小学校に入って困ることの筆頭に、「漢字をノートに〇回ずつ書いてくる」という宿題があります。発達障害の子は、定型の子と違う「特性」というものを持っているので、定型社会のやり方では逆に学習を阻害してしまうケースもあるのです。過去記事(こちら☆)でご紹介したケースよりも、より書いて学ぶことに困難さを持つ子に対する学習方法です。その一例をご紹介します。

 

漢字は日本人にはなくてはならないものであり、覚えてしまえばこんなに便利なものはありません。まるで「絵」のように、一字が意味を示してくれるのです。

 

その便利な漢字は、1年生から6年生までの間に1006字(だったと思います)覚えなければなりません。そのため、宿題で新しい漢字はノートに1つの漢字につき、5回書いてくるとか、1行を一つの漢字を書いて埋めてきなさい、というようなものが増えてきます。

 

書いて覚えられる定型のお子さんはいいのですが、非定型の子供の場合、空間認知や図形の理解、バランス、同時処理能力(書きながら覚える、手と脳の協調)などが脳機能的に凹みがあり、もともと書いて覚えられるという常識が成り立たない体の構造を持つ子も多々います。

 

左手が義手の親族がいるのですが、その義手で、定型(健常)な人と同じやり方で同じようにご飯もたべ、お味噌汁のお椀も丁寧に持ちましょう、幼稚園の子でもできることです、と言ってしまうのと、同時処理能力に凹みがあり、一つのことを処理する能力は突出しているけれど、同時進行はできない、という人に「きちんと綺麗に書きなさい。なぜ毎回、書いても覚えないの。」というのは同じことだと思っていただけると、非定型に「常識が通じない」場合の「なぜなんだろう」という疑問が理解できるかなと思います。

 

さて、

 

・ 漢字が書けても時間がものすごくかかり、かつ汚く書いてしまう子

 

・ 書いても書いても、全く覚えない子

 

の場合、書く作業が意味をなしていないことがあります。むしろ、「書くことで記憶することを邪魔している」という、指導そのものが間違っているケースがあります。

 

その根拠としては、書かずに漢字1006字を覚えた親族の子が一定数いることと、覚えた後では、テストの時に漢字を書くことができていること、その学習方法は、「口で説明できるように」漢字の部分、部分を明確に暗唱するという方法で、書く、ということとはかけ離れた学習方法を行ってきた、という実践と結果にあります。

 

もともと、支援学校の先生から教えていただいた学習方法で、それが親族の親に評判となり広がりました。ただ、このやり方をしているのは「書いて覚えられない子」限定です。

 

書いて覚えられる子は公立の普通級に在籍していれば宿題は同級生と同等にできないといけない立場ではありますので、技能的に困難というほどでもなければ、普通級の定型方式で学んでいます。支援級に在籍していたり、国語を通級で取り出しで学んでいる子で漢字の書き取り練習が免除になっている子達は、どちらかというとこの「漢字の部位を暗記して口頭で言う」という覚え方をしています。学習方法も、その子、その子に合った方法、在籍している環境から提示されている条件にそった方法で異なるやり方をしています。

 

漢字の「部位を暗記して口頭で言える」ように覚える、というやり方は、目が不自由な子供のために考えられた方法であるようです。つまり、目で見ること重視でもなく、焦点をあてているのは「漢字は、機械のように部品を組み合わせて作られているので、それを組み立てられるように、一つ一つの部品をまず正確に覚える」ということです。

 

口頭で説明できるということは、書かなくても、どの部品を用いるか、を知っているということです。知っていれば、漢字は組み立てられます。書いて覚えられない子は、この「部品の一つ一つを覚える前に挫折している」ので、部品の記憶もあいまいなまま、やたらめったに組み立てようとして、違った機械が出来上がったとか、どんな機械(漢字)なのか、「漢字そのもの」を忘れてしまった、とか、そんな風なのだろうと思います。

 

小学校1年生になって、漢字が書いても書いても、全く覚えられない子には、まず「部分」を書いたカードと表を手作りして渡してあげます。

 

小学校で「小」という字を習うと思いますが、この簡単な文字は「3つの部分」からできていて、どんな形で、どんな特徴があって、どんな呼び方をするのか(偏)などを、こちらの記事()でご紹介した「小学生のための漢字をおぼえる辞典」を参考に、ばらしてしまい、部分を丁寧に教えて行きます。

 

例えば、

 

「小」

の、左の点は、「外を向いてい長い点」なのですが、これを見なくてもわかるように想像できるように説明するのです。「カタカナのノと同じ形の、左に流れるちょっと長めの点」と「よく作文を書くときに使う句読点の「てん」『、』を、ちょっとでっかく、長めに書いたもの」とか、そんな説明をして覚えてもらいます。

 

真ん中の棒が、意外と覚えるのが難しいようで、「はね」の部分が記憶が曖昧になりがちです。そこを「明確に記憶できるように」しないといけないので、子供によって覚えやすい覚え方を相談して決めて、カードや表に書き込むことが多いです。例としては

 

「壁にむかって立って、それからこっち向いて(左の事)る形」と、身長ぐらいの縦棒に、左向きにはねているところは自分の親指からかかとぐらいの長さ、と「長さの割合」もきちんと覚えます。

 

右左が曖昧で覚えられない子もいるので、口頭での説明に「右にはねる」とかの言葉を使わない場合もあります。壁の方をまずむいて、テレビのある方(右)、机のある方(左)と覚えたり、自分の家の位置情報を利用して覚える子が多いです。

 

カードや表にはもっと簡潔に「カタカナのノ」「ただの長い点、でもテレビの方に向かって書いた点」「立って机の方に足を向けた形」という風に書いてあります。

 

退屈で面倒な学習が嫌い、初めての事(初めて覚える漢字)は取り掛かりたくないと苦手意識が大きい子が多いので、初めて学ぶ文字は「今から言う説明を聞いて、どんな文字か想像してみて!もしわかったら、最後に書いてみてね」と、クイズ方式にすると喜んで「初めてのことは嫌い」な子もよってくることが多いです。

 

上のように、部分、部分を表やカードにして覚えていけば、例えば口で

 

「一つめ、立って机の方に足を向けた形。それが真ん中。二つめ、カタカナのノを、机の方に向かって書く、でも真ん中の線より短いこと!長すぎない。三つめ、テレビの方にただの長い点、でもテレビの方に向かってる点。これも真ん中の線より短い事!長すぎない。おわりです!さて、なーんだ!」

 

というなぞなぞを出すような感じでいうと、自分の体を使って考えたり、紙に書いたりして、「小」の文字に近いものが書けます。

 

覚えさえすれば、出力(書く)ということができる子は、これですんなりと漢字を次々にマスターしていきます。

 

次に、出力(書く)が苦手な子の学習方法です。

 

書く作業ができない子は、空間認知や図形の把握が発達検査項目で凹んでいる子も多いです。学校で書く宿題を免除してもらう子は、たいてい検査結果を出して、具体的に「空間認知や図形を把握する技能に凹みがあるから、書こうとしても、脳内にある文字を実際に紙に書き起こすことができない」と先生に説明すると、ああ、そうなの!とわかってもらえることが多いです。

 

でも普通級だとテストもありますし、それで書かないわけにはいかないので、「やたらめったらに回数を多く書いて覚える」のはやめますが、

 

「一つの漢字を書く前に、丁寧にバランスや配置を具体的に一緒に考えて万全の状態にしてから書く」

 

ということをします。例えば、どの子も格闘するぐらいに難しいのが「議」という文字です。これを見て書ける人は、見て自分で文字の配置やバランスを取る技能が備わっている人です。発達障害の子でこれが備わっていない子は、書くと「言」の文字がどーんと、大きくなったり、「羊」の上の部分が大きすぎて、下の「我」という部分が余白がなくなってかけなくなったりします。

 

書いて覚えればいい、と書かせても、書かせても、結局テストでは「言」が大きくて「羊」の上の部分が同じぐらい大きく、「我」が小さすぎる変わった字になり×とされる、という結果になったりします。

 

書く前に、バランスを一緒に見て、検討して、漢字ノートの□のマス目には十字で四つに区切りがされていると思いますので、どの部分に、どの部位を書くかをあらかじめ発見して決めて行きます。

 

「議」という文字は「義」が左のマス目の半分ぐらいまで使ってしまっている、目立ちたがりの文字だ!と、発見できるわけです。

 

「かわいそ~、『言う』って文字が、ものすごいほっそい、せまいところにおしこめられてる!」

 

「我」っていう文字が一番偉そうだよね!言うって文字を端に追いやってるし、上のカタカタのノと数字の一とかは、マス目の十の真ん中の線より上に書いていいんだ。」

 

「ってことは、羊の上の部分を、ちっちゃく(マス目の四つの区切りの右上部分の)半分ぐらいの大きさに書いとけばいいんだよね」

 

と発見できれば、もう「言」の文字の形が「左端におしこめられてかわいそうな文字」として記憶されます。配置は左端に細々とされ、ばっちりです。羊の上の部分は、四つマスの右上のスペースの半分に書き、そして「義」という字は残りの余った空間、つまりマス目を十字に仕切っている線の、真ん中の横線より上部に、そして左側は「言」を追いやるぐらいに「大きく大らかな義」が書けます。

 

ノートのマス目の「十」の仕切りを重視して、その上、その横、端、など具体的に位置を確認して部位をそれぞれはめこんでいけば、「空間認知」や「図形把握」が苦手な子も、それなりに書けることが多いです。

 

そして、一度、マス目の中での漢字の部品を配置するバランスを覚えてしまうと、次に書いたときにもよく覚えていることが多く、「何度も書かせてもだめだった」子が、一発でバランスの良いい文字が書けた、ということもあります。

 

すべてがすべて、このやり方で克服できるとは言いませんが、「ただ書く」だけでは解消しなかった問題が、このやり方で一定数の親族の子達が「書かずと覚え、練習せずに配置のよいバランスの取れた文字が書ける」ようにはなっています。

 

ただ、たかが文字1つに親子で文字の部位を覚えて、口頭で組み立てられるようにしたり、書く前に文字の配置とバランスを具体的に「マス目に落とし込む」作業をしたりと、時間がかかります。学習はできるようになりますが、作業にとても最初は特に、時間がかかります。そんな時間のかけ方ができないからこそ、学校では手っ取り早く大勢に通じる「ただ書かせる漢字学習」をするしかない、という現実があるのだ、と思います。

 

同じ関連で、「勉強も書かずに学習する」方法も、お子さんに試してあげてください(参考記事はこちら☆)。ノートを取りながら学ぶのでは、内容記憶できないのも同じようなからくりです。勉強嫌いになる前に、無駄な作業から解放し、子どもに向いた学習法でやれば、学習の中身が子の頭に入っていく、ということもあるのです。

 

最後に、利用している本の紹介をして終わります。

 

こちらの辞書を見ながら子供と部位やバランスの相談・発見をする親も多いです。大きめのマス目を四つに区切った中に漢字が書いてあり、下に覚えやすいように部位の説明もされているので、話し合いしやすいです。

支援学校の先生から教えてもらった道村式という方法を考えられた方の本です。

本は売り切れているようなので、電子書籍の方ものせておきます。

 

 

 

人気ブログランキングへ

 

にほんブログ村