(注意!この小説は私の勉強不足で、キャラクターの視点、主観が古い様式になっています、宜しくお願いします)

 

   二人は出かける身支度を済ませてアパートの外に出ると夏で日は長いのにもう夕暮れ時だった、 

ゆかりは体に残る気怠さを感じながら 

孝志の車に乗り込むために、腰をかがめた時、 

少しふらっとした、 

でもこの感覚が好きで、たまらない、 

孝志の運転は初心者らしく、 

丁寧で優しい運転、 

夕暮れはすっかり暗くなり、 

ゆかりのおすすめの?、回転寿司屋に向かっている、 

孝志もゆかりも今日もエッチに明け暮れた事に満足感と少しの罪悪感を感じていた、 

「今日もいっぱいしたね」 

ゆかりのその声に孝志は昔を懐かしんでいる時に出る声に似てると思い、 

返事に困って、元気のある返事をしようと思い、 

「僕はもう一回くらいならやれるかな」 

と言って冗談ですと言いたげに甲高く笑った、 

冗談を言う孝志に、ゆかりは、 

「そっか、まだやれるの?そんな事に意地張ってどうする?」 

と笑うと、孝志は 

「でもね、ゆかりさんを尊敬します」 

ゆかりは孝志の単純さに愛想笑いで答えて、 

「孝志君エッチだね」 

すると孝志はやや呆れた様に言った、 

「ゆかりさんにも責任の一端はありますよ」 

ゆかりは孝志の呆れた様子に、平然と答えた、 

「もう若い小娘じゃないからね、私は私で男を誘うからには、満足させてもらうわよ」 

孝志はその会話に大人の流儀に触れた様で、 

今日のあの時のゆかりのセリフを真似て 

「こわい」 

と呟くと、ゆかりもそれを思い出し、 

二人は大笑いをした。 

 

 二人が出会って一ヶ月が経ち、 

最初こそは濃厚だったが、 

今は隔週くらいの頻度、 

それでもデートの待ち合わせ場所はゆかりのアパート、 

エッチをしてから出かける、

エッチが終わりお風呂で汗を流すと、 

ゆかりはお化粧をして、 

出かける用意が出来たので、 

二人は出掛けた、 

今日は孝志の車はアパートの駐車場に置いたまま、 

電車で街に出る様だ、 

ゆかりの父親の会社はこの辺りにいくつか不動産を持っていて、 

最寄駅周辺には今ゆかりが住んでいる物よりもっと上物の物件もあるが、 

「ところで今頃で何なんですけど」 

と孝志が突然ゆかりに話しかけた、 

日曜の昼下がりの片田舎の駅は閑散としていて、平日の朝夕の喧騒はない、のどかなので 

ゆかりはもの珍しくつい辺りを見渡していたが、 

孝志に視線を向けなんだろうと不思議そうな表情で答えた、 

「アパートの部屋で大暴れして大丈夫だったのかなって、一人で帰る時よく思ってました」 

ゆかりは大暴れと言う孝志なりのマイルドな表現を気に入った、 

「大暴れしても大丈夫だから、あの古い物件に住んでいるのよ」 

孝志は大暴れ前提なんだと思い、 

「ご近所さんは?」 

するとゆかりは視線を何と無く泳がせた様な、 

「私ともう一世帯しか住んでいないし、私の部屋から遠いからたぶん大丈夫」 

父親の会社は古いアパートを新しい物に建て替えたいのだが、 

住民がいるといろいろ手間だし、 

もう高齢の人だし、 

新しく人を入れずに全室空くのを待っている様だ、 

孝志はゆかりの話を聞いて、 

「大丈夫なんですか」 

と納得した風だ、 

やがて電車が来て二人は乗り込む、 

都会に近付くと線路は高架になりいくつかの駅を通り過ぎた、 

「あのアパートで家賃はどれくらいなんですか?」 

と孝志が尋ねて来た、 

ゆかりは何気なく答えた、 

「七万くらい」 

孝志は賃貸物件の相場を知らないのでそれが高いのか安いのか分からないが、 

「駅が近くていいですよね」 

電車は終着駅に着き、 

二人は都会のターミナル駅の雑踏の中を歩いた、 

ゆかりは毎日通っている通勤の道で慣れている、 

が孝志は、 

滅多に都会には出ない様でゆかりの後をついて歩いている、 

駅ビルを出るとゆかりは日傘をさし、 

孝志に無言で手を差し出すと、 

孝志はゆかりのその手のひらを見てそっと手をだし、 

手をつないだ、 

さんざんエッチをし、 

手を繋いで歩いた事も何度もあるが、 

孝志のその手の繋ぎ方は、 

他人行儀と言うと大袈裟だが新鮮な感じで、ゆかりは孝志の人柄を理解しているつもりだが、 

全てを分かっているわけではない、 

不思議な部分のある男の子だと感じ、 

一緒に歩き出すと、 

「手を繋ぐの慣れない?」 

と問いかけた、 

孝志は少し答えに困った様でゆっくり答えた、 

「人混みをよけながら歩かないといけないから・・・」 

そんな事か、とゆかりは思い、 

「離してまた繋いでくれればいいよ」 

孝志は内心、そんな事は分かっているけどと思い、 

「そうですね」 

と答えただけ、 

ゆかりの案内でついた場所は、 

有名なホテルの玄関、 

エントランスを抜けてエレベーターホールで 

「何があるんですか?」 

と孝志が尋ねると、ゆかりは答えた、 

「孝志君甘い物好きだよね?」 

その通り大好きだ、と孝志は思い、 

「はい」 

と答えるとゆかりは、 

「アパートに来る途中買い物して来たら、絶対二人分の甘い物あるよね」 

確かに、頼まれてもいないのに買ってしまう、 

そう思い孝志が答えた、 

「そう言うところでバレてる訳ですね」 

ゆかりは説明をし始めた、 

「ここのレストランで午後からスイーツバイキングをしてるから、来た訳」 

咄嗟に孝志は客層が女性ばかりではと思い、 

「男の客、僕だけだったりして」 

 

 レストランに入り、 

テーブルに案内され、 

孝志もゆかりも思い思いのスイーツを取り席に戻る、 

レストランの中は女性客の方が多いが、 

女性にくっついて来た男性もちらほらいる、 

孝志と同じで女性にくっついて来ましたと言う顔をしている、甘党男子もいるだろう、 

二人は甘い物を食べながら、 

「今日はお昼も少なくして、大暴れもしたし、沢山食べれそう」 

とゆかりは言ってスイーツをほうばった、 

すると孝志が、 

「別腹でしょう?そんな事しなくても」 

と言うとゆかりは、 

「本腹と別腹の両方に詰めて帰るのよ」 

とてつもない話に孝志は驚いた顔をして、 

「なるほど」 

と話を終わらせた、 

すると冗談はさておきと言う感じに、ゆかりが問いかけた、 

「初めて会った時、恭子は私の事何か言ってた?」 

孝志は白いクリームが少しついた苺を口に入れようとしていたが止めて、 

「初めて会った時は知り合いに頼めば」 

思い出しながらゆっくりと話す孝志、 

「中古車が安く買えるからって言われてついて行くと、ゆかりさんが現れたって感じでした」 

そう言って孝志は苺を口に入れた、 

ゆかりは恭子も深い説明はしていないのかと思い、 

そりゃそうだろうと思い直した、 

さすがの孝志君も私の深い話を聞いたら、 

いや、僕には荷が重いですって断るよなと思い、 

次の気になる質問をした、 

「二回目の時は、初めてS一三でドライブした日、あの日はなんて言われてあのコンビニに来たの?」 

孝志は生クリームの甘さを苺の甘酸っぱさが消した後味の残る中、 

「あの時は最初は買った車の話をしてて」 

と思い出している表情を浮かべながら続けた、 

「突然ゆかりさんの話になって、ゆかりさんの方が楽しいよって言われて」 

そう言うと孝志の表情が少し暗くなり、 

「よその家に貰われていく子猫の気持ちが分かった様な気がしました」 

そんな寂しそうな表情をして孝志は少し沈黙した、 

ゆかりは子猫の話と孝志の表情を見て、 

子猫をやり取りする側にも事情があるのよと言いたかったが、 

先に孝志が話し始めた、 

「でも、恭子さんとは毎日じゃないけど会社でお昼お弁当食べてますから、大丈夫です」 

とゆかりを安心させる様な言葉を言った、 

ゆかりは孝志のマメさを尊敬してしまった、 

孝志はそのコンビニの駐車場で一人車で行ってしまった恭子を、見送れなかった事を今ゆかりに言うべきか、言わない方がいいのか迷って、結局言い出せないままだった、 

 

 その日の帰り道、 

電車の中でゆかりは恥ずかし気もなく、 

「あんな時間に食べたから、夕ご飯入らないかも」 

と孝志に囁くと、 

孝志は苦笑いを浮かべて、 

「僕、あんなに甘い物ばかり食べたの初めてですよ」 

と言ってお腹をさすってみせた、 

するとゆかりが、 

「孝志君流石若いし、私の倍は食べてたよ」 

孝志はそう決めつけてくるゆかりに、 

微笑みながらも困った風に反論した、 

「えー、倍は言い過ぎでしょう!」 

ゆかりは歳の差を感じさせない意地悪そうな笑みで言い返した、 

「お喋りもせずに、黙々と食べてたよ」 

すると孝志は少し真顔で、 

「それは食べ方で、食べた量とは関係ないです」 

ゆかりは真面目な反応を見せる孝志をからかってやろうと思い、 

すっと肩を孝志の肩に寄せて、 

その上自分の口を孝志の耳元に近付け、 

囁く様に言った、 

「エッチの時はもっと話しかけてくれるのに」 

と言って元の位置に戻り、 

元の声の大きさで言った、 

「そんなだったから倍は食べてる!」 

孝志は胸から込み上がる様な笑い方をして、 

呆れる様に言った、 

「何それ?」 

そして独り言の様に続けた、 

「全然関係ないし」 

するとゆかりが 

「会話が足りないし、食後のエクササイズが必要よ」 

と意味深な事を言い出した、 

孝志は返す言葉がなくて、 

「別腹ですか?」 

と適当な事を言うとゆかりは孝志を見つめた、 

孝志も見つめ返した、 

ゆかりは孝志を見詰めながら、 

遊び、火遊びなんだからと自分に言い聞かせ、 

表情をさっと緩ませて、 

「冗談よ、本気にした?孝志君エッチだね」 

 

 

 数日後、 

ゆかりは会社の制服姿で、 

実年齢に見える化粧、 

父親の会社の支店の店内の自分のデスクの椅子に座り、 

お店の扉がガラス張で外が見えるのでそこから、 

カウンター越しに外を眺めていた、 

ターミナル駅のロータリーの極一部が見えていて、車や人が夕暮れのオレンジの夕陽に焼かれている様子が見える、 

ここは支店と言っても、 

ゆかりの父親が地元で自慢の為に、 

出したお店で、 

親戚の叔父さんが店長で、 

やはり親戚の従姉妹がもう一人、 

女性事務員としてゆかりと一緒に仕事をしている、 

その従姉妹の北嶋直子がゆかりに呟いた、 

「今日は客ゼロでしたね」 

直子は二年ほど前に大学を出てここに就職をしたが、 

世間一般はこんな事してたらやばいですよねと言って、自分の将来を不安がっていたが、 

もうこの生ぬるい職場に慣れてしまった様で、 

でもゆかりは社長の娘で従姉妹と言えども、社員に気を使い、 

「宣伝の為の店だし、季節によっては凄い忙しい時もあるし」 

ゆかりはそう言って、 

「売れなくて置いといて腐るものは扱ってないから大丈夫よ」 

と言ったが飲食店ほどの単価を儲けているかは疑問だが、 

毎日店を開けて客を待つのが仕事だ、 

すると電話が鳴り、年功序列の掟、 

直子が木の葉の様な舞で受話器を取った、 

「お疲れ様です・・・」 

「はい、」 

「はい、」 

相手と何やらやり取りがあって受話器を置いて、 

「店長が出先から、直接帰宅するそうです」 

とゆかりに伝えると、 

ゆかりは頷き、 

店長の叔父さんの顔を思い浮かべて、 

出張先を考え、仕事の進捗状況をいろいろ想像してみた、 

カウンター越しの店のドアの外より、 

お店の中の方が明るくなって来た、 

すると直子が、忙しそうな店長を気遣って、 

「叔父さんも大変そうですね」 

とゆかりに声をかけると、 

ゆかりは、 

「私は子供の頃から優しい人だと思ってた、叔父さんの事」 

すると直子が思い出した様に言い出した、 

「小学生くらいの頃、正月に親戚が集まった時、ゆかりさんが社長に凄い怒ってて、社長が一生懸命にゆかりさんの機嫌を直そうとしていた事をたまに思い出す事があって、ゆかりさん覚えてます?」 

ゆかりは直子の話を聞いて思い出そうとしたが、 

「私、高学年くらいの頃に反抗期を迎えたみたいで、毎日怒ってた様な気がする」 

直子は驚いて呆れた様に 

「小学生で?」 

実はゆかりも当時のその事はよく覚えていないが、 

毎日父親に反抗していたのは覚えている、 

だから想像して答えた、 

「子供だったから、父親が偉そうに見えていたのかも」 

親戚の人達が父親にペコペコしている様に見えてそう言うのが腹が立ってと言いたかったが、 

直子も身内だし、これは言ってはいけないと思い言わなかった、 

でも、父親は自分には甘かった、 

と今ではそう思っているし今でも娘の自分には甘い、 

すると直子が次の話題を振ってきた、 

「ゆかりさんは早く結婚しろ!って言われます?」 

ゆかりは少し暗くなった外を見ていたが、 

直子の質問は重かったので、 

向かい合ったデスク越しに直子を見て、 

「直子さんは言われるの?」 

直子は急に振り向くゆかりに返事をした、 

「よく言われます、まだ早い様な気がして、無視してます」 

ゆかりは質問されたから答えなきゃと思い、 

「うちは、そう言うの越えちゃったかな」 

直子はゆかりを真っ直ぐ見ていたが、 

視線を落として言った、 

「結婚は不安しかないです」 

ゆかりは不安を与える側だったけどと思いながら、 

「それ分かるー」 

と答えて微笑んだ、 

そして直子はもう一度ゆかりに視線を戻し、 

「自分の収入、彼氏の収入を計算して、結婚した後の出費を考えると、子供をどうやって育てりゃいいのって感じで、不安です」 

この会社の社長の娘として耳の痛い話だったが、 

直子はそんな意識がない様だったので、 

そう言う関係性は無視して、 

「私の知り合いで、去年結婚した女の人がいて」 

そう言うとその女の人が言った言葉を正確に直子に教えてあげようと思い、 

ちゃんと思い出して、 

「その人が言ってた、お金で幸せになれないのなら、一緒にいて幸せと感じさせてくれる人と結婚をしたい、と二人で結論を出して、結婚を決意した人がいるよ」 

直子は一瞬フリーズして、目をまんまるにしたまま、 

「名言だし、カッコ良すぎる」 

と言ったが、ゆかりはその女性とそこそこの知り合いで、 

名言でも、カッコいい訳でもない、 

ただ覚悟を決めただけ、そう思い 

「直子さんの彼氏は幸せなんだと信じさせてくれる人?」 

直子はゆかりのその質問に本気で考え始めた、 

ゆかりはそんな直子の様子を見て、 

「直子さんも彼氏を信じさせないといけないのよ」 

すると直子は信じる事、信じさせる事には自信はないが、 

「お互い様なんですね」 

と言う事は理解してそう答えた。 

 

 ゆかりと孝志が付き合い初めて二ヶ月が経ったある日曜、 

エッチが終わり、 

ゆかりはいつもながらと孝志を感心した、 

だいたい二ヶ月もそう言う関係を続ければ慣れて、男固有の癖が出る者だが、 

孝志は相変わらず優しい、 

終わった後の余韻を邪魔しない、 

ゆかりはそう思い、 

畳に座りゆかりを眺めていた孝志に目をやった、 

孝志の様子を見る為に体をひねり孝志を見詰めるゆかりを孝志は不思議そうに見詰めた、 

そろそろ終わりにしなきゃとゆかりは思ったが、 

急いで終わらせる理由が思いつかなくて、 

「添い寝して」 

と言うと孝志は微笑んで、ベッドに上がる、 

ゆかりは孝志の胸に頬を乗せて、 

「いつまで一緒にいられるかな?」 

と問いかけると、 

「僕はまだ十八だから、役に立てないかもしれないけど、時間はあるよ」 

ゆかりは孝志のその言葉を聞いて、 

孝志の目を見ながら背を起こした、 

孝志は驚いた様な表情で覗き込むゆかりの顔を見詰め微笑んでいる、 

孝志は分かっているのだと思うと、 

枕に横たわる孝志の頭に手を伸ばしてそっと撫でて、 

「孝志君は女に結婚してって言わせるタイプだね」 

孝志にはゆかりのその言葉の意味が分かりづらかった、 

ゆかりは知っている、 

優しさとズルさは紙一重と、 

孝志は優しいセリフを言ったつもりだろうが、 

ゆかりには分かる、 

そのセリフにはズルさがある、