この小説は、現実、実情を無視した娯楽作品です。



正雄は仕事が終わり、

夕暮れの空の下、

社員駐車場に向かう途中、

歩きスマホで例の法案が可決したのか調べようと、

よく使うニュースサイトを開くと、

思った通り可決されていた、

社屋の敷地からフェンスで囲われた広い駐車場に入る、

駐車場を出る車に注意しながら、

駐車場の中の通路を正雄はやはり歩きスマホで歩く、

SNSで鬼保護法案可決の反応を調べてみると、

批判が殺到していて、

見事な炎上ぶり、

相手が政党や政治家だとSNS民も遠慮がない、

国会の中が国民無視の別世界のように正雄は感じた、

SNSの中でも公金目当てとか、

税金マネーロンダリングと言うワードが飛び交っている、

鬼ヶ島の鬼は人間社会を知らないはずなのに、

人間を怖がる事に正雄は同意した、

政治や政治家に今まで興味がなく、

正雄は今までなんとも思っていなかったが、

政治の世界や政治家がこんなに汚い物だったのかと思い知らされた。

 

 花音は自宅で次の旅先選びをしていた、

鬼に興味が湧く以前は九州に行くつもりだったので、

旅の工程も出来上がりつつあった、

計画を変更して関西に行こうかとも思ったが、

旅は季節やタイミングで見どころが変わってしまう、

だから、計画通り九州に行く事にした、

花音もネットのヘビーユーザーで、

気になる事があればネットを駆使して調べる、

鬼ヶ島の情報と言えば、

鬼保護法案のニュースと昔話くらいしか出てこない、

それで、

葛城水間で調べると、

記事が出て来た、

身内が出てくると単純に嬉しい、

本を数冊出版しているが、

百年くらい昔の本だし、

絶版で古本のコレクターの蔵書として紹介されている、

あるコレクターのホームページに本の表紙の写真が載っているだけで、

内容はその本のタイトルで想像するしかない、

本のタイトルは、

日本の島、鬼ヶ島、

後、時代を象徴した様な本で、

西洋列強についての本や、

動植物と人間を比較した様な内容と想像する、

タイトルの本、

本職は大学の先生だったのだが、

戦後は不運な人生だった様だ、

花音は今まで興味が無かったが、

葛城さんの事をネットで調べてみて、

大正昭和初期と言う時代が、

日本や日本人にとって凄く大変な時代だったんだと感心した、

しかし、鬼と差別と言うのが繋がらない不思議さを感じた、

それで次は、鬼保護法でネットで検索をかけてみると、

鬼保護法案が可決していて、

法案可決に対する不満の記事が

出るは出るは、沢山の記事があった、

自由国民党を批判する記事、に特定の議員を批判する記事、

鬼保護法の問題点やその税金の使われ方など、

花音はそれらの見出しを見ただけで、

政治家は世論に後ろ向きで民主主義に程遠いと感じた。

 

 数日後

花音は動画作成のの為、九州の別府温泉地に居た、

路線バスの中で撮影の為のスマホを準備して、

バスから降り立つと他の客の邪魔にならない様にバスの降車口から離れて、

バスの脇の歩道に立ち録画を始めた、

バスの側面が背景になる様に立ち、

「九州別府の有名な温泉地に着きました」

花音はそう言い終わってからいつもの通り最後にニッコリと笑顔を見せると、

いいタイミングでバスがバス停から発進した、

花音はそのタイミングで続けた、

「温泉は大好きで、早く来たかったので、楽しみです、まずわ見て回ろうと思います」

花音はそう言って自撮りのまま歩き出してから録画を停止して、

振り返り、

一瞬、置き去りにした、キャリーケースの元に戻り、

取手を持ち引きずり歩き始めた、

歩きながら自撮りをしてキャリーケースを引きずると、

キャリーケースのキャスターが地面を転がる音が動画に録音されて気になるので、

こんな撮影の仕方をしている、

この場所は複数の温泉に足湯や他にも見所が沢山あり昼前に到着して午後四時までかかって撮影をした、

当然ここにも宿泊施設はあるのだが、

観光地で予算をオーバーしてしまうので、

撮影が終わると路線バスに乗り、

格安の宿に移動した、

バスの中で今日撮影した動画をチェックしてみた、

撮影はいろいろ工夫しているのだが、

全部一人でしないといけないので画角に限界があるし、

キャリーケースの荷物もある、

したい事はあるのだがなかなか制約があってしたい事ができない、

陽が傾き夕方頃格安のビジネスホテルに着いた、

チェックインを済ませ、

部屋に荷物を置き、

素泊まりなので、

ここに来る途中に買った、

食料の入ったレジ袋をトランクから出して、

ベッドの足元にあるサイドボードの様な机の様な、

その上に置いた、

花音はそのレジ袋からお茶のペットボトルを出し一口飲むと、

さて編集をしなきゃと思い、

トランクからスマホの充電器を取り出した、

撮影も動画編集も動画サイトへのアップロードも全てこのスマホでやっている、

編集作業の効率を考えるとノートパソコンが欲しいが、贅沢を言ってられない。

 

 一本目の動画をアップロードし終わると、

レジ袋はもう空っぽになっていて、

寝るまでにもう一本動画を作ろうと思ったが少し休憩することにした、

酒は飲まないが口寂しく思いトランクを開けて何かオヤツが残っていたはずと圧縮袋に入った衣類をかき分けていると、

栄養補助食品の定番が出てきた、

黄色い箱を開けて、

アルミの包みの封を開けて、

歯触りのいい柔らかさのそれを口に入れて、

歯で噛んで二つに分ける、

咀嚼すると、口の中の水分を全て奪われてしまうので、

ペットボトルの水を口に含む、

花音はふと鬼保護法を思い出し、

官僚や政治家は何を思ってそんな事をするんだろうと思い、

ネットで見た記事を思い出した、

簡単な例え話で、

社会問題があってそれを改善しないと国民が困るから、

社会問題を解決する方法を考えて、

それを法律や制度にして、

その解決方法を行う為に税金を使うと言う法律を作るらしい、

今回の鬼保護法は、

人間が持ってる鬼への偏見を改善する為の制度とその予算と

鬼を保護する為の制度と、

実際保護する為に必要な予算が、

法律に盛り込まれているそうだ、

ある記事にはそれらが数百億になると言っていた、

鬼も今まで生きていてそのままにしていてもいいのに、

どうして金をかけるのか意味が分からないと、

花音はなぜかだんだん腹が立ってきた。