「それで、あれからまた見たか? 例の夢。」

「今のところ、春と夏に見た2回だけだ。」

「何? 何の話だよ。俺は何も聞いてないぞ。」

3人で飲みながら、私の夢の話になった。

 

私は商社に勤める30歳。

飲み友達は職場が同じ友人で3人とも、まだ独身。

 

春、私は夢を見た。はっきりと覚えている。

私が居る場所には1畳ほどの大きな窓がある。

そして私はその窓から見える景色が

とてもいい所のように思えてならない。

ずっと眺めていると、

だんだん、行きたい 行きたくてたまらなくなってくる。

春の時は窓の外は綺麗な紫や薄紫色・・・

パープルとでもいう色かもしれない。

夏の夢は綺麗な黄色…濃い黄色。

多分花だと思う・・・きっと花だ。

一つ一つの花は見えないが春も夏もその花らしきものは風に揺れている。

ゆ~らゆ~らと風に任せて揺れている。

行きたい衝動に駆られて 遂に私は行動を起こす。

外に出ようと窓枠に足をかけるのだが

大体いつもそこで夢は終わっている。

 

それをまた今日も友達に話すと、二人とも同じことを言う。

「行っちゃぁ~ダメだぞ、絶対だぞ!!」

「帰って来れないぞ、あっちの世界へ行っちゃうぞ。」

そうなのかもしれない・・と思うけれど、

行きたいと思う気持ちは抑えきれないところまで来ていた。

飲みながら、私の気持ちを一生懸命話しても

そんなのはそっち除けって感じで

「ダメだ。」「絶対ダメだ。」の一点張り。

 

9月も半ばに入ったころ・・・またあの夢を見た。

カラフルでたくさんの花だろうものが今回も心地よさそうにゆらゆらと

吹く風に任せて気持ちよさそうに揺れている。

綺麗だなぁ・・・その光景の中に入っていきたい、

入らなければならないような感情がわいてくる。

そうして、窓枠に足をかけて体を乗り出したとたん、

今回も目が覚めてしまった。

行けなかった、どうしたら窓の外に行けるのか・・・

まだ今のところ窓の外の世界には行けないということかもしれない。

 

12月に入ったころ、例の友人から「忘年会をやろう。」とお誘いがかかった。

場所はいつもの仲間3人のお気に入りの居酒屋。

 

食べて飲んで3人ともに気持ちよく酔ってきて・・・

そうなると、またいつもの窓のことになり

「また見たか?」

「ここにいるってことは今回も窓から出なかったことだよね。」

私の心の中では窓の外が嫌な所だと思われていることに、

苛立ちを感じながらも

「見た、9月にね。今回も全く同じさ。

ただ外の景色がカラフルだったってことだ。」

「カラフルって?」

「なに? カラフル? いろんな色ってこと?」

「そうなんだ。赤やオレンジ、白やピンクや・・・

とにかくいろんな色が揺れているって感じかなぁ。」

「花だった? なんの花だった?」

「それが今回も分からん。 花だと思うってことだけ。」

友達は怖い所かもしれないと言うが、

私の心は窓の外に出たい気持ちが強い。

凄く出たい、私の未来が待っているかもしれない・・・

そんな感情を話すわけにもいかず・・・

まったく訳の分からない夢を話している自分が女々しくも感じながら

「はい!!この話はもう終わり。」と私から切り出した。

友達は「でも、夢を見たら必ず話してくれ。気になってしょうがないから。」

 

店を出て、吹く風の冷たさを感じながら3人で歩いていると

師走の雑踏の中にあれっ、と思う光景があった。

 

                              続きます