養成所虹の入学式から
一月余り経った
それは乳母のあたしが
保証する・・・でも・・・
権力の中枢に娘を放り込むのは
母親ならなんとも心配だと思う
ウンスさんは王妃様を
近くで見ているから
より切実にそう思うでしょう?
歯に衣着せぬ言い方ではあるが
ウネはウンスを気遣った
こればっかりは
どうしようもないわよね
うちの悋気大魔王は
この手の話になると
不機嫌になるし・・・
それも厄介なのよ
ウンスは苦笑した
そこへ
そろそろ食事の準備を
進めてもいいかと
尋ねに
ヘジャがやって来た
ええ お願い
何か手伝うことはある?
いいえ
奥様はどうぞゆるりと
なさっていてください
すべてヘジャと
うちの女中たちにお任せを!
なだらかな丘の上にある東屋で
肉や魚を炭火で焼く準備が
整いつつある
手づかみで食べられるものと
ヘジャが段取りを整え
キンパやに握り飯
それにトクマンの妻ナナが
作った祝い餅
ケランマリや蒸し鶏など
自由にとって食べられるようにと
色々な料理も用意をしてある
野外で食べるのが苦手な子や
小さな子供やウンスたち女人は
奥の間に陣取り腹を満たし
学生たちもこの時ばかりは
遊びを一旦中断し食事に参加だ
オンマ
ゴン
ねむそうよ〜
食事もとらずにゴンは
昼寝の体制のようで
ユニョンが抱えて
ゴンを運んで来た
ユニョン
他のみんなは?
ミユちゃんは
スニョンがめんどう見てる
だからまかせて来ちゃった
王子様はにぃにがご飯に
さそっていたし・・・
ウンスがユニョンと一緒に
ゴンを奥の間で
寝かしつけていると
ユニョンは他の人に
聞こえないように
ごそごそと聞いた
ウリオンマ
イサってりんきしないね
ん?
ユニョンが王子様と
なかよしでも平気だもんね
王子様と手をつなぐとね
アッパはズゴくふきげんなのに
イサはへっちゃらみたい
どおかしらね〜??
イサは感情を
顔に出さないたちだから
自分の気持ちを押し殺して
いるんだと思うわ
それにユニョンのことを
大事に思っているのは本当よ
もしかしてユニョンは
イサに嫉妬してほしいの?
ううん そうじゃないわ
イサがいやな気持ちに
なるのはいやだもの
でもユニョンのことなんて
どうでもいいのかな?と
思っちゃう
ユニョンはね
前みたいにイサと
なかよくしたいの
でもうまくできないの
イサ このところ
ユニョンの目を見ないし
ざれごとも言わなくなったし
ああ
それは遠慮しているのよ
ユニョンに近づきずぎちゃ
いけないと思っているのね
どおして?
どおしてだと思う?
わかんない
ユニョンには
まだ難しい質問だったかな
私もね
アッパと出会った頃は
イサみたいだったのよ
ほら 私は天界から
来たでしょう?
アッパとは住む世界が違うと
思っていたから
好きになってはいけない
相手だと思ったの
だから
自分の気持ちに蓋をして
アッパのこと
なんとも思ってない
ふりもしたわ
でも結局自分の気持ちに
嘘はつけなかった
だってヨンのこととても
愛してしまったんだもの
イサはね きっと
まだあれこれ自分の気持ちに
蓋をしていると思うの
だからユニョンの方から
イサと仲良くしてあげてね
うん?
ユニョンは
逡巡するような顔つきで
頷いた
わずか十六の少年が
背負うには
彼の運命は過酷すぎた
多くの人を傷つけ
多くに人に傷つけられ
信じる心を失って
苦しみもがいて
それでも生き残った
チェヨンに出会って
自分が生かされる意味を問い
新しい人生を求めて
イサはこの地に骨を埋める
覚悟をしたのだ
ユニョンがいくら
「イサのお嫁さんになる」
と伝えたところで
頭の切れるイサのこと
父親チェヨンの気持ちや
自分の年齢や立ち位置
諸々推し量り
ユニョンの思いに
喜ぶような顔はしないだろう
ましてや王家の許嫁候補
ユニョンの未来が
揚々としているのに
水を差すような真似は
絶対にしないはずだ
あのね ユニョン
あなたはあなたの思うまま
自分の気持ちに正直に
生きるのよ
誰にも遠慮する必要はないし
誰かのために身を引くような
こともしなくていい
幼いユニョンには
まだ難しい話だろうけど
今のままのユニョンでいいと
私は思っているわ
母親の思いが通じたのか
ユニョンは
静かに頷いて言った
わかったわ オンマ
じゃあユニョン
スニョンのとこにもどるね
まっているだろうから
娘が行ってしまってから
ウンスはぼんやりと
庭園を見渡した
明るく元気な笑い声が
響き渡っている
それは希望の笑い声だ
ここにいる子供達の未来は
一体
どこに繋がっているのだろう
それは戦のない
夢や希望に満ちた世界
だろうか?
いや 少なくとも子供達が
いろんな夢を見られる世界を
作るのは大人の仕事だ
ソダン然り
養成所然り
ウダルチ然り
世の中すべてにおいて・・・
如何した?
気難しい顔をして?
ウンスの鼻先を掴んで
チェヨンが覗き込む
ううん
なんでもないわ
ただ・・・
この子たちの将来が
幸せだといいなぁと思って
あ?そんなことか?
そんなことって!
大事なことよ
ウンスが
ふくれっ面を見せると
チェヨンはどこか
嬉しそうに笑って答えた
幸せに
決まっておるではないか
どおして言い切れるの?
それは
イムジャがおるゆえ
え?
自分のことより
相手のことを思いやる
自分の心配よりも
俺や家族の心配をする
そんなイムジャがいる限り
夢も希望も嘘ではないと
子供らにもわかるはず
ゆえに
この国は安泰だぞ
そお?うふふ
なんだかすご〜く
褒められた気分
ヨンに言われると
最高の気分だわ
ウンスは満面の笑みを
浮かべた
ではこれからも
よろしく頼むぞ
俺の夢は
笑顔のイムジャの隣に
ずっと
いることなのだから
微笑んだチェヨンの
横顔がとても愛しかった
初夏の風が
チェ家の中を吹き抜けて
ウンスの頬を撫でて行く
季節は春から夏へ
いつのまにか移ろいでいる
*******
『今日よりも明日もっと』
あなたの夢は何ですか?
幾つになっても
夢見る気持ちは忘れずに・・・
高麗徒然日記
「あなたの夢は何ですか?」
連休最終日に
完了となりました
ユニョンの将来も
イサの気持ちも
まだまだ書き足りないところ
ではありますが・・・
高麗の春のお届けは
この辺で終わりとなります
養成所の四期生の皆様を
新たに迎え
ウンスの誕生日やユニョン騒動
色々盛りだくさん
なのに ゆるゆる〜と
更新してまいりましたが
お読みいただき
ありがとうございました
明日から生活が
通常運転の皆様も
日々通常運転の皆様も
どうぞ
安寧にお過ごしくださいませ
コメント メッセージ等
励ましのお言葉や
お優しいお気持ちを
たくさん
ありがとうございました