大友涼介です。

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【こちら特報部】「国家権力はウソ隠す手段を選ばない 秘密保護法案と西山事件」2013/10/21(東京新聞)

東京新聞:国家権力はウソ隠す手段を選ばない 秘密保護法案と西山事件:特報(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013102102000140.html

<書き起こし開始→

 特定秘密保護法案をめぐる議論で頻繁に登場するのが「西山事件」だ。日米の沖縄密約に関する情報を外務省から得た元毎日新聞記者の西山太吉さん(82)が逮捕、起訴され、有罪になった。密約や報道の自由の問題は男女の問題にすり替えられたが、後に米国側の文書開示で密約が明らかになる。国家がなりふり構わずウソを覆い隠した事件の教訓を生かそうとすれば、秘密保護法案の成立を許していいはずがない。当事者の西山さんに聞いた。 (荒井六貴記者)

※デスクメモ 外務省が密約報告書を公表する直前、吉野さんにインタビューした。当時九十一歳、記憶は確かだった。二〇〇六年のことを「私のイニシャルのサインが米国の国立公文書館の中に出てきた。自分のものだと言わざるを得なかった」と語った。西山さんとは、恩讐を超えて友となった。(圭デスク)



◇民主主義の大前提は情報公開 元毎日記者は語る



 「民主主義の大前提は情報公開だ。秘密保護法案が成立すれば、政権にとって都合の悪い情報は永遠に隠される。国民主権の根幹が揺らぐ」

 自宅のある北九州市内のホテルで取材に応じた西山さんは、時折指で机を叩きながら語気を強めた。

 自民党は公明党の修正要求を受け入れ、取材の自由や知る権利への配慮を法案の最終案に盛り込んだ。しかし、西山さんは「抽象的な言葉を入れても、何の助けにもならない」と切り捨てる。

 「そもそも自民党政権は、沖縄密約の時から国民にウソをつき続けている。沖縄密約は、国家機密をどう考えるかという原点だ。その検証もないまま、機密に関する法案を提出する資格はない。法案の中身の前に、自民党の隠蔽体質を追及すべきだ」

 国家権力は機密、ましてや「政権のウソ」を”保護”するためには手段を選ばない。それが「西山事件」だった。先になくなった作家の山崎豊子さんの小説「運命の人」のモデルでもある。

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運命の人(一)~(四) (文春文庫)
Amazon内容紹介より→昭和46年春、特ダネ記者の弓成亮太は沖縄返還交渉にまつわる密約の存在に勘づく。熾烈なスクープ合戦の中、彼はある女性と…。毎朝新聞政治部記者、弓成亮太。政治家・官僚に食い込む力は天下一品、自他共に認める特ダネ記者だ。昭和46年春、大詰めを迎えた沖縄返還交渉の取材中、弓成はある密約が結ばれようとしていることに気づいた。熾烈のスクープ合戦の中、確証を求める弓成に、蠱惑的な女性の影が…。戦後史を問いつづける著者・渾身の巨篇。

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 沖縄返還が始まったのが一九六九年。当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が共同声明を発表した。キャッチフレーズは「核抜き本土並み」。佐藤政権は「沖縄から核を撤去し、二度と持ち込ませない」と宣伝した。

 一九七一年六月の返還協定では、

▽米国が接収した土地を戻す原状回復費用は、米国が「所有者に自発的に支払う」
▽日本は、米国資産買い取りや核撤去のため、米国に三億二千万ドル(当時の約千二百億円)を支払う」
▽米国の海外向けラジオ放送施設の運営を今後、協議する

 、などが記された。「沖縄をカネで買い戻す」印象も払拭した佐藤首相は一九七二年五月、悲願の沖縄返還を成し遂げた。

 ところが、裏では、まったく異なる事実が隠されていた。ニクソン大統領は返還合意直後、佐藤首相と「緊急事態の際は、核を持ち込む権利が認められる」との秘密文書を交わしていたのだ。

 財政面でも、米国は日本に三億二千万ドル以上の負担を要求してきた。

 柏木雄介大蔵財務官と、ジューリック米財務長官特別補佐官が、基地移転費用なども、日本が負担する密約に合意。米軍への思いやり予算の原型となった。

 さらに米国が「自発的に支払う」原状回復費用の四百万ドルと、ラジオ施設の移転費用を三億二千万ドルの中に組み込み、日本側が肩代わりする密約も結んだ。一九七一年六月、吉野文六外務省アメリカ局長と、スナイダー駐日公使の間で決めた。



◇法案提出の資格ない 取材の妥当性誰が判断



 西山さんは一九七一年五月ごろ、原状回復費用を日本が肩代わりすることを示す極秘文書を外務省の女性事務官から入手した。記事化とともに、社会党議員に電文を提供、国会で密約が暴露された。「佐藤政権がウソをついていた。憲法にも反する秘密だ。情報操作というよりも政治的犯罪だった」(西山さん)

 怒った佐藤政権は密約を否定した上で、電文を漏らした犯人捜しに走る。一九七二年四月、女性事務官は国家公務員法の秘密漏洩容疑、事務官を唆したとして西山さんも、警視庁に逮捕されてしまった。

 逮捕の裏に、政権の恣意的な判断はなかったのか。毎日や他紙は連日、「密約追及」「知る権利」のキャンペーンを展開した。

 だが、起訴状が流れを変える。東京地検は「『密かに情を通じ』電文を持ち出させた」と異例の表現を用いた。週刊誌は男女のスキャンダルとして報じた。毎日新聞の不買運動にも発展、経営危機にも陥った。

 女性事務官は一審で有罪判決を受けた。西山さんは無罪だったが、二審で逆転有罪となり、確定した。裁判では吉野さんが証言し、密約の存在を最後まで否定した。

 西山さんは「私を潰そうと、起訴状で異常な情景描写をされ、世論の目をそらすことに成功した」と振り返る。

 しかし、再び潮目が変わる。我部政明・琉球大教授(国際関係論)が二〇〇〇年までに、沖縄密約を裏付ける文書を米国立公文書館で見つけたのだ。退職した吉野さんも二〇〇六年、密約を認めた。

 自民党政権は、吉野さんの証言直後もウソの上塗りを重ねた。官房長官時代の安倍晋三首相も「密約は一切、存在しないというのが政府の立場だ」と言い張っていた。

 その後、密約文書の開示を求める裁判で、東京地裁も東京高裁も密約の存在を認定。民主党政権時の外務省有識者委員会も密約を認めたものの、民主、自民両政権を通じて政府の公式見解は明らかにされていない。

 西山さんは「政権は安全保障の美名の下、存立基盤を脅かしたり、国民の批判を招いたりする事実を隠す傾向がある。密約問題は、それをはっきりさせた」と指摘する。




◇新聞社にも不当な圧力



 西山事件当時、毎日新聞の大阪社会部にいたジャーナリストの鳥越俊太郎さん(73)は「起訴状をつくった佐藤道夫元検事は、自慢して『情を通じ』を入れたと言っていた。密約を追求されると困る佐藤政権が、記者だけでなく、毎日新聞を潰そうというムードをつくった」と解説する。

 秘密保護法案の最終案では、取材活動について「法令違反または著しく不当な方法によるものと認められない限りは、正当な業務による行為とする」と明記した。この条文は、西山さんの有罪判決が確定した最高裁判断(一九七八年)をほぼ踏襲している。西山さんの取材活動は「著しく不当」とされているわけだ。

 西山さんは「取材は公務員への教唆だ。極端に言えば、刑務所の塀の上まで行かないと、国が隠したい秘密に迫れない」と反論。鳥越さんは「西山事件の構図が引き継がれ、さらに重罰化するだけだ。不当な取材方法か否かを誰が判断するのか。意味のない規定だ」と指弾する。

 西山さんは、法案に反対する講演を全国各地で続ける。

 「自民が、ウソをつき続けるからだ。このままでは、どんどん秘密が増やされ、秘密国家になっていく。外交の実態を正確に伝達し、国民の審判を仰ぐのが民主主義だ。政権にウソをつかれたままでいいのかが問われている」


=== 関連記事 =====

「点検 秘密保護法案(1)厳罰化」2013/10/04(東京新聞) http://t.co/bFHS427Plm

「点検 秘密保護法案(2)特定秘密」2013/10/05(東京新聞) http://amba.to/1byb5Rr

「点検 秘密保護法案(3)知る権利」2013/10/06(東京新聞) http://amba.to/1htFb5Z

「点検 秘密保護法案(4)適正評価」2013/10/07(東京新聞) http://amba.to/1adx2zX

「点検 秘密保護法案(5)情報公開「2013/10/08(東京新聞) http://t.co/smIpfr8UzL

「点検 秘密保護法案(6)国会」2013/10/09(東京新聞)http://t.co/nrRBgEimYs

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=== 関連記事 =====

「秘密指定に監視役不在 特定秘密保護法案」2013/10/10(東京新聞) http://amba.to/17YEvUL

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【こちら特報部】「秘密保護法案の危うさ あの国家秘密法と同じ?」2013/09/15(東京新聞) http://amba.to/19f5U2T

【社説】「秘密保護法案 軍事国家への入り口だ」2013/09/13(東京新聞)http://t.co/ZDZpmRs06v

【社説】「国家安保戦略 日本の将来へ包括的指針示せ」2013/09/13(読売新聞) http://t.co/5kQQ3s0vw6

【こちら特報部】「秘密保全法案~原発情報隠し正当化も可能」2012/02/09(東京新聞) http://amba.to/1eQQdUq

【こちら特報部】「自民改憲草案 危うい表現の自由」2013/07/06(東京新聞) http://amba.to/10F7olv

政府における情報保全に関する検討委員会 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/index.html

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