Last Angel No.124



Shino said ~



小さな子供みたいに眠る君の横顔を

私は一人

息を潜めて見ていた。





迷いがなかったと言ったら嘘になる。

怖くなかったと言ったら嘘になる。



震えてしまう手を、
君はぎゅっと握ってくれました。

震えてしまう声は、
吐息と一緒に
唇で塞いでくれました。

震えてしまう身体は
優しくそっと
抱きしめてくれました。



君と初めて出逢った夜を
今でもちゃんと覚えているよ


君の姿を見つけた日は
ただそれだけなのに
たまらなく嬉しくて、

その日1日
笑顔でいられました。


月を見上げながら
君を想ったら
胸の奥が温かくなって

いつの間にか
恋をしている自分に気がつきました。


「おはよう」「はい、おはよう」

「元気?」「元気じゃなかったら居ないでしょうよ? ここに。今。」

「またね」「またな」

君と交わした何気ない会話も
私にとっては特別でした。


「大切な人が居る」
その事を知ってしまった日の夜は
私と一緒に月が泣いてくれました。


ほっといて欲しいのに
構わないで欲しいのに、
どれだけ冷たくしても
平気な顔をして連絡をしてくる君に
腹が立つ日もありました。


だからあの日、

君に何を言われても
信じてあげる事が出来なかった私は、

繋いだ手と、キスと涙と一緒に

この想いに、蓋をしました。


それなのに、
久しぶりに聞いた君の声は


和「…………しぃ?」

S「うん」

和「しぃ、、?」

S「どうしたの?」

和「ごめん、、、」

S「ん?」



受話器の向こうで震えていて、



和『なら、頂戴よ』


『おまえが、欲しい……。』



そう言って
私を見つめる
君の瞳は潤んでいました。



見たくない物が見え過ぎて
聞きたくない言葉が聞こえ過ぎて
何が本当で何が嘘なのか
分からなくなっていた。

「大丈夫」
その言葉だけで、自分を守っていたら

いつの間にか
目に見えないものを
触れる事が出来ないものを

信じる事が出来なくなってた。



それでも君は

伝えようとしてくれる。



たとえ目に見えないものだとしても
触れる事が出来ないものだとしても


変わらないものが
ここには確かにあるんだと


君は君のすべてで
私に伝えようとしてくれる。




叶わない夢だと思っていたから。

届くことのない想いだと思っていたから。


君の言うように本当は夢なのだとしたら……。

目が覚めたら
君の姿が消えてしまっていたとしたら……。



    S『夢だったらどうしよう……。』



そう思ったら
急に怖くなった。


右手でそっと
君の髪を撫でてみたら



和「ンン……。」



そう言いながら
寝返りを打つから
私は慌てて枕に顔を埋め
眠っている ふり をした。



    S『フフッ……、 夢じゃない……。 』



君と二人、並んで見上げた夜空は
どこか懐かしくって、でも少し
切なかった。


ふと、隣に居る君の横顔を見たら
愛しくてたまらなくなって


涙が溢れて来た。



私が泣いたら心配するから
悲しそうな目をして君は謝るから

だから

君に気づかれないように
平静を装ってお風呂場へ
逃げた。



『どうしたら良かったのかな…?』

『どうすれば良かったのかな…?』

『泣いてしまえば良かったのかな?』



『初めてなんて嫌じゃなかったかな…?」

『面倒じゃなかったかな…?』



経験なんてないから、分からない。



S『ごめんね……。分からないの……。』



君の背中に謝ったところで
なんの意味もなくて……。



S「フゥ………。外の空気でも吸おうかな……?」



ゆっくりと起き上がり
そっと身体を横へずらしたら

不意に腕を掴まれた。





和「…どこ…いくのよ?」




~ 続 ~