このバッタはカワラバッタ(Eusphingonotus japonicus)と言うそうです。アスファルト舗装の道路で同僚が発見しました。
全身が灰色で、小石の目立つアスファルトの上では絶妙な保護色になり、ちょっと目を離すと、どこにいるのか分からなくなるくらいでした。
なんと目まで灰色をしているという徹底ぶり。翅には小石を真似たような模様があって、ジッとしていれば見つからないレベルの擬態の完成度です。
ところが、動かなければよいものを、同僚が近づくたびに舞い上がるので、すぐに見つかっていました。
飛んで遠くに逃げる方法もあるのに、ほんの数メートル飛んだかと思うと、また、アスファルトの上に着地して静止します。
同僚がカワラバッタを見失う。でも、また飛び立って近くに降りるのですぐに見つかる。この繰り返しで、ずっと同僚の被写体になっていました。
絶対に道端の草むらに逃げ込んだりせず、ひたすら自分の擬態を信じ、小石の目立つ灰色の環境に身を置こうとする姿は、実に健気でした。
しかし、この習性があるがために、いつまでもアスファルト道路から離れることができないのは哀れでありました。
↑周辺の小石の色に翅の濃淡を合わせている気もする
昨日、静岡県には大雨が降って、普段は河原砂漠になっている大井川にもいっぱい濁流が流れました。
だからきっと大井川の河原から、這う這うの体で逃げてきた、住処を追われた哀れなバッタに違いありません。
生物教師ということで、私は同僚からこのバッタのことを聞かれ、習性と体色から考えて、きっと河原にの環境に適応したバッタだと推測することはできたから、なんとなく、「カワラバッタ」、という名前が頭に浮かびました。けれどもそんなの適当なので、残念ながら正直に、分からないと答えました。
後で同僚から写真をもらって、調べてみて、名前がカワラバッタだったので、あのとき、「カワラバッタ」、と、答えておけば良かったなと、残念に思いました。