ふぅわりと、
白と、
透明いろの、
中間の空気を纏い、
ひちゃりと、
人と、
人形の、
あわいの淡いかたち、
やわらかく、
搦みつく、
夜。
ゆぅるりと、
俺と、
お前の、
透き間を埋める、
生ぬるい、
風。
喘鳴と、
獣が、
天使を、
追い詰める、
唸り。
「獣? 貴方が?」
全然怖くないわという微笑。
「試してみるか? ほら、もうすぐ月が出る」
空を見上げる。
仄白い月。完璧な円。
「なんて……綺麗……」
「お前の方が、ずっと、綺麗だ」
完璧な告白。一条の揺らぎも無い。
光と、
蔭の、
せせらぐ狭間で、
獣が、
天使を、
吞み込んだ。
金無垢の髪が波打つ。何度も。
きらきらと、
光の残像。
いいえ──愛しているわ。
どんな姿に変貌ろうとも……。
欲しくて、
焦がれて、
理性も自我も忘れ慟哭した夜。
喉を掻き毟るほど。
声が嗄れるほど。
それはもう……遠い記憶。
獣が唸る。
天使が喘ぐ。
ぴたりと、
指先から内臓まで、
合わさる、
膚。
終演の幕が下りるまで。
もう夜は怖くない。
たとえ雲に隠れていても、
月は其処にいると知っているから。
完璧な夜──
二つの躰が白く爆ぜる。