ドワンゴN中等部が注力する探究学習(3終り)備忘録 | 元CAキャッシュを生み出す女性起業家応援熊谷留美子

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第三弾(最後)

 

第2部 教育の開発とカリキュラム

「教育」を開発する

−− N中等部教育の開発に共同開発者アドバイザリーボードとして、社会学や心理・精神学、ワークショップデザイン等の有識者が参画していることが印象的ですね。

為野「生徒たちが頑張って授業についてきてくれる中、我々も『なんとなく良さそうな授業』というのだけで終わりにしたくないですし、中学生という貴重な時間に対して責任を持ってやるためにも、学術的・科学的に実証されているコンテンツを中学生向けにカスタマイズした授業を展開しております。正解のないものなら何でも作れますけど、適当に作ってるわけじゃありません(笑)。小難しい話をベースにしていますが、楽しくないと彼らはやらないので、中学生向けにカスタムをすることが私たち教職員の仕事です。元ネタがある授業ということなので、教職員たちも自信を持って生徒に授業を展開できている、というのはあると思います。」

−− ライフスキル学習はいわゆる「正解のない教育」であり、「正解のない教育」はその教育自体にも正解がないため、効果があるかどうかの測定に苦慮されているかと思います。生徒の成長を図るために、どういった指標を用いているのですか?

為野「中等部の場合は、ライフスキル・アセスメントというものをご用意しております。共同開発者である相川先生と高本先生にお願いして、既存の心理尺度の中から、中学生と高校生が使えるようなライフスキル尺度を作っていただきました。『自分は今どんな状態なのか』、『得意なこと・苦手なことはなにか』といったことを、生徒自身で評価してもらうのですが、これを毎月とっていくので、指標としてもかなり有効ではないかと考えてます。自身がどう変化しているのかを把握できれば、自信にも繋がりますしね。やり方としては先生が書く、生徒が書く、両方が書くという手もあるのですが、感情トレーニングの一貫として、生徒自身が自分を客観視して文章化することが有効ではないかと考え、生徒の方でアセスメントを記入してもらっています。」

 

(出典:ライフスキル学習 | N中等部「ライフスキル診断」より)

 

N中等部のカリキュラムについて

−− N中等部が展開しているカリキュラムには様々なものがありますが、一番力を入れているものはどれですか?

為野「N中等部は3本柱でやっておりまして、まずは教科の勉強をしっかりとやらせております。義務教育課程で国数英の勉強が不十分だと、中学を卒業した時に困るじゃないですか。そういった 基礎学習 と、全ての基本である コミュニケーションスキル 、そして将来使える専門的なスキルにもなり、中学生年代の子にとって興味関心の高い プログラミング を3本柱にしています。ただバランス的には、『話す・聞く』ためのコミュニケーションスキルがまずは大事だと考えていますので、分野で言えば「探求学習」に力を入れております。」

−− その「話す・聞く」ということについて、探求学習のうちのライフスキル学習では具体的にどういったことをしているのですか?

為野「N中等部では 感情トレーニング・思考トレーニング・コラボレーショントレーニング という3つの授業を用意しており、『話し方・聞き方の授業』は、コラボレーションの授業の中で行なっています。とくに生徒は、『友達をつくりたい』『上手に話せるようになりたい』と思っている子が多いので、まずは『話をとにかく聞く』トレーニングから始めています。例えば、『頷きやジェスチャーを入れた会話だと相手はどんな気持ちになるのか』とか、『同じ "そうですね" という言葉でも、高い声か低い声かでどう感じ方が違うのか』といったことですね。会話するときの態度やテンションといった、コミュニケーションの土台の部分がしっかりできていると、お互い相手が自分を受け止めてくれてると実感できて嬉しくなるんですよ。このように、まずは『聞く』ことを身につけ、次に「話す」ことを身につける。その後に、人数を3人・4人に増やしていって、あるテーマに対して自分たちでどう考えるのか『合意形成』をするというように、難易度の高いコミュニケーションにもチャレンジしていきます。」

−− 中学生年代には少しハードルの高い授業のように思えますが、生徒は授業についていけているのですか?

為野「N中等部のライフスキル学習は、中学生年代でも一つずつステップアップで学べるようにとりわけ丁寧に開発しています。思春期の時って、異性と話すのが苦手だったりとか、部活の先輩と怖くて話せないとか、安心して話せる環境を整えることに関しては、生徒頼みにできないんですね。なのでそこの仕掛けに関しては、先生の方で用意しています。授業の初日は生徒たちも緊張気味だったのですが、思ってた以上に頑張ってくれていて、結構早いペースで進んでいます。」

奥平「私は今日、入学式以来に新宿キャンパスの生徒たちと会ったのですが、生徒たちの表情が大分違いましたね。」

為野「そうですね。緊張もあったと思うのですが、めちゃくちゃ表情が硬かったんです。授業を始めてからたった1ヶ月ですが、『あ、校長だ!』って生徒がちょっと笑顔になれたんですよね。私たち教職員が実感できるくらい、生徒の表情が柔らかくなった思います。」

−− 一方で、プロジェクト学習ではどんなことをしているのですか?

為野「より主体性が重視される プロジェクト学習 の方は、かなりハードルを下げました。高校生向けですと、PBL(Project Based Learning; 問題解決型学習)を自分たちで考えて、ちゃんと成果を出すまで一貫することが『主体性』だと考えています。ただ中学生向けですと、そのやり方がまだわからないので、主体性を生む一番最初のところ、『自分がどんなことをやりたいのか?何に興味があるのか?』という部分を非常に大切にしています。こういった最初の部分でさえ言語化が難しい場合は、先生の方で何パターンかの写真とフレーズを用意した上で、一番共感できるものを選んでもらうというように、簡単にできるところから掘り下げていきます。その上で、そのために必要なやるべきことを具体的にいくつか提案して、やってみたいものから実行計画を組んでもらいます。実際にやるべきことがわかると、『じゃあそのためにもこの時間は勉強しなきゃね』という具体的な話に自然と繋がるので、生徒の行動も結構スムーズですね。」

−− 学校の作文でよくある「将来の夢」みたいな授業とは正反対ですね。

為野「良い作文が書けたとしても、実際に明日から行動する生徒さんって少ないと思うんです。抽象的でふわっとした夢ではなく、一歩一歩しっかりと行動して、ちっちゃな成功体験を積み重ねて、自分の成長が実感できる形にもっていくことで、自己肯定感を育んでもらいたいなと思っています。」

プログラミング教育について

−− 3本柱の一つである、プログラミング教育についてもお伺いしたいです。

奥平「プログラミング自体は、どういう企業・業態であっても絶対に必要になるだろうという予測をしております。未来がそうなるのであれば、学生の年代からプログラミングを知っておけば、若くして最も早く得られるスキル・経験になるだろうと思い、そういった授業を用意しております。社会で使える力を生徒に与えることは、我々教師がやるべきことだと考えていますので。」

為野「中等部も高校と同じですが、プログラミングを学ぶこと自体は目的ではないです。プログラミングは『ものづくり』をするための一個の手段ですし、本格的にパソコンを触ったことがない子もいるので、生徒には『自分はこれを作りたいんだ!』という気持ちがあれば大切に育ててくれと伝えています。もしかしたらそれが、プログラマーになるためのきっかけになるかもしれませんしね。」

−− 最近は世間一般でも、プログラミングが学べる教室やオンライン教材が流行ってきていますが、奥平校長はプログラミング教育についてどう捉えていますか?

奥平「我々がプログラミングの授業を取り入れているのは、世の中に出て行った時に役立つスキルを身につけさせてあげたいというのが、一つの大きな目的でもあります。プログラミング教育で何をするべきかは、子どもの年代にもよると思うんですね。例えば、高校生は社会に出る直前なので、一つのスキルとして身につけていくのが良いと思いますし、中学生はプログラミングを題材として、物事を深く考えさせていくのが良いかと考えております。また、流行り廃りというのは決して悪いものではなく、彼らがその世の中に生きていくわけですから、教師側もある程度把握しておく必要があると思います。」

おわりに

-- 本日はありがとうございました。興味深い話ばかりでしたが、なかなかボリュームが凄かったですね(笑)。N中等部を理解するのに、一番手取り早い方法ってありますか?

村田「説明会はN中のコンセプトを体現させていますので、一番簡単にN中を感じられるかと思いますよ。中等部については川原さんのように、説明会や相談会を通してウチに入学することを決めてくれた子が多いかと思います。『良い友達できますよ』って口で言うのは簡単ですけど、親も混じ入れてワークショップをされたら、『あ、本当にこういうことが待ってるんだ』っていうワクワクを生徒も実感できると思うんですよ。」

-- 言葉で伝えるよりかは、本当に体験してもらって、という感じですね。

為野・村田「あーもう、ぜひ一度遊びに来てください(笑)。」

-- 奥平校長、最後に一言お願いします。

奥平「教師の役割は、もう知識の伝達ではなく、人としての器をつくっていくことに変わってきていると思います。うちには、様々なプログラムやツールがありますが、それを活かすのも殺すのも、我々それを扱う指導者の問題だと思ってるんですね。N中等部もまだまだスタートしたばかりですが、生徒にはこれから変化する色々な情報や価値観、ツールといったものを受け入れて活用していくための、 自分の器作りの場 としてN中等部を活用して欲しいです。高校生にはよく言うのですが、学校とはそこを足場にして何かをする場所であって、学校の中だけで完結させるものではないです。N中生にも、『N中は俺たちが作るぞ!』っていう気持ちを持っていて欲しいですね。」

-- ありがとうございました。

まとめ

今回のインタビューを通して、やりたいことを見つけ実行し達成する行動力しかり、ITツール導入による教育の効率化・最適化もしかり、将来使える専門的なスキルを身につけさせるための授業もしかり、角川ドワンゴ学園は 至極現実的な価値観を持った学園 であるという印象を持ちました。

N中が持つカリキュラムや教育観はここでは紹介しきれないくらい多様で、今後もさらに進化していくと思います。こういった稀有な環境にいる生徒たちは、どんな成長をしていくのかについては、ぜひN中等部1期生の川原明日奈さんの成長記録も追ってみてください。