昨年の2月だったか、掘り出し物を探しにキンバリー藤枝店に行って、EPOSの懐中時計を買ってしまったときのことです。
ジャンク品を集めて入れてあるかごの中に、ロードマチックが入っているのを見つけてしまいました。
ロードマチックというのは、1968年から発売されたセイコーの腕時計で、当時、GS、KSに次ぐ位置づけであったと聞いております。サラリーマンのご褒美時計として大いに売れました。
今でこそ高級時計は機械式が当たり前ですが、1970年代はクォーツショックという言葉に示されるように、機械式からクォーツ式への転換が進んだ時代でした。世界中の大手腕時計ブランドが大打撃を受けるなど、機械式時計は、一時、絶滅の危機に立たされるほどだったのです
そんな機械式腕時計全盛期の最後を飾ったセイコーのムーブメントは56系と呼ばれ、とても良い性能を誇っていて、GSやKS、そしてロードマチック(LM)に使われていたのです。
この個体は56系で、5605とありますので、5601が初代で、その後5605、5606と続きますから、LMの二代目のムーブメントを積んでいます。
1970年生まれの私と同年代の時計といっていいでしょう。そんな個体がジャンクコーナーで無造作に置かれているのはかわいそうでした。見つけちゃったからには、なんとかしてあげたいな。
よく見なくても傷だらけ。前のオーナーがガンガン使い倒した果てに、何らかの事情で手放され、巡り巡ってここに流れ着いたといった風情です。
まあ、あちこちに見受けられる打痕がひどいこと。この有様では中の機械も無事かどうか不安です。
56系は素晴らしい時計なのですが、玉数が多く、市場にあふれているので、極めて安価に入手可能な時計です。56系好きのブロガーさんの記事を読むと、状態が良いものもあれば中が錆びていたりと、直そうとすると高くついてしまうものもあるそうです。
果たして直す価値があるかどうか微妙です。
でも、もし復活したら、文字盤が素敵なオシャレな時計として使えそうです。たまに動かすと精度も良く、機械は無事だという方に賭けても良さそう。
ここは四代目に相談するべきでしょう。
いろいろ逡巡があったものの、先週の日曜日、私はついに、村松時計店にこの個体を持ち込むと、四代目に事情を話して修理を依頼しました。一年近くも待たせてしまって、ごめんね。
さすがは国産アンティークにも詳しい四代目。ロードマチックを直したいという私の気持ちを察してくれて、すぐにベルトの候補を提案してくれました。
中の機械にも詳しく、例えば56KSと同じ部品が使われているんですよねー、とか、さりげなく知識の一片を披露してくれました。
さて、私と縁のあったロードマチックは、無事に復活を果たすのでしょうか。こうご期待です。
それにしても四代目、デイトナがよくお似合いで。三針好きの私ですが、影響されそうです。