可保育所への株式会社の参入を抑制しないように政府がガイドラインをつくる(2)待機児童が多い都市部で特例的・時限的な規制緩和を認める(3)保育の質についての第三者評価を拡充する、の三点が挙げられた。
子どもが待機児童になり、集団で「異議申立て」をしたグループの親は規制改革会議の議事録を見て驚いた。委員が、親の「デモ」が起こっているから規制緩和を急ぐべきだと述べていたからだ。
第七回会議が開催された四月一七日朝、これらのグループと保育園を考える親の会など四つの団体と子どもを保育事故で亡くした夫妻らは、「私たちは安全・安心な認可保育所の増設を求めているのであって、規制緩和は求めていない」という趣旨の意見書をそれぞれにまとめ、ともに規制改革推進室・厚生労働省におもむき、提出した。
安倍晋三首相は一九日、成長戦略として「五年間で待機児童ゼロ」や「育児休業を一年から三年に延長」することを支援するとしたが、親たちが心配する認可保育所の面積基準や人員配置基準のゆくえは定かではない。そもそも日本の認可保育所の保育士の配置基準、面積基準は先進諸国に比べて低い。専門家や現場からは基準の向上が求められてきたが、一九九七年の児童福祉法改正以降、パート保育士の導入、定員弾力化による面積基準ぎりぎりの子どもの「詰め込み」など、質を下げる方向に規制緩和が進んできた経緯がある。
二〇一五年実施予定の子ども・子育て支援新制度では、質の向上を求める意見を受け配置数の改善が検討されるはずだったが、このままではそれどころではなくなる。