音楽リレー ~Bach in the Subways 2015より~ | 虹の架け橋のブログ

虹の架け橋のブログ

演劇、ヒーリング、アメリカやタイでの生活など、日々感じたことを綴りたいと思います。






こんにちは。
すっかりご無沙汰してしまいました。

お陰様で、Bach in the Subways 2015 のパフォーマンスも無事に終了しました。
観に来てくださった方々、突然のことに驚きながらも立ち止まってくださった方々、本当にありがとうございました。

「逮捕」されたり、報道陣が詰め掛けたりと、本当に賑やかな一日でした(笑)!


3月21日当日は、相変わらずの猛暑日、快晴!

地下鉄の駅に辿り着くと、私は他の音楽家達に別れを告げ、一人で駅構内を散策し始めました。

まずは、自分のエネルギーを場所に馴染ませるように、実際のパフォーマンスの場所の辺りで遊びます。

すぐに注目されるかと思いきや、行きかう人々は案外無反応(笑)。


しばらくすると、駅構内がものすごい暑さだということに気づき始めました。
したたる汗が、なんと白色!!!
このままでは、パフォーマンスが始まる前にメイクが流れ落ちてしまうと危惧し、当初の計画通り、電車に乗り込みました。

なんと涼しい車内!ちょっとだけほっとしました。
本当に、この時期のタイの暑さは、半端じゃないのです!

後で分かったことですが、その日は、駅構内の冷房設備が壊れていて、修理中だったそうです。
しかも、私たちのパフォーマンスが終わった頃に直ったとのこと・・・(苦笑)。
確かに、その時にも、「あれ?地下鉄の駅の構内って、こんなに暑かったかな?」と思っていたのですが、毎日利用しているわけではないので、はっきりとは分からず・・・。


今回、私は、音楽の精(ミューズ)という役割だったために、始終無言で演技をする、ということになっていました。
そこで、ともかく人目につく地下鉄の駅に着いた瞬間から、他のパフォーマー達とも普通にしゃべることはしない、という約束でした。

電車に乗ったり、駅の構内を歩き回ったり、ベンチに座ったり・・・。
実際の演奏が始まるまでの約2時間ほどを、そうして過ごしていました。

ホームにいると、やってきた電車の中に、一緒に演奏するバリトンの声楽家を発見!
嬉しくなって、急いで同じ車両に乗ろうと駆け足で乗車口に向かいました。
すると、私の後ろでドアが閉まる瞬間に、駅員の女性がなにやらこちらに向かってタイ語で話しかけているようでした。
しかし、ドアはもう閉まってしまい、その女性が、非常電話に向かって歩いていくのが見え、一瞬ドキッ!

私の姿に気づいた彼は、「おぉ~~!こんなところで何やってるの~!」と爆笑!(笑)
もちろん、衣装稽古で私の姿は見ていたし、当日の段取りの打ち合わせもしていたわけですが、突然地下鉄の列車内で、偶然に私と遭遇したことにびっくりしたようでした。

心の中で、「だから、私はしゃべれないのよ~~~!」と叫びつつ、無言のままで遊んでいました。


しばらくして別の駅にいると、駅員さんや警備員の方が近づいてきました。
こればかりは、仕方なく、しゃべらざるをえませんでした。

・・・とは言え、私はタイ語はほとんど話せないし、相手も片言の英語です。
ともかく、今日、駅でパフォーマンスがあることを伝えると、次の電車でパフォーマンスの行われる駅まで行くように言われました。
そして、電車が来るまでの間、その2人は私の横にぴったりと立っていました。

電車に乗る時にも、2人とも一緒に乗り込んで、私の側から離れそうとはしません。
そして、しきりに私に話しかけてきます。
私は、役を解き放つことはしたくなかったので、正直言って話しかけられて困っていたのですが、きっとその2人は、居心地が悪かったのだろうと思っていました。
だから、他の乗客にはなるべく気づかれないように、必要最低限の返事はしていました。

駅に着くと、階段を上る時にも、私を真ん中にして、ともかく異常な近さで歩いているのです。
何とも物々しい雰囲気に、「あれ、これって『逮捕』されてる?!?!」と、その時になって気づきました(笑)!

まだ他のパフォーマー達と約束した集合時間にはなっていなかったし、本当は改札階には行きたくなかったのですが、ともかく連れて行かれるがままに、仲間のいるところまで行こうとしました。

すると、今回の演出家であり、パフォーマーの一人でもあるテディが、私と警備員の姿を見つけるや否や、笑顔で走ってきて、「スタッフ」と書かれたタグを私の首にかけてくれました!
鬼ごっこで、そのカードさえあれば「セーフ」になる、特別なカードをもらったようでした(笑)。
そこで、ようやくその2人も納得したようで、それぞれの持ち場に戻っていかれました。

後から聞いた話では、「変な女性が地下鉄内をあちらこちら歩き回っている!色々な駅に出没しているようだ!!!早く『捕獲』しないと!!!」と大騒ぎになっていたようで、他のパフォーマーたちは、内心大笑いだったようです。
もちろん、演奏許可はちゃんとあったのですが、警備員の管轄が違うと、その日のパフォーマンスのことを知らなかったようでした。

そんな大事になっていたとは露知らず・・・私は一人、演技に集中していたのでした!!!

この「逮捕劇」には、私も同僚達も大笑いでしたが、確かに、セキュリティにしてみたら、「いつもと違うものが現れた」と言うことは、大変な脅威だったのかもしれません(苦笑)。

ニューヨークやシカゴ、ロンドンなどでは、地下鉄でミュージシャンが演奏したり歌ったりしているのは日常の光景ですが、タイの地下鉄でパフォーマンスが行われたのは、今回が史上初だと言うことです。
それで、地下鉄の利用者がどんな反応を示すかも分からないことから、念のためにその日は警備員を増やして対応してくださったようでした。


さて、いざ演奏が始まると、それはそれは楽しいものでした。
だって、普通に通行人を装っていた人たちが集まって管弦楽団になり、券売機の前に並んでいた人達が急に歌いだすのですから!

何も知らずにいた周りのお客さんたちが飛び上がって驚く様子なども、何とも微笑ましいものがありました。

タイの地下鉄初の試みと言うことで、たくさんの報道陣が詰め掛け、後で聞いたところによると、映画の撮影をしている、と思って通り過ぎた方もいらっしゃったようでした。


今回は、それぞれに個人で練習はしていたものの、全体の練習としては非常に限られた時間の中で行われました。
それでも、逆に集中力が高まったのか、色々なことが面白いようにスパスパと決まり、とても良い雰囲気の中での創造作業でした。
器楽専攻の高校生たちも、演技がうまくてびっくりしました!

私も久々に演出家のいるプロジェクトに携わって、やっぱりその面白さも味わうことが出来ました。
その自由さの中で、次々とアイディアが湧いてきました。
それで、結局、衣装、ヘア・メイクも0円で仕上がったのです。(^-^)
ミューズなら、なんか羽らしきものが欲しいなぁ・・・と思いつつも、予算もない。
じゃあどうするか?
じゃあ作ってしまおう!!

と言うことで、木の枝を拾いに行ったら、なんと近くにきれいな色の大きな葉っぱも落ちているではないですか!やっぱり私ってついてる!(^-^)
しめた、とばかりにそれも頂いて、バッハのコーヒー・カンタータ(私たちの演奏した曲)の直筆譜のコピーや毛糸なども使って、さっと羽飾りのようなものを作ってしまいました。

面白くなってきたので、おまけにポシェットも!

演出のテディが、「コーヒーの入ったカップから、楽譜がリボンみたいに出てくると面白いと思うんだけど・・・。」と言いました。

「あ、それいいね!楽しそう!」

はい、じゃあそれも作っちゃいましょう!(^-^)

完全に幼稚園の時に戻っていました。いや、結局のところ、中身はあの時のまま、体だけ大人になったのかもしれませんね~!

当初は、即席で作ったものだったし、終わったらすぐに処分しようと思っていたのですが、使ってみたらやっぱり愛着が湧いてきて、オフィスの壁に吊るして飾ってみました。
美術的な価値は棚に上げるとして、これを見る度に、無から何かを作り出すことが可能だ、ということを思い出させてくれそうです。


実は、私にとって、路上パフォーマンスをするというのは、長い間の目標でした。
しかし、恥ずかしさや照れというだけの理由で、ずっと成し遂げることが出来ないままでした。
これまで、アメリカ各地でも日本でも、堂々と駅で歌ったり演奏したりする人たちを見て、心の底から拍手を送っていました。
同時に、勇気のない自分を情けなくも思っていました。
今回思いがけずその目標を達成することができ、その意味でもとても嬉しいことでした。


前の記事にも書きましたが、この日は世界39カ国、129都市で、演奏が行われました。
それぞれ時差もありますし、演奏の時間もまちまちでしたけれども、私には音楽を通した光のネットワークが地球上をめぐっているような、そんなイメージがありました。
とても素敵なことじゃありませんか?

誰に強制されたわけでもなく、報酬をもらっているわけでもなく、ただやりたいから、参加して、演奏する、自分が天から与えられたギフトを世の中と分かち合う・・・。

私たちのパフォーマンスが全て終わり、一緒に夕食を頂いていた時、何人かの生徒さんたちが、アイフォンで検索して、他の都市の演奏の様子を見せてくれました。
バンコクは日付変更線に近い方の場所にあるので、世界の中でも早いうちに演奏が終わったのですが、なんだか私たちのところからも次々とバトンを手渡している感じがしました。

たった一人の音楽家が始めた活動が、こうして世界をつないでいる・・・私はそのことに胸を打たれ、各地の演奏の写真やビデオを見ながら、同僚のチェロ奏者も涙ぐんでいました。

そして、自分が今生でしている仕事を改めて誇りに感じました。
武器ではなく、楽器で(音楽家にはもちろんそれそれの楽器があり、役者にとっては自分そのものが楽器です)自分の与えられた使命を果たしていけるということは、本当に幸せなことです。

バッハの作曲の意図がどういうものであったかは分かりませんが、ともかく、世の中に光を送り出す、という意識で今回のプロジェクトを行ったことに大きな意味があると感じました。

この場を借りて、このプロジェクトの創始者であるチェロ奏者のデイル・ヘンダーソンさんに心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございます。


さて、次はどんな冒険が待っているのでしょうか。(^-^)
また色々と面白いことを企画していきますので、お楽しみに!


今日も、笑顔いっぱいの一日を過ごしていらっしゃいますように―――――。






あなたの最寄り駅にも、ある日突然出没するかもしれません(笑)!