今まで戦うべき相手なのは
ダンナの職場だと思っていた。
それしかない。
まだこの頃、そう思っていた。

ある日電話があった。
労働基準監督署から。


「御主人の事故のことで捜査しています。
遅くなり申し訳ありません。
奥様のお気持ちをお聞かせ頂きたい。」

日にちの約束をしていた当日の午前
登録していないところからの着信がまたあった。
下3桁は110
警察署だ。


言われた事はほぼ労基署と同じ。
奥様のお気持ちを以下同文だ。
今日労基署に呼ばれている旨を伝えたら
「あ、じゃあ私も同席させてもらいます。」
とのこと。
刑事課の刑事さんも立ち会うことになった。


ヒヤリングの相手
労基署の人2人。
刑事さんが1人。

意外だったのは落ちた要因。
今迄、私達親族が考えていた原因は
彼の未熟さ
安全帯が未装備だった為
うっかりからと認識していた。
でも違ったのだ。


労基署の見解。

1.違法の足場である事

2.違法の足場に人を立ち入らせてはならな   
  い事

3.止む無く立ち入る場合、
 現場責任者(足場を組んだ者)が立ち入る事

4.上記、現場責任者が立ち入れず他のものが立ち入る場合、現場責任者が立会い、監督黙認の元、作業をさせる事。


といった見解
安全帯云々というレベルでも無かった。
更に
労基署の監督官は付け加えた。

「なんでこんな、落とし穴みたいな意地悪な足場にしていたのか。」

と、不可解さと難色を示す。


前途したかも知れないが
もう一度記しておく。

彼は2階部分、2m80cmのところで一人で作業(片付け)をしていた。
彼の作業する階に組んであった二階の足場、
その一部は無く、穴が空いていた。
薄いプラ板(テレビ等を包むような半透明の発泡スチロールの布状のようなもの)がかけてある部分に気付かず、彼は踏み抜き落下。


このプラ板、
ゴミが下に落ちないように。
との養生の為であった。
しかし
「(ゴミを)落としておいて
後から片付ければ良い」
と、労基署は言う。


更に、

なぜ穴を開けた状態でそのままであったのか。

についてだが
これはダンナの会社に仕事を頼んだ大元の会社(以下T社)があるのだが、
ここが事故前、作業前に現場であるビルが入った店とのやりとりをしている。

1.看板が見えなくなる

2.ランチの時間も営業したい

以上2点
このくだらないワガママの為にダンナは命を落としかけ、植物状態にされてしまった。

T社がすべき正しい判断は

営業を作業中の数日停止する事。
看板が隠れても、足場を組む事。

大まかに言ってこの2点だ。
違法とわかっていながら、依頼主の言い分で請け負ってしまったのだ。


とはいえ、彼の責任もゼロではない。
だが、入社3ヶ月足らずの現場で
先輩2人に片付けを頼まれたら
誰が断れるものか。

それが例え違法の足場でも
安全帯が確保できない状況でも。


彼の両親は彼を責める。
「あいつの責任だ」
全く間違ってはいない。
ただ、がむしゃらに仕事に挑んでいた彼が
「この足場で作業することなんて、誰にも出来ません。違法です。」
なんて
例えわかっていたとしても到底無理な話だ。


労基署としては
最近稀に見る違法な足場。
ということである。

聞いた私もショックを受け
次男のぺーに至っては

「お父さんの、うっかりでかと思って」

と、泣く始末。
ま、どちらにしろ彼は戻らない。
決して元には戻らない事に変わりはない。


後日、また署に呼ばれる事となる。
そして、戦うべ相手はもっと側に潜んでいた。