Twitterで紹介されていた、ドナ・ジャクソン・ナカザワ氏の著書『脳のなかの天使と刺客』。

 

本のそでには、

2010年代初めに、脳には存在しないとされてきた免疫細胞とリンパ管が発見されると、科学界に激震が走った。数百年続く常識がくつがえされたのだ。その影響は大きく、うつ病や不安障害、アルツハイマー病、認知障害などの理解は一変し、新しい観点から、治療法や薬の研究開発も始まっている。(後略)

 

と、書かれています。

ちなみに強迫性障害も例外ではないようですが、脳の免疫細胞、そして、脳のなかの天使と刺客とは、脳脊髄中に存在するグリア細胞の一種であるミクログリアのことです。

 ニューロンを点検し、不要なシナプスを始末するミクログリアは、脳の免疫細胞だという認識が広まりました。ミクログリアはまた、養分を分泌し、健康なニューロンの成長を促し、新品のシナプスを作らせます。

 ところで、体の免疫系が時として暴走し、さまざまな自己免疫疾患を引き起こすのと同様に、ミクログリアが暴走して脳内に病変を引き起こすのではないのかという懸念が持たれました。この懸念は当たっていました。多くの脳関連疾患では、ミクログリアが異常に活性化して必要なシナプスを剪定し、炎症性物質を放出していることが観察されました。ニューロンを育んでいた天使とも言えるミクログリアが、シナプス消滅を担う刺客になったのです。しかも介入がなければその悪行はやむことなく続くのです。(p.341)

関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった、自分自身の一部を攻撃してしまう自己免疫疾患のように、天使であるはずのミクログリアは、脳を破壊する刺客にもなる。

 

また、脳にリンパ管が見つかったことで、

つまり、脳の免疫システムと体の免疫システムとがやり取りしていることがわかったのです。

 このことは、体の炎症を引き起こすものは何であれ、脳の炎症を引き起こすということが導かれます。腸管の感染症を誘因とする著者のギラン=バレー症候群に続く脳の不調のように。自己免疫疾患に脳関連疾患が付随している例は、本文に多数挙げられています。(p.342)

2箇所とも「訳者あとがき」から引用させて頂きましたが、このような文章を読むと、自分が、10代の初めに強迫性障害を発症したとき、腸だとか、関節だとか、体の何処かに炎症を起こしていただろうかと考えてしまいます。

けれど、炎症や病気が体には現れず、脳内だけに現れる私みたいな人もいると書かれています。

それでも、脳内で炎症が起きていたと、なかなか思えないのは、下記のように、脳の炎症と体の炎症に違いがあるからなのでしょう。

(前略)脳に炎症が起こっても赤くなったり、熱くなったり、痛みがあったり、腫れあがったりしない。そうではなく、ミクログリアが,大切な神経の構造に損傷を引き起こす炎症性物質を吐き出したり、シナプスを飲み込んで破壊し、台無しにしたりして、炎症が進むのだ。(p.90)

そして、脳の炎症は、血液脳関門をすり抜けてしまった菌やウイルスによってのみ引き起こされるわけではなかったのです。

たとえミクログリアが体をめぐる白血球のように、脳を保護し、脳を健全に保とうとしていても、ストレスホルモンが過剰に流入してきたり、ウイルスや化学物質、アレルゲン、病原体が入り込んできたりするなど、異常を感知すると、ミクログリアは過剰に反応してしまうことが多々ある。そうすると、近くにあるシナプスを一掃してしまうのだ。(p.69)

やはり、ストレスやトラウマは、ミクログリアの過剰反応の原因にもなるのですね。

 こうした環境因子の一つが慢性のストレス、つまりトラウマである。子供たちが予測不能なストレスに慢性的にさらされ、高いレベルのストレス応答が日常的に引き起こされると、免疫システムは炎症性ストレス物質を大量につくる(そうした物資が引き起こす変化によって、免疫システムは機能を発揮する)。

 炎症性ストレス物質が小児の発達中の体や脳に日常的に放出されると、ストレス応答を統括する遺伝子にも警報が伝わる。すると遺伝子はストレス応答のレベルを高め、ここで適切な介入がなければ、ストレス応答が「闘争・逃走」モードに固定されるようになる。(p.81-82)

ストレスやトラウマは自律神経系のみに変化をもたらすわけではありません。

 ヒートアップしたミクログリアは、脅威が過ぎ去っても、シナプス結合の刈り込みをやめない。ストレス因子や病原体がなくなっても、炎症性の物質を吐き出し続け、シナプスの破壊を続ける。神経の炎症が自己増殖する暴走プロセスとなる。このプロセスは脳における変化とみることができ、それはもとの炎症プロセスの後、何年も続く。幼い頃に脳内のミクログリアの振る舞いに影響を及ぼした何かが、ティーンエイジャーになって不安や行動障害、うつ病、統合失調症として現れるかもしれないし、高齢になってからアルツハイマー病として現れるかもしれない。(P.71-72)

乳幼児期の様々なトラウマが、思春期を迎え強迫性障害の発症に繋がることもありえるということなのでしょう。

 とはいえ、はっきりしていることが一つある。ひとたび患者に役立つ方法がわかったなら、すぐに医療介入しなければならないということだ。ミクログリアが殺し屋に変貌したあとに医療介入がなければ、その人の全生涯にわたって長い影を落とすことがわかっている。

(中略)

 ミクログリアの多種多様な振る舞いを調整する最善の方法を見つけ出すには、私たちはまだ遠く及ばない。(p.301)

やっぱり自分の頭の中でミクログリアが大暴れしていたとはなかなか思えないのですが、激しい強迫症状がようやく治ったときの頭の中は、まるで台風が過ぎ去った後のようでした。

私が、強迫性障害にこだわり続けるのは、皆が的確な治療を受けられるようになり、長く苦しい日々を送らなくてよくなる日を見届けたいから。

  一方、急速に発展するミクログリアについての生物学は神経科学を完全に変えつつあった。そうするなかで新たな疑問が生じた。すなわち、経頭蓋磁気刺激(TMS)はどのようなメカニズムでミクログリアを再起動し、シナプスをむさぼり食うのをやめさせ、逆に脳を助けるように仕向けているのか、である。

 ミクログリアが攻撃を進めるとき、シナプスを刈り取ることがわかっている。そして最新の研究によれば、ミクログリアが炎症の暴走を誘発すると脳内の海馬にある特別なタイプのニューロンを破壊する。このニューロンは通常の状態では高い再生能力を持つ。ミクログリアはこの新生ニューロンが生まれるや否や暗殺し始めるーこれがうつ病や発育中にトラウマを経験した人の海馬が劇的に委縮する理由だと、研究者たちは考えている。

 しかし研究者がミクログリアを落ち着かせると、自然に再生するそれらのニューロンは以前のように定着し始める。  

 では、経頭蓋磁気刺激によるパルスは、正確にはどのようにミクログリアに攻撃を中止させ、健康なニューロンが新しく生まれて脳のシナプスを復元できるようにしているのだろうか?(p.161-162)

最後の問いの答えも明快ではなく、私には上手くまとめることが出来ません。

でも、脳には存在しないとされてきた免疫細胞とリンパ管が発見されたのも、2010年代初め。

まだまだ、常識が覆されるような発見があるようにも思います。

微生物の少ない今日の世界では、私たちの混乱した免疫システムはー認識できる病原体や微生物とのお馴染みのやり取りを行えずーこの空白を満たそうと、馴染みのあるものを探しまわって躍起になっている。そして社会的感情的な脅威とストレスがその目的にかなうのだ、とレイソンは主張する。(p.136)

上記の箇所にもなるほどと思いましたが、新しい治療法が開発されていく一方で、私たちはもう一度、ミクログリアを刺客にもする脅威やストレスについて目を向ける必要があるように思います。

本にも書かれていますが、SNSがストレスとなっている思春期の子供たちもいるでしょう。

また、強迫症状のため、時間を気にしながらも懸命に確認を繰り返しながら続けている仕事も、相当なストレスです。

環境が、誰かと一緒にいることが…。

やっていることだけではなく、やりたいことが出来ないこともストレスになります。

ストレスとは認めたくないこともあるかもしれません。

でも、認めることが最初の一歩。

そうなんだと認めてあげるだけで状況が変わっていく場合もあるでしょう。

また、専門家や信頼できる人への相談が必要な場合もあるでしょう。

 

また、反対に、自分が心地良い、楽しいと感じられる体験や時間を増やしていくのも大切です。

 

抽象的な言葉になってしまいますが、自分自身に関して言えば、本来の自分を生き始めたときに、ミクログリアにも変化が生じたように思えてしまいます。

「脳とミクログリアは、ストレス因子からも、環境のプラスの要因からも、うんと影響を受けるの」。そう言って、私はライラとケイティを安心させる。「だから、ストレス因子を緩和するためにやっていることはすべて、あなたたちの脳にとってもいい影響があるのよ」(p.88)

 「はるのいざない」は、心地良い、楽しいと感じて頂ける場でありたいと願っています。

 

当然ですが、この本のごくごく一部しか紹介出来ません。

 

他の気になる点を簡単ですが、

次の記事、『脳のなかの天使と刺客 追記』に書く予定でいます。

 

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