『 たった 一つ  

   最後の 一つ

 そんな 愛 がある 』


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窓際に立つ

白いシーツにくるまった

片方の羽を無くした 天使 を

月の光が優しく照らした。



その姿があまりに綺麗で

俺は

見とれてしまった。



S「見つけた…。」



天使はそう言って振り返り

俺に優しく

微笑みかけた。




S「にの、来て」



和「………。」



S「にの?」



和「あっ、ん…? どうした…?」




俺は投げ捨ててあった
バスローブを手繰り寄せた。



S「早く来て!」

和「うふふ、なぁに?」



ベッドの縁に座ってバスローブを羽織り
立ち上がりながら、その紐を縛った



和「なによ? 何かあった? 笑」



そう言いながら

あいつの左側に立つ。



S「2つ並んでるの」

和「並んでるって、月が2つにでもなった?」

S「そんなわけないでしょ…?」

和「ならなに? 笑」

S「あそこ」

和「何処よ? 笑」

S「あ、そ、こ!」

和「ちょっと待ちなさいって…。」



俺はベランダの窓を開けた 。



和「ほら、もう一度 指差してみなさいな。
何処よ?」



あいつの右手を掴み
その指差す方向を辿ってゆく




和「フフッ…。あれか」





あいつの指差す方向に

寄り添うように光り輝く

2つの星が見えた。




S「2つ並んでるよ?」

和「並んでる、ね?」

S「仲良しだね?」

和「フフッ、仲良し、だね?」

S「お願いごとしたら、叶うかもよ?」

和「俺はないな。もう。」

S「ん?」

和「叶ったから。すでに。」

S「耳、赤くなってない?」

和「うるさいよ 笑」



あいつの細い肩を抱き寄せる。



和「夢じゃないよな?」

S「夢かもよ?」

和「嘘でしょ? 笑」

「なら、覚めないうちに……、」



そう言いながら
あいつを押し倒そうとしたら

腕からするりと逃げ出した。



和「待ちなさい。」

S「待てません」

和「しぃ 早く! 目が覚めちゃうから」

S「嫌です」

和「痛くしないから」

「ほら、この紐を引っ張ればすぐに、」

S「アハハ………、バカ宮……。」



月の光に照らされた

俺の天使は

白いシーツを引きずりながら

風呂場と言う名の楽園へ

飛んでいった。



和「フフッ…。 バカしぃ。」



一人残された俺は
ベランダへ出て
2つ並んだ星を見つめた。



バスローブ一枚だけの身体を
心地いい夜風 が通りすぎた。




和「♪~

君の目に映る 全ての悲しみ

その痛み 拭えたら……」



和「君の声が その笑顔が その全てが

僕をいつも僕に返してくれる……。」



小声で歌を歌いながらも



和「そして僕は君のもとに……」

「そしていつも君とともに……。」



あいつの大好きな月を探す。



和「なぁに、焼き餅を焼くんじゃないよ…。」

仕方ないじゃない?
2つ並んじゃったんだから…。」


「大丈夫だって…、あいつは
おまえ が、大好きだからさ…。」



俺を照らす
月明かりが優しすぎて

本当に
夢を見ているんじゃないかと思った。





和「怖い、幸せ過ぎて……。」



「夢なら…。もし、夢を見ているのだとしたら……。」





『私には時間がないの、』

『時間が、ない?』




『ごめんね…。』

『なんで謝るのよ。』





和「大丈夫だよな……?」

「傍に居るって、この手を離さないって、
俺の元に戻って来るって、」





『謝らなきゃならない事でもすんの?』

『本当にごめんなさい…。』





和「そう約束したもんな…?」




俺は

夜空に浮かぶ月と

2つの星に

願いを込めた。





あいつの言った

「ごめんなさい」  その言葉の意味 ……。



その意味が解るまでに

そんなに時間は


掛からなかった。





~ 続 ~