1926年に畑賀は大水害に見舞われています。今回の水害は、史料と比べると、それ以上の史上最悪です。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%AD%A315%E5%B9%B49%E6%9C%88%E5%BA%83%E5%B3%B6%E8%B1%AA%E9%9B%A8%E7%81%BD%E5%AE%B3

 

当時、地元近隣から2万5千人、陸軍第五師団工兵隊600人を動員、1週間で仮復旧させていましたが、次の雨で再びやられ、その後、国の補助、県の直轄工事として復旧作業、1930年に全面復旧に至っています。

 

前回は秋雨、今回は梅雨の違いはありますが、パターンとしては全くと言えるほどに同じ、事実、破壊された箇所も同じです。

 

今回、住民の備えがあり、避難は的確、行方不明者2名と、死傷者数が少なくて済んだのは幸いでしたが、特に水路の被害が史上最悪。このまま秋雨、台風シーズンを迎えると、二次被害になってしまいます。畑賀の水害は、はじめの大雨、土石流による上流破壊(まだ小規模な被害)、次の雨(小雨でも)で下流破壊(大規模な被害)のパターン(時限爆弾型の水害)、現在、第一段階であり、この段階でどこまで上流域を復旧させるかによって、次の被害規模が決まります。

 

陸軍の要所、陸軍病院(現在の安芸市民病院)が置かれていたことから、しっかり記録があり、前回、二次被害をできるだけ小さくするために大動員をかけたことがわかっています。昔の人はよく知っていたんです。

 

今回、前回よりも上流域の被害が大きく、1日でも早く仮復旧させないと、前回よりも下流域が酷いことになりますが、手つかずの状態です。Wikipediaの記事の写真、特急脱線現場も今回はこれ以上に大きく破壊されることになります。幸いにして今回は既に運休状態、列車事故にはなりませんが、500m以上に及ぶ大規模な線路崩落となり、また山陽本線の復旧を遅らせてしまうことになります。

 

重機も技術者もおよそ投入されていません。前回よりも被害規模が大きいのに、投入されている技術者も資材も、前回の1/50にも到っておらず、長年の「理科離れ」による科学者、技術者不足により「既に自滅している日本」を痛感しています。私も含め、地元の科学者、技術者は総動員されていますが、数が絶対的に足らない、しかも皆、高齢で、体力の限界。どうしようもありません。

 

畑賀の水害復旧はどこも難工事となるため、素人の手には負えません。つまり、ひとつ間違えると命に関わることになるため、ボランティアの方々に作業参加をお願いすることは絶対にできません。分野を超えた多くのプロの科学者、技術者、それもトップレベルの力を集める必要があります。前回、第一に日本トップレベルの技術者集団、陸軍第五師団工兵隊600人を投入した理由はそこにあります。今回も約500人の技術者の投入が必要ですが、現状、わずか10人。この人数でどうやって次の出水と闘えと・・・

 

広島原爆、その復興が落ち着いて以来、50年以上に渡り、水害対策強化を行政に陳情し続けていた地域ですが、何だかんだと理由を付けられ、聞き入れられることなく今日まで来てしまった結果の再度の「想定通りの」大水害。何としても無念。ズバリ、昔からの地域要望、時間雨量70mm設計に改修されていれば、今回、被害はなかった。「50年前にはわかっていたことをしていなかったために」というのが何としても我慢ならないところ。明確に「人災」です。

 

文系大国日本の中で、理系の人の立場は弱く、経済的にも恵まれません。しかし、国民の生命、財産を災害から直接的に護るのは理系、科学者と技術者です。そして最悪の事態となり、このまま放置していたらどうなるのかを推定できるのも科学者、技術者ですが、事、ここに至ってもその声は届きません。

 

行政はよく動いています。しかしそれはそれぞれの縦割りの中でであって、横のつながりがなく、「空回り」しています。行政の問題をここに至って批判しても、どうしようもありません。冷酷・客観的な事実として、あちこち絶望的に難しい工事(ほとんどのところで、作業員が命がけの工事になる)のため、施工業者が集まらない、さらに県外からの応援にも業者登録もろもろの「政治的問題」、また、保険金の支払いが滞っており、肝腎の民有地の復旧ができないことから、もはや、次の雨には間に合いません。

 

このため私たちが今、やっていること。それは次の出水による被害地域と犠牲者数の推定、被害総額、その復旧までにかかる期間とそれによるさらなる経済的損失の推定です。

 

犠牲者数は最悪で10名以下。恐らくはゼロとすることができます。そこは「現代」の強みですが、それだけ。物的被害が大きすぎます。最悪の出水となった場合、その被害総額は少なくとも4000億円。この地は放棄するしかなくなり、地図から消えます。前回の二回目の出水規模で、被害総額は850億円。完全復旧までに6年、間接的な経済損失(得べかりし)は、この出水によるものだけで、少なくとも22兆円になります。

 

もはや「駄目になることを前提」としての次善策を考えていますが、これほどに辛い作業はありません。私たちも生き残ることは生き残りますが、後の見込みがありません。こうなるともう、やれるだけのことをやる、それでも駄目ならば玉砕です。

 

災害は、「起きてからが大変なもの」であり、もはや消極的に逃げ回るしかありません。災害は、「先手必勝の備えが全て」なのです。