今回は、
ステファン・W・ポージェス氏が提唱した
『ポリヴェーガル理論』の紹介をさせて頂きます。
寝ている間も内臓などの動きを制御している自律神経。
一般的には、交感神経系と副交感神経系があって、この二つが拮抗する働きをしていると考えられています。
けれど、『ポリヴェーガル理論』では、
副交感神経の主たる構成要素である迷走神経には、
二つの回路があるというのです。
起始核の位置から背側迷走神経・腹側迷走神経と呼ばれる二つの迷走神経。
そして、交感神経。
この三つの自律神経は、生物が進化するにつれて一つずつ段階的に発生してきたというのです。
●脊椎動物のすべてに備わっている太古の神経回路は、背側迷走神経。
髄鞘を持たず神経伝達のスピードも遅く、横隔膜の下の、主に消化器官を制御しています。
危機的状況で発動すると、猫に捕まったネズミのように不動やシャットダウンをもたらします。
●次に発現したのは交感神経系。
危機的状況において、闘争あるいは逃走するための準備を行います。
●哺乳類が進化した結果新たな神経経路が加わったのですが、それが、あまり知られていない腹側迷走神経です。
こちらは横隔膜より上、心臓や気管支などの臓器を制御しています。
そして、この有髄の迷走神経は、背側迷走神経と交感神経系の二つをも制御してくれているというのです。
腹側迷走神経が心臓を制御できなくなったときは、交感神経系の働きで鼓動が早くなったり、背側迷走神経によって除脈がもたらされる可能性があるというのです。
さらに興味深いのは、この新しい迷走神経は、脳幹にて、顔や頭の筋肉を調整している神経と接続し腹側迷走神経複合体を形成し機能しているというのです。
この複合体は生き残るために、「社会交流」という新たな手段を可能にしたのです。
私たちは、闘ったり、逃げたりするだけではなく、表情や声を使って、
人とつながり、心を落ち着かせる機能を持ったのです。(P,169)
さて、この腹側迷走神経複合体の話しがしたくて、
ステファン・W・ボージェス博士の著書『ポリヴェーガル理論入門 心身に変革をおこす「安全」と「絆」』を参考に、つたない解説文を書かせてもらいました。
上記の本の最後に用語解説が載っていて、「不安」という項目に
本理論では、「不安」とは交感神経の高まりとともに、腹側迷走神経系と社会交流システムの働きの低下によって作られる自律神経の状態ととらえる。(P,19)
と、書かれています。
腹側迷走神経複合体に何らかの問題が生じ、交感神経系の高まりを制御しきれないことが、不安や緊張の強い状態を継続させることもあるのではないでしょうか。
ポリヴェーガル理論でも、太古の神経系の発動によりもたらされる硬直状態に入ってしまうと、そこから抜けだすのが難しいといっています。
社会交流システムでもある腹側迷走神経複合体の働きを促進し、硬直状態から抜け出していく。
それによって、強すぎる恐れや緊張の原因でもある、抱え込んでしまった過剰なエネルギーも解放されていく…。
次回も、ポリヴェーガル理論を参考に、具体的なことを書いていきます。
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