スクランブル交差点の先に『あれぇ~』と思う光景を見つけ、ずっと目で追っていくと1人の女性がいた。

彼女のスカートだ。

歩く風でゆらゆらと揺れている。

たくさんの花が描かれていて、閑散とした冬の雑踏の中で安らぎを覚えた。

スカートなど興味もなかった私が、前を歩いている彼女のスカートから目が離せなくなっていた。

その時、友達が「もう一軒行くか?」とお誘いがあった。

いつもだったら、二つ返事で乗るところだが、断った。

友達はびっくりして「どうしたんだ? 飲み足りないだろう?」

と言われたが「すまん、今日は早く帰りたいんだ。」と断り

その間に雑踏に消えてしまったスカートの彼女を探した。

もう一度、あのスカートを見たい。

スクランブル交差点を右や左に行ってみたが見つからなかった。

ちょっと目を離しただけなのに、どこに行ってしまったんだろう・・・

大きな交差点だから、どちらに進むか分からない。

見つかるわけがない、諦めるしかないな・・・

飲みに行けばよかった・・・なんていろいろ思いながら

時計を見ると、ちょうどいい電車がある・・・帰ろう。

駅までの道を、すっかり酔いからさめてしまった私は

残業帰りの疲れ切った時の私のように、とぼとぼと歩いた。

当然、電車に乗り遅れ 駅のベンチで時間待ちをすることになった。

二次会にも行かず、電車にも乗り遅れてしまい

花のスカートを追ったせいでこんなことにと呆然自失状態。

仕方なく前を行き来する電車を目で追っていると

出発した電車の風が気持ちよく吹いてきた。

その時、前にいた女性のスカートがゆらゆらっと揺れた。

「あっ!!」彼女だ、スカートの彼女だ。

薄いベージュのスカートに、たくさんの綺麗な花が描かれている。

目が離せない、じっとスカートに見入ってしまった。

その時、彼女がくるりっと振り返って私のベンチの方にやって来た。

なんと、あれだけ探したスカートの彼女が 今、私の方に歩いてきている。

「空いていますか?」と声をかけられた。

「はい、どうぞ。」と言うのが精一杯。

あの探し求めたスカートが私の目の前を通って横に来た。

なんてことだ・・・なんて素晴らしい偶然だ。

飲みに行かなくてよかった、電車に乗り遅れてよかった。

彼女が座ったとたん、またスカートを見てしまった。

変人だと思われないか・・・心配だ。

「乗り遅れちゃって。」と照れた顔で話してきた。

その時初めて彼女の顔を見た。

そよ風の似合う、そして爽やかで清楚な顔立ち、

ベージュの花のスカートがよく似合う・・・・可愛い。

30年間でこんな感情は初めてだ。

「私も遅れてしまって・・時間待ちなんですよ。」

「まぁ~同じですね。」と微笑んで答えてくれた。

私はまたスカートに目を移した時、

「冬に花柄っておかしいでしょう?

なのに今日はこのスカートをどうしても穿きたくて。

変だと思われても穿きたくて。」と初対面の私に話してくれた。

「実はスクランブル交差点であなたを見たんですよ。

たくさんの花のスカートが目に飛び込んできて!」

「本当ですか、それっていい意味で・・・ですか、

この季節に花か?って意味ですか?」

「・・・私にもよく分からないけれど、でも探したんですよ、交差点で見失ってしまって、

とにかくもう一度そのスカートを見たくて。」

「えっ!どうして?」

「分からないけれど・・・なぜだか分からないけど・・・

あなたが今日そのスカートを穿きたかったことと同じかもしれないですね。

訳分からないこと言ってますよね。ごめんなさい。」

「いえ、私もよく分からないけれど、なんとなく分かるような気もしますよ・・・なぜか…。」

お互い顔を見て微笑んだ。

「でもこうして会えて、お話しができて、なんだかよかったと思いませんか?」

「思います、偶然が偶然を呼んで・・・電車もお互い遅れちゃって。」

お互い今度は納得して微笑んだ。

ラインと電話番号を交換して、彼女が乗った電車を見送った。

奇跡のような出会い。

いい一日だ、きっと今までで一番いい師走だ。

年末で残業が続く毎日や職場での退屈な忘年会ばかりの師走が

『花』で繋がった素敵な師走になった。

 

その後、彼女とは年が明けてからも、

頻繁に会い素敵なお付き合いが続いている。

 

                                    続きます