日比社会保障協定について | 米国公認会計士のフィリピン税金や法律のあれこれ
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米国公認会計士のフィリピン税金や法律のあれこれ

フィリピンのビジネスや法律・税務・会計の最新記事や時事ニュースを配信していきます。

こんにちは、米国公認会計士の橋本です。

 

私は一応、アメリカの公認会計士ということで私自身を認知してくださる方が大半ですが、行う業務の範囲は多岐に渡ります。

 

フィリピンやアメリカなどの海外での法人設立、会計税務、税務調査対策、給与計算、社会保険手続き、労働争議への対応、土地の売却にかかる交渉や手続き、銀行口座の開設や閉鎖、会社法や企業関連法に関する相談対応、M&Aなどなど細かい仕事も上げればきりがありません。

 

その中でも社会保険関係に関する情報はあまり知られていないようですのでこの場をお借りして少しだけご紹介させていただきます。

海外で就労する皆さんが知っているようで知らない国際間社会保険協定の話がメインテーマです。

 

 日本は現在、20か国と社会保障協定が発効しています。

 

 日本で働く場合は当然日本の社会保険に加入する必要がありますが、一方で日本人が海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入する必要があり、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が発生します。また、日本や海外の年金を受けとるためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、相手国で負担した年金保険料が自国の年金受給の算定期間に組み入れられないことがあります。 すなわち労働者が会社の命令で海外転勤を命じられたとき、派遣先の国と日本で社会保険を2重に支払う必要があったり、相手国で支払った社会保険料が自国の年金の納付期間に算定されないという問題が生じます。この問題を解決するために、社会保険料の2重払いの回避と年金等の算定期間について相手国との間で一定のルール作りをしようというのが社会保障協定の趣旨です。

 

 すなわち、

 

 社会保障協定は、

  • 「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止
  • 年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする(年金加入期間の通算

ために締結しています。

 

  

 原則として、

 協定により原則として就労する国の社会保障制度のみに加入することになります。つまり、日本の事業主により協定相手国の支店などに派遣された場合や現地の企業で採用された場合には、協定相手国の社会保障制度のみに加入することになります。

 

 特例措置(社会保障協定締結国への派遣)として、

 事業主により協定相手国へ5年を超えない見込みで派遣される場合には、協定の例外規定が適用されます。すなわち、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、協定相手国の社会保障制度の加入が免除されます。(※協定によっては派遣期間の見込みにかかわらず、派遣開始日から5年間は日本の社会保障制度のみに加入し協定相手国の社会保障制度の加入が免除されます。)

 

 日本の事業主による派遣:

  ①5年以内と見込まれる一時派遣の場合:日本の社会保障制度に加入

  ②予見できない事情により5年を超える場合: a)原則:相手国の社会保障制度に加入、b)例外:協定相手国との間で合意が得られた場合:日本の社会保障制度に加入

  ③当初より5年を超えると見込まれる派遣:相手国の社会保障制度に加入

 

 上記が派遣された日本人が日本人がどちらの社会保障制度に加入するかということに関する規定ですが、さらにフィリピンにおいては一時派遣期間に関する延長の特例措置もあります。

 

  フィリピンの一時派遣期間の延長の特例

  予見できない事情により5年を超えて派遣期間が延長される場合については、申請に基づき、両国で個別に判断の上合意した場合に3年までは派遣先の年金制度が引き続き免除されます。
また、派遣期間が8年を超える場合でも、申請に基づき、両国で個別に判断の上合意した場合に日本の年金制度に継続して加入することができます。

 

 

フィリピン年金制度の加入期間の日本の年金制度の加入期間への通算

日本の年金保険期間のみでは日本の受給資格要件を満たさない場合に、重複しない限りにおいて、フィリピンの年金保険期間を日本の年金保険期間に算入することができます。
通算して年金の受給資格要件を満たせば、日本の年金保険期間に応じた年金が支給されます。

 

 労災保険について

 フィリピンの労働災害に起因する給付(労災保険制度)は、フィリピンの法令のもとで年金制度と一体的に運用されています。そのため、日本からフィリピンに一時派遣され、日本の制度のみが適用される場合は、日本及びフィリピンのいずれの国においても強制的な労災保険が適用されない状態となります。

 

 フィリピンの社会保険はSSS、Philhealth,PagIbigの3種類がありますが、社会保障協定の対象となるのはSSSのみとなります。PhilhealthやPag-Ibigにはこの協定が適用されませんので注意が必要です。

 

 海外に派遣される日本人の労働者の方は、税金のことだけでなく社会保険に関しても不利益を被らないように行く前からきちんと調べておくことが望ましいかと思います。ただし、原則は派遣先の国での社会保険に加入することとなっていますので、派遣先の会社の総務部の人は加入させて来ようとするでしょうから、2重払いを回避するには派遣された人や派遣元の会社がきちんと調べておいて協定関する手続きを日本で済ませておくようにしましょう。

 

 今日は新たな論点で海外に派遣される方の問題を取り上げてみました。

 

 今日はこの辺で失礼いたします。

 

 ありがとうございました。