Banbi通信 VOL.286 | 初鹿明博オフィシャルブログ Powered by Ameba

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史上最長の通常国会が閉会
違憲法案の強行採決は憲政に汚点を残す!

 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案を成立させるために過去にない95日間の大幅延長で過去最長の245日間続いた通常国会が終わりました。
 言うまでもなく今国会の最大のテーマは集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法案。
 ほとんどの憲法学者、内閣法制局長官OBと最高裁判所判事OBの大半、日弁連などの専門家、そして、野中広務さん、古賀誠さん、山崎拓さん、加藤紘一さんといった自民党の大物OBまでもが明らかに憲法違反だと断じている政府案に対して、維新の党は、憲法学者の小林節慶応大学名誉教授などから合憲だとお墨付きを得た独自案を提出して、委員会での審議をすると共に、与党との間で修正協議を行なってまいりました。
 独自案提出時から予想は出来ていましたが、維新の案の審議を十分に行なうことなく、また、修正についても全くこちらの意見を聞くこともないままに衆議院で強行採決、参院で再度、独自案提出するも、同じ結果でありました。
 野党5党が共同提案で内閣不信任案を提出するなど法案成立を阻止するために抵抗しましたが、数の力には敵わず、憲法違反の法案を成立させてしまうという憲政に汚点を残す結果となってしまいました。
 しかも、委員会での採決は速記を止めたままだまし討ちのような形で採決を強行し、議事録にも残っていないという事態になり、とても採決がされたとは言えないような状況でした。これがまかり通るようでは本当に民主国家とは言えません。
 数があれば何でも出来るという思い上がった安倍総理並びに自民党・公明党の議員は、権力者であっても憲法の範囲内でしか権力を振るうことが許されていないという立憲主義の基本中の基本を理解していない民主国家の政治家として失格であることが明らかになりました。このような議員に政治を任せ続けてはならないと強く感じます。
 さて、今回の安保法制の審議を通じて改めて実感したことは、国会審議の在り方を見直さないとどこが政権を取っても意見が二分するような重要法案の採決は必ず強行採決になってしまうということです。一言一句変えずに成立させたい与党と何が何でも成立を阻みたい野党との間で円満に採決が行われる余地が全くないからです。
 常に重要法案の採決時には、乱闘騒ぎになり、国民から何をやっているのだと与党野党問わず、呆れられる、結果、政治不信が募るということの繰り返しになってしまうのは与野党問わず誰も本意ではないと思います。
 では、どうすれば良いのかと言えば、多数派が数の力で押し切るのではなく、少数者の意見に耳を傾け、そこに道理があるならば積極的に取り入れていくようにしていくことでしょう。
 このようなことは、当たり前ですが、私が初めて言い出した訳ではなく、戦前から憲政の神様、尾崎行雄氏が言い続けてきました。
 今回の内閣不信任案の趣旨説明に立った民主党の枝野幹事長が取り上げましたが、尾崎行雄氏が昭和22年に「民主政治読本」という著書にはっきりとこう書いています。
 「一般人民から選ばれた代表が一堂に会して会議を開くのは何のためであるか。言うまでもなく、それらの代表がどうすることが最大多数の最大幸福であるか、どうすれば国家の安全と繁栄が期待せられるかという立場に立って、思う存分に意見を闘わし、これを謹聴した各代表が何ものにも縛られない完全に自由な良心をもって議案の是非善悪を判断した結果、多数の賛成を得た意見を取り上げて民意を政治に反映させるためである。ゆえに真性の議会においては少数党の言い分であっても正しければ多数の賛成を得て可決せられ、議場の討論において多数議員の良心を引き寄せることができなければ否決せられるのでなければならぬ。もし多数党の言い分なら何でも通り、少数党の言い分であれば何一つ通らないということが会議を開く前からわかっているなら、会議を開くことはまったく無用、無意味な暇潰しである」
 まさに今の国会のあり様を見て書いたのではないかと感じる位に今の国会はこの通りです。
更に尾崎行雄氏は大正6年には次のように言っています。
 「憲政の本義においては、衆議院にしていやしくも立言議場の風ならんや、そのもっとも尊ぶところは言論せざるべからず。しかるに我が衆議院および世間は、常に言論を侮辱し、欧米にあっては討論数各夜にわたるべき大問題も、我が国においては数時間以上の討論をゆるさず、賛否の議論、いまだ半ばに至らざるにあたって、討論終結の声、すでに四方で沸く。我が衆議院は、衆議院にあらずして票決院なり。我が国には、票決堂ありて議事堂なし」
 今回の安保法案の審議から採決に至る過程は、何度も答弁が変わったり、この法律が必要だと言っていた根拠がなくなったりしても一字一句変えないで採決に臨んでしまったのですから、尾崎氏の言う通り、国会議事堂ではなく本当に国会票決堂と名前を変更した方が良いと思ってしまいます。
 選挙の結果が全てのような国会ではなく、少数者の意見でも理が通っていることが多数の意見になっていくように、国会議員が何ものにも縛られない自由な良心をもって議案の賛否を決めるような国会にしていきたいとつくづく感じます。
 まずは自民党に対抗し得る野党を作ることに力を注ぎ、次の選挙で勝つことです。
 今後も、国民の自由と人権、そして、民主主義を守るために不断の努力を続けて参りますので、引き続きの応援よろしくお願いします。