酵素反応の特徴 | はし3の独り言

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腕時計に自転車、高校理科の話題が多いブログです。日常で印象に残った出来事も取り上げます。時間があって、気が向いた時しか更新できていませんが、ご愛顧よろしくお願いします。

 代謝を学ぶ上で、酵素が特定の基質に作用する触媒であるとということの他にも、しっかりイメージしておかないといけない点があります。

 

 それは、酵素の触媒する化学反応の規模が小さいことです。代謝は小さな反応がいくつも組み合わさり、連続して進行して起きているのです。

 

 反応が小さく刻まれることで、それだけ多くの酵素が関わり、また様々な中間産物が生じます。活性化エネルギーも小さくて済むし、吸収または放出されるエネルギーも少しずつになります。

 

 次の図は、分子中に含まれる化学エネルギーを位置エネルギーに例えて表現した図になります。高校生がイメージしやすいように建物は校舎っぽくしました。

 

 

 例えばブドウ糖が燃焼して水と二酸化炭素に分解する反応は発熱反応であるにもかかわらず、勝手に始まったりしません。反応開始に必要な活性化エネルギーが大きいためです。ライターの火であぶり続けるくらいしないと起きないです。

 

 

 ただし、一度反応が始まると分子中の結合に含まれていたエネルギーが一気に解放されます。この時に放出されたエネルギーは次の燃焼を始める活性化エネルギーに使われるので、水をかけたりしてエネルギーを取り除かない限り、全てのブドウ糖が燃え尽きて水と二酸化炭素に分解するまで反応が続きます。燃焼と言う反応はとても激しく、取り出されるエネルギーをATPに蓄えるなんてことはできないですし、その前に細胞自体がもちません。

 

 

 これが酵素反応になると、体温くらいのエネルギーがあるだけで反応が始まります。活性化エネルギーが小さいのです。分解も完全には進むことなく、ちょっと小さな中間産物の分子ができて、その酵素の触媒する反応は終わりです。取り出されるエネルギーも燃焼に比べれば少なく、細胞の中でこの反応が起きても大丈夫です。

 

 

 

 同じ、ブドウ糖が水と二酸化炭素に分解する反応でも、酵素反応はたくさんの酵素の働きで段階的に起きるため、燃焼よりはるかに穏やかな条件下でゆっくり反応が進みます。ATPを合成して何か別の反応に使うエネルギーを蓄えることもできます。

 

 また、酵素の働きを調節して反応の進み具合を制御することも可能ですし、この図には描いてありませんが、中間産物に他の酵素が働いて、まったく別の物質に変えて貯蔵したりできます。

 

 

 酵素の重要な性質として、基質特異性の他に反応特異性と言うものがあります。一つの酵素が一つの化学反応のみを触媒する性質です。同じ基質でも、働く酵素が違って入れば、生成物の種類も変わってきます。

 

 酵素にこの性質があるお陰で、細胞の中で、いろんな物質がごちゃ混ぜになっている状況でも、複雑な反応経路を構築することができるのです。

 

 放送大学の先生の表現を借りれば、酵素に基質特異性と反応特異性があることによって、まるで酵素によって交通整理が行われているかのように細胞内の代謝がコントロールされているのだそうです。

 

 以上のことは呼吸や光合成のような複雑な反応を学ぶ前に理解しておく内容です。