ウンスはぐったりと疲れた体で

無理矢理

寝台の上に起き上がった

まだチェヨンとのディールが

成立していなかったのだ

チェヨンは満足そうな

ぼうっとした顔で

仰向けに寝転んだまま

天井を見つめている

 

 

妓楼に行くのは

どうしてもダメなの?

 

 

ウンスはチェヨンの顔を

覗き込んで尋ねる

胸元が開いたままの寝衣から

ふくよかな胸の谷間が

チェヨンの目に映った

 

 

イムジャだけでは

行かせられぬ

なんども言わせるな

あそこは

 

 

男の

欲望渦巻くんでしょう?

 

 

ああ そうだ

だが

色恋沙汰だけではないぞ

隠密裏に策を練るときも

何か賄賂の受け渡しを

するときも

密かに使われているのが

妓楼というところだ

ゆえに手練れを警護に連れ

赴く重臣も多い

都のどこよりも

きな臭い場所なのだ

 

 

でも

ジヒョンさんのこと

ヨンは信用してるでしょう?

だったら

彼女の店が私を

どうこうするつもりが

ないことぐらいわかるじゃない

それでも

私が行くのはダメってわけ?

 

 

ああ ダメだ

ジヒョンは俺の女でもなし

心配する相手ではないが

イムジャは違う

俺の大事な妻で子供らの母で

そのイムジャに

俺の目の届かぬ妓楼で

良からぬ災難でも

降りかかってみろ

俺が生きて行けぬのだ

 

 

チェヨンは納得しないウンスを

胸に引き寄せ

その髪を指で梳きながら答えた

 

 

ジヒョンの話は俺が聞いてくる

だからおとなしゅう待っていろ

 

 

えええ

それは嫌よ

絶対に嫌

ヨンが妓楼に行くって

考えただけで嫌

 

 

話を聞くだけだ

 

 

それでも嫌

白粉つけた綺麗なお姉さんが

たくさんいるのよ

ヨンがたとえ相手にしなくても

嫌なものは嫌なの

 

 

自分でも言っていることが

矛盾していると

ウンスは思った

だが 夫が妓楼に出入りする

そう思うだけで

胸が締め付けられるのは

考えすぎだろうか?

 

 

ならば 如何する?

イムジャも少しは

俺の気持ちがわかったであろう?

妓楼に通う男の視線に

イムジャが晒されると

思っただけで腹が立つ俺の

気持ちが・・・

 

 

う・・・ん 

わかった

じゃあ

どうしよう・・・か?

多分 ジヒョンさんは

私に何かを伝えたいのよ

それは

ヨンじゃダメなことなんだわ

そうだわ

イサに一緒に行ってもらうのは?

 

 

却下だ

あいつを妓楼に送り込んで

どうするのだ?

若いキーセンの思う壺だぞ

 

 

ウンスのひらめきを

チェヨンは一瞬で却下した

 

 

そうよね

 

 

じゃあ 

ヨンと私が一緒に行く?

 

 

それもならぬ

俺が動けるのは夜

結局 

店が開いている時刻となる

 

 

そうかぁ

あ〜〜

人に会うだけなのに

どうしてこんなに

面倒なのかしら

 

 

ウンスはチェヨンの胸から

飛び上がると

困惑した顔をしている

夫が

何も意地悪で

行くなと言っているのでは

ないことぐらい

ウンスにもわかっている

 

 

ソクテに頼み

ジヒョンを屋敷まで

連れて来てもらってはどうだ?

屋敷がまずいのならば

マンボのところでも良い

 

 

チェヨンの提案に

ウンスは顔を輝かせた

 

 

あああ そうか

そうよね

マンボの店で会うのがいいかも

何でこんな簡単なこと

思いつかないんだろう

じゃあ

明日仕事が終わったら

マンボのところへ行ってくる

いいでしょう?

 

 

ああ 俺も店に向かう

そこで合流するか

 

 

うんうん

ついでにクッパも食べたいかも

あ 

子供達がずるいっていうかしら?

 

 

タンは言うだろうな

あいつは食いしん坊ゆえ

マンボのクッパが食いたいはず

 

 

うふふ

そうね

あら?ヨン?夕餉

まだよね?

 

 

閨になだれ込み

チェヨンが夕餉も湯浴みも

まだなことに気づいたウンスは

夜食の準備でもしようかと

立ち上がろうとした

ところがチェヨンにぐいっと

布団の中に引き戻される

 

 

飯より風呂より

イムジャが良い

まだ食い足らぬこと

気づいてないとは

言わさぬぞ

 

 

二人の間にディールが成立し

懸案事項もなくなって

ウンスは

夫の申し出を承諾したのだった

 

 

ーーーーーーー

 

 

ディール成立の翌日は

王妃様の回診があり

王宮へ行く予定だったので

ジヒョンに会うのを断念し

その次の日

診療所が昼から休みの日の

朝のうちに

ソクテを妓楼に使いにやって

ようやく 

つなぎをつけることができた

 

 

ごめんなさいね

ヘジャ

大事な夫を妓楼に

使いに出すなんて

嫌じゃない?

 

 

何を滅相もない

奥様のお言いつけならば

喜んで夫を送り出します

それに奥様があの夜

妓楼に行こうとしていたなんて

ヘジャは肝が冷えました

あの時 何が何でも反対して

よかったと言うものです

 

 

忠義な女中頭は

心底ホッとした顔で

ウンスに言った

そうこうしているうちに

ソクテはウンスの言葉を

ジヒョンに伝え

すぐに屋敷に戻って来た

 

 

本当はこっちに来て

相談に乗って欲しいんだけど

・・・と

言っておりましたが

うちの旦那様のご意向もあると話し

マンボの店に出向くこと

了承していただきました

診療所が終わる頃を見計らい

マンボの店に行くそうで・・・

 

 

ありがとう

今日は昼までの診察だから

昼から出かけるわ

ヘジャ 子供達を頼むわね

 

 

はい ヘジャにお任せを

ヨボや 

奥様の護衛を頼んだよ

 

 

おう 任せとけ

 

 

何だか落ち着かない時を過ごし

診察を終えたウンスは

イサに事情を話して

マンボの店に向かうことにしたが

 

 

オレもそっちの方面に

往診のついでがあるから

一緒に行くよ

暮れが近づき

都も何かと物騒だからね

 

 

イサの申し出もあって

ウンスはソクテとイサに守られ

マンボの店に向かった

 

 

店に着くと

すでにジヒョンが待っていた

三十半ばを過ぎても

相変わらず美しい姿

さすが高麗一のキーセン

だっただけのことはある

 

 

女でも見とれちゃうわ

 

 

ウンスが呟くと

イサは興味なさそうに

「そうかな?」と返した

 

 

オレはユ先生の方が

断然いいと思うよ

それはヒョンも同じだろうけど

 

 

一言付け加えると

ニヤッと笑う

 

 

イサったら

調子いいんだから

 

 

じゃあ オレは

お役御免ってことで

往診へ行ってくるね

ユ先生

 

 

ありがとう

よろしく頼むわ

ジュヒにもよろしく伝えてね

 

 

イサはこれから

テマンとジュヒが暮らす屋敷で

トルベの父親を診察予定だった

 

 

わかった

そのまま帰るけど

お迎えにヒョンが来るんだよね?

 

 

ええ 帰りの心配はいらないわ

 

 

じゃあ 気をつけて

 

 

ジヒョンは

ウンスとイサの様子を見ながら

親子か姉弟のようだと思った

 

悋気が過ぎるチェヨンが

ウンスの暮らす屋敷内に

留め置く男は

テマンくらいだと思っていたが

あの若先生も

相当信頼されていると言うことだろう

 

それにしてもいい男

鼻筋も通っていて

顎がスッとしていて

唇は情熱的で

何よりあの目

あれは若い頃のヨンさんに

そっくりだ

ざっくりと相手を観察し

値踏みをしてしまうのが

商売人のサガ

あの男が妓楼に来たら

キーセンたちは色めきだって

商売あがったりになりそうだ

 

昔 チェヨンが妓楼にいると

それだけで女の子たちが

大騒ぎしていたのを

ジヒョンは懐かしく思い出す

 

面倒臭がりのヨンさんは

いつもあたしの部屋に

逃げ込んで来てたっけ・・・

 

叶わぬ恋はいつまでも

心の中に引きずるものなのだろうか

今となってはヨンさんの奥方様とも

懇意にしていると言うのに

あの頃のヨンさんを思い出すと

胸がぎゅっとする

ああ だからか・・・

だから 

放っておけなかったんだ

昔のヨンさんによく似た

カン・ユハのことを・・・

 

ジヒョンはウンスの顔を見ながら

自分の思いを整理した

 

 

それにしても

医仙様の周りには

どうしてこうも

いい男が集まるのでしょうねぇ

ヨンさんも若先生も

それにカン・ユハ様も

皆 いい男

 

 

そうでしょう?

うちの旦那様も若先生も

いい男・・・?

カン・ユハ?

 

 

はい

実はカン・ユハ様は

うちの妓楼で

お預かりしております

 

 

ジヒョンの話に

ウンスは目を丸くして

ジヒョンを見つめた・・・

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

思い出よりも今の暮らし

でも たまには過去を振り返り

懐かしさに浸るもの

悪いことじゃないと思う

 

 

 

紅葉ふんわり風船星紅葉ふんわり風船星

 

 

カン・ユハ発見!?

さてウンス どうする?

 

明日はイムジャ企画

「高麗編其の弐」を

お届け予定です〜

今回はsizumama様 マコ様

いちごン様 ray0101様の

ヨン話となります

ヨン名の方にはすでにオリジナルを

アメブロメッセージでお届済みですが

ウンスバージョンもお楽しみ下さいませ

 

またおつきあいくださいね〜

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