鍼灸治療を通じて患者さんとは色々なお話をします。
お話をしている中で、違う患者さんなのに似たような展開になったエピソードがありましたのでご紹介したいと思います。
まずお一人目。
今月初診の80代後半のご婦人。
コロナ前は知人に紹介された市外の鍼灸院に通っておられましたが、ここ最近はすっかりご無沙汰で体のあちこちが痛むとのこと。
不眠や胃部の詰まり感もあるとのことで来院されました。
「○○先生の所では細いほっそい鍼を100本程うってくれてはりましてん」
「はぁ、、、」
「先生のところはどうですか?たくさんうってくれはるんですか?」
「そうですねー、うちではどんなに多くても片面20本程度ですかねーー」
「へえ、そんなもんですか」
「100本もうったら、もはやツボなんか関係なくなってきますからね」
「なんでも多かったらええわけちゃいますんでね」
「はぁ、、、」
(ちょっと不服そうなご様子)
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お二人目、先月初診の20代女性。
妊活鍼灸で来院、諸事情により早期の挙児を希望されています。
当院に来られる前に、少しでもプラスになればと漢方専門医院で漢方薬を処方されていました。
「どんなお薬が出ているのか治療の参考になりますので教えていただけますか?」
「先生ちょっと見てもらえますーー?」
(お薬手帳を指し示し)
「こんなに出てるんですよーーー」
「え、、、⁉」
(7種類の方剤を1日3回、+寝る前に1種類の計8種類)
「ていうかこんなに飲めます?」
「もう必死ですーーー」
「こんな『全部乗せ』みたいな出し方やと、もはや証なんか関係なくなってきますからね」
「なんでも多かったらええわけちゃいますんでね」
「そうですよねーーー」
※証 →身体の状態や体質を総合的に評価した診断結果
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お一人目の方は、【鍼の本数の多さ=良いサービス=良い治療】と思い込んでおられる節がありました。
決して本数の多い治療を否定するわけではありませんが、多くうつとその分治療効果が高まるわけではありません。
鍼を1本しかうたない治療法もあります。
当院では、体質や症状を考慮した上で、必要最低限の本数にとどめるように心がけて治療しています。
(どちらかというと、もう少し本数を絞りたいなと思っています)
お二人目の方のエピソードは、近年問題になっている「ポリファーマシー」と呼ばれる薬の多剤併用がテーマです。
漢方薬では多剤を組み合わせて処方することは珍しくありませんが、今回のケースでは明らかに多すぎると感じました。
(この方は不妊治療で西洋薬も服用されていました)
1つの方剤は5種類前後の生薬を調合してつくられており、8つの方剤が出ていると、桂枝、芍薬、茯苓など、よく用いられる生薬を重複して服用することなります。
もちろん、漢方薬に副作用がないわけではありません。
多岐にわたる症状に対して多くの薬を服用することで対応するのではなく、その人の「証」に合った薬を選択して服用することが基本です。
これは鍼灸治療にも共通する所であり、日々の自分の治療に対する戒めでもありますが。
兎にも角にも、何事も多けりゃいいものではありませんよね。
「過ぎたるは及ばざるが如し」です。
はやし鍼灸整骨院(大阪府枚方市くずは)