side Y








パチン!!




茂「ご馳走様でした!」




『ご馳走様でした』




お「ゆうちゃん、ご馳走様!

  ありがとね!」




「いえいえ、お粗末様でしたー!」




茂「しっかし、くったぁー!!」




『食べすぎた、な』




お「大食いというか、早食いというか…」




「苦笑」




おばあちゃんからもらって

持て余してた大量の野菜と、袋ラーメン1セット。




普段作らない量に、

作りすぎたと思っていたけれど、

高校生の男子が二人もいれば、あっという間。




第二弾まで作ってようやく、

お腹をポンポンと叩くおじさんみたいに

満足したらしい二人。




私はそんな彼らを

おんちゃんと一緒になって苦笑いで見ていた。




お「にしても、

  岡田くんって意外に大食漢なんだねー」




『そんな意外かな?』




茂「岡田は痩せの大食いってやつだよな。

  つか、なんか体デカくなったか?」




『んー上半身は筋肉ついたかも』




お「岡田くん、そのロンT、きつそうだね?」




『うん、腕周りが変わったからか、

 今までの服が小さくなってさ』




茂「んなら、俺の着てない服いるか?」




『おー!ほしい!

 あ、でも、茂木、ジャージ意外持ってんの?』




茂「持ってるわ!」




「確かに、ジャージのイメージだね?笑」




お「ジャージか、制服か?笑」




茂「おいおい、俺だって洒落た服くらいな?」




お「着ないけど、持ってるんだ?」




「ふふふ」




茂「今度持ってくるから!」




『楽しみにしてるよ』




学校では、

私達四人はいつもこんな感じでいるけれど、


学校以外でも、

こうやって変わらず楽しくいられるんだって


今日知った発見の一つ。




高校を卒業しても、

こんな風に集まれるといいな、と思う。




でも、それは、

今ここに恋愛関係が無いからなのかな?




そう考えると、

永遠の友情ってやっぱり難しい気がした。






それから

食後の休憩を少し挟んだ後。




ジャー!! キュ。




おんちゃんに手伝ってもらって、

お鍋と食器はすぐに片付け終える。




「おしまい!ありがと!」




お「ううん!ごめんね?

  洗い物くらいしか手伝えなくて」




「全然っ、助かったよ?」




お「次は料理教えて?私も覚えたい」




「じゃあ今度また作ろ?」




お「うん!」




茂「おっ!じゃあ、俺味見係します!」




お「不要です。」




『茂木が食材用意すれば?」




茂「ぐぬぬ、じゃあ、食材を…」




お「よし!お財布係ね!」




茂「…バイトしよ、」




相変わらずこの二人はどこまでいっても仲が良い。




私と茂木くんが付き合ってたときは、

おんちゃんが気を遣ってくれてて

こんなやり取りは部活以外ではなかった。




それでも、

目には見えない強い信頼関係があるのは

よく分かっていたこと。




この先も二人がずっと

ただの幼馴染でいるかどうかはさておき。




茂木くんにとっても、

おんちゃんにとっても、

互いに特別な気持ちがあるんじゃないかな?




そして、

家族のような縁の強い二人の関係が、

今の私には凄く羨ましい。




たとえ血が繋がってても、

たとえどれだけ愛し合っても、

ずっとそばに居られる保証はない。




誰かと一生を添い遂げられるっていうのは

きっと奇跡的なことなんだろう。




「今度はゆっくりご飯会しようね?」




お「うん!約束ね!」




ニッコリ笑って

小指をピンと差し出すおんちゃんにつられて、

私も嬉しくなって指切りを交わす。




茂「うっし!!」




そのタイミングで、パッと立ち上がる茂木くん。




『ん?どした?』




茂「そんじゃぁ、おんちゃん送ってくるわ!」




お「え、帰るの?!」




茂「明日も朝から塾だろ?

  良い子は帰って寝ないとな!」




お「お泊まりしたい!」




茂「だめー」




お「朝ここから塾行く」




茂「むりー」




お「どうしても?」




お父さんと子供みたいなやり取り。




「受験終わったらに泊まりにおいで?」




お「ゆうちゃんがそう言うなら、」




茂「というわけで!

  また戻ってくる時連絡するわ」




『お、おう。悪いな』




茂「あ、ゆうちゃん。」




「?なぁに?」




茂「それまで岡田ンチで待っててもらったり?」




「え、私は構わないけど、」




『え、あ、でも、』




茂「はい、決まり。

  じゃ、帰るぞー」




何だか突然に話は動いて。




私は茂木くんが戻ってくるまで、

なぁくんと彼の家で過ごすことになる。




ちょっと予想外の出来事に

私もなぁくんもちょっとあたふた。




それでも、

多分こんな機会はもうないかもしれない。




そう思って、

私は茂木くんの誘導に乗ってみることにした。











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